応援が重要
2メートル程の体長のゴリゴリに筋肉質なオークが出てくる。腰巻きとサンダルの簡素な服装だが、豚の頭の上には鈍く黄金に輝く大きな王冠も乗っている。幼女は得意げに
「オークの王のペニュちゃんよ!あたちがオーク王国に運河造る代わりに雇ったから本気でやってくれるわ!」
オークは俺に向け丁寧に会釈すると、落ち着いた低音イケメンボイスで
「大天使様、お初におめにかかります。オークの王であるペニュ・ポニュでございます。この度は伝統あるムケットパンスターで戦うことが出来て光栄です」
恐ろしい見た目に反して異様に丁寧で低姿勢なオークに恐縮して
「宜しくお願いします」
会釈を返していると幼女が
「お兄さん!選んだ戦士を呼び出すの!誰々に決めた!っていうのが作法よ!」
威勢良く言ってきた。
言われた通り
「オーガの女王、ミレーミさん!あなたに決めた!」
「よっしゃああああ!美しきわらわの番かあああ!」
背後の群衆の中から腰蓑だけ巻いたオーガの女王が駆け寄って来た。名前はさっき聞いて驚いたが、ミレーミという意外と可愛らしい名前だった。幼女が嬉しそうに
「では!相手が参ったと言うまで真剣勝負よ!ムケットパンスター開始!」
そう宣言すると周囲を取り巻く群衆の位置まで下がったので、俺も下がることにする。
ペニュは軽く一礼すると、ミレーミへと素早く踏み込んで重いストレートパンチを入れた。ミレーミは両腕でガードするとそのままヒラリとバク宙して、ペニュの脳天目掛け、サマーソルトキックをぶち込む。ペニュは横に避けるが回避が間に合わず、右肩にキックが当たり、よろめいて退いた。直後に幼女が
「ペニュちゃん!勝ったら南部の沼地を大農作地にしてあげる!土龍のお友達を呼んで一緒にやるわ!」
そう叫ぶと、ペニュはやる気を漲らせ
「ミレーミさん、すいませんが本気で参ります」
全身が茶色のオーラに包まれた。
明らかに雰囲気が変わり、こ、これは不味いんじゃないか……とオロオロしていると脳内でサナーの声が
「ナラン!フォッカーと子作りさせるって言え!多分これ、応援が重要だぞ!」
いやそれはダメだろ……あいつ、ロマンシアと付き合ってるし、そもそも人の性愛をそういうのに……などと迷っていると、オーラに包まれたペニュがミレーミを瞬く間に圧倒し始めた。タイミングが絶妙で巧みなパンチやキックによる素早い連打をミレーミは避けられず、瞬く間にボロボロになっていく。とうとう俺は堪えきれず
「ミレーミさん!勝ったらフォッカーと子作りしていいです!」
ミレーミは口から「ペッ」と血反吐を吐くと
「……ふふふふ」
怪しげに笑いながら、ペニュの渾身の右ストレートパンチをギリギリかわすと、深くしゃがみ込み、その茶色のオーラに包まれた顎に向け、完璧なアッパーカットを放った。
完璧に喰らったペニュは少し宙に浮くと、そのまま崩れ落ち動かなくなった。幼女は仕方なさそうに進み出て来て
「負けたわ」
俺にそう言ってパタパタと上空へと羽ばたいていき青い煙に包まれると、突然巨竜へと姿を戻す。そして
「ヴォオオオオオ!」
悍ましい咆哮と共に全身に一挙に纏った雷を激しくスパークさせながら遠くへと飛び去って行った。呆然とその様子を見上げていると、いつの間にか横に居た女神が倒れているペニュに手を翳し、虹色のオーラで包み込む。ペニュはサッと上半身を起こし
「か、身体が軽い……痛みもない」
女神は真顔で
「じゃ、ついでにここで陳情やるから、種族代表者は一列に並ぶように」
そう言った。




