手打ち
夜空を降下してくる豆粒の様な点は次第に緑の太いツタが幾重にも絡まり合い触手の様にうねっている恐らくは巨大植物だということが分かる。更に俺達の目前まで降下して来ると、根元に蛇の様に自由に動くツタを無数に伸ばし、巨大な黄金の花弁を咲かしている向日葵の様な異様な花だった。
女神は、高さ十メートル近くある黄金の巨大向日葵を見上げ
「ナズ・モーク、よく来たわ」
直後に念話の様な温かい声が直接頭に
「女神様、我らをこの豊かな大地へ植樹し、育んで頂き感謝いたします」
女神は腰に手を当て苦笑いすると
「いやいや、愚かな知的生命体達が難度も迷惑をかけたわ。その度に窮屈な想いをさせたわね」
黒カマキリが右手のカマを挙げ
「ナズの子よ。死について女神様が答えてくださる」
温かい声は
「それはありがたきこと」
女神は俺の肩に腕を回し、肩を抱きながら
「この子が、新管理者のナラン君。見たら分かるようにとても若く、貪欲では無い。死の数は緩やかになるでしょう。後日、この子から説明もあることでしょうね」
黒カマキリと黄金の向日葵は、頭と花を俺へ向け、ジッと見つめてきた。女神は更に
「ナズ・モーク、あなた達植物の願いは何?」
少し間が空き
「ハーピー達の住む大樹が大地に帰りたいと願っております。しかし、ハーピー達の陳情により母なる大天使ナンヤニア様が延命に向かったご様子」
女神は横を向き、軽く舌打ちすると
「……五千年程前にやった手法の許可を願うわ。超大樹ミョウレンのハーピー居住部分を切り離し、反重力で浮かせる。これでどう?」
またしばらく間が空き
「ミョウレンの生えた地から、若木が育つまでならば」
女神が「パンッ」と両手を打つと
「よろしい!それで手打ちね!」
黒カマキリはサッと乗って来た平たい岩ヘと上がり、巨大植物と並んで夜空へと上昇して行った。
女神は大きく息を吐くと
「ここらの陳情は、私がこの大地に連れてきた子達ばかりだから、気を使ってるの」
「何処から連れてきたんですか?」
ずっと黙っていた俺が尋ねると、女神は夜空を見上げ
「あの星々よ。過酷な環境で絶滅しそうだった種族や、繁栄し過ぎて命が余っていた一族から連れてきてる」
「よく分からないですけど、他の世界からってことですよね?」
女神は頷くと
「さっき少し言ったけど、多分意味が分かってなかったと思うから説明するわ。今日は深夜になってからが面倒だからね。休憩しましょう」
そう言って来た。
その後、3時間程、小屋で仮眠をとっていると女神から揺り起こされ
「ナラン君、時間よ。次の子らが山頂でもう待ってる」
手を引かれ小屋から連れ出された。




