律儀さ
話がついたらしいマーメイドが球体ごと夜空へ上昇していき、安堵した様子になった女神とヘグムマレーが、ミツハ姫にとうとう押し倒されたローウェルの側に来ると
「ミツハ姫、お初にお目にかかるヘグムマレー・ウィズです」
ヘグムマレーがしゃがみながら挨拶する。ミツハ姫は正気に戻ると、ローウェルを強く抱きしめたまま上半身を起こし、軽く咳払いをすると
「ナコミ帝国副都エゴモン太守、ミツハ・ナコミです。この度は、何も知らぬわが国の教導役を勤めて頂きありがとうございます」
威厳ある笑顔で返すが、両腕でローウェルをガッチリ抱きしめていて、嬉しそうに三股の尻尾がブンブン左右に振られているので説得力があまりない。
ヘグムマレーは女神を振り返るが、女神が首を横に振って離れた。紹介は必要ないと言うことらしい。ヘグムマレーは微笑みながらミツハ姫を見つめ
「夜も更けて来ております。宿までご案内いたします。私と共に山を降りましょう」
ミツハ姫は頷いてローウェルと共に立ち上がった。真っ青なローウェルはまた俺に「助けてくれ」という視線を送ってくるが、また首を横に振るしかない。
ヘグムマレー達も去り、山頂には相変わらず跪いて祈り続けているリースと、色々垂れ流しながら横になって寝ているアン王女、そして女神と俺だけが残った。女神がダルそうに夜空を見上げ
「マリオンヌーつぎー」
命じる。大きな平たい岩がゆっくり頭上から降りてくる。
岩が俺達の手前に着地すると、人間程の大きさの黒いカマキリが、女神に向けて片側のカマを振り上げ、女神も右手を挙げ答える。そして左手を黒いカマキリに向けて翳し、虹色に発光させると
「シャギャブネ、久しぶりね」
発光した黒カマキリは両眼をグリグリ回し、首を傾げながら、空気をきり裂くような甲高い声で
「女神様、まず、我ら虫族をこの星に迎え入れて頂いて感謝いたします」
女神は苦笑いしながら
「それを毎回する律儀さは好きよ。で、要件を教えて」
黒カマキリは首を左右に傾げると
「死についてです。シーネ様が管理者から降りて、死の数が変わると長老達が言っております」
女神は腕を組んで
「うーん……ちょっと、単一種族だけでその話は難しいかも。ナズ・モークとは上で話した?」
黒カマキリは首を何度も傾けながら
「はい。しかし結論は出ませんでした」
「ふむー……呼んでいい?」
「勿論。助かります」
女神が夜空を見上げると、空から豆粒の様な何かがゆっくりと降下して来たのが見える。




