毎回ありがたき御高説痛み入ります
女神に手を引かれ山頂へと上がり驚いた。見たことのない様な皺一つない銀の素材の服装の人達が、数十人山頂で立って待っていた。近づくと全員半透明なのが分かる。女神は真顔で
「前世代の人間であるペイルセインターの人々よ」
男女共に乱れ一つない髪型で、シミ一つ無い顔でニコリとこちらへと笑ってくる。
「生きてないですよね?」
小声で尋ねた俺に女神は
「そうね。ゴーストよ。自我の複雑性と現世への未練故に消えずに残っちゃってるわけ」
女神に手を引かれ近づくと、背の高いマッシュルームカットの男が前に出て
「御機嫌よう、女神様」
丁寧に頭を下げてくる。女神も会釈を返したので俺も真似すると男はニコリと微笑み
「我々の人権と権利に付いてお話をしたいですが」
女神は表情を消し
「聞いてあげるわ」
と言った。
男は少し夜空を見上げると
「我々の国家は約6万年前に滅びました。しかし混沌粒子のお蔭で街は古い地層に残り、我々も消えておりません」
女神は黙って頷く。男は綺麗な笑顔で
「年々数が減っている我々ですが、現在全世界で97万人残っております」
男は俺を見て微笑み
「女神様の御慈悲により、私含め大半の者達は成層圏に浮かぶ空中都市スワーヴライダーへと集められて居るわけです」
また言葉を区切ると
「しかし最近、探査ロボット、ベルガードナーでの調査により、我らの所有物であったリブラーの活動を確認しております」
長々と喋る男が何を言いたいのか掴みかねていると女神がウンザリした表情になり
「おめーらの復活はねえから」
突如そう吐き捨て、顔を歪めながら
「そもそも、科学技術の発展の末に議論が面倒になり、民主主義を捨ててマリオンヌなんていう天罰無限刑レベルのドチャクソ暗君を皇帝に据えた時点で滅亡はわかりきってた訳よ。いい?」
額に血管を浮き立たせた女神は鋭い目付きで
「タイムパフォーマンス?時間的損失?効率主義?アホなの?あんたらの快楽のためのゴミみたいな情報に埋もれて時間が足りないだけでしょ?何が大事か忘れて心を捨てて弱者は切り捨て機械的知能に政治的判断まで委ねてさあ……その果てに迷走が極まって皇帝復活?おめーらのことはおめーらが悩みながら時間をかけてちゃんと決める!それができなくなったらサッサと滅ぶ!しかも消えれずにグズグズと6万年も残ってねえ……」
流石に俺が
「いやそこまで言う事ないですよ……」
女神は鋭い目付きで俺を睨むと
「ナラン君、説教させて。コイツら毎回こうなのよ。私が頑張って保護してるのに!」
「は、はい……」
どうやら俺が出る幕はないらしい。
女神は、余裕の笑顔で微笑む男に
「良い?有機物で出来た生命体なんてのは、宇宙に出ていくのに適してないの!!宇宙線やら低温やら空気が無い環境に耐えられないわけ!閉鎖空間にもね!ちょっと突いたら割れる泡みたいなもんよ!だからー!宇宙での一般的な有機的知的生命体は自動機械なりを造ってそれらが代わりにお外で活動するの!賢い生き物程早めに自分達の限界を悟るわけ!ケイ素生物とかだったらまた話も違いますけど!あんたらは違うでしょ!?」
そこで頭上の夜空を見上げると
「でも!逆の道もあるわ。混沌の蓋を持つ星では意識は混沌粒子で繋がっていて無限よ。底に降りていければ肉欲や物質的制限から自由になれる。でもあんたらの物質文明はそっちを切り離した。……まあ、滅びますよね……ちょっと肌の色や文化が違う程度で壁をたーくさん作り、所詮人間っていう繊細で脆い単一種族内で助け合わず憎み合ってねえ……」
急に空気が抜けるようにトーンダウンした女神はやるせない顔で男に
「で、何が欲しいの」
揺るぎない男は深く頭を下げると
「毎回ありがたき御高説痛み入ります。単刀直入に申します。リブラーをお貸しください」
女神は黙って俺を見てくる。いや、見られても困る。何の話をしているのかサッパリ分からなかった。女神が相変わらず頭おかしいということだけは分かったが、それはもう凄く思い知らされてます……。




