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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
自己理解と目的の修正

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苦手なもの

 ローウェルは絶句するヘグムマレーに

 「グラジオスリアだ。現世代の海帝だな。こちらヘグムマレー・ウィズ公、お前も知ってるよな?」

マーメイドは真剣な様子で頷いた。ヘグムマレーはしばらく口を半開きにした後

「海帝陛下、す、少し、お待ちくだされ」

そう言った後、女神に跪き

「女神様、ナコミ帝国が教都にたどり着き、根回しをしていたわが国が教皇様より接待役を仰せ仕りました。感謝いたします」

女神はダルそうに頷くと

「ヘグムマレー君、立って。グラちゃんは、彗星剣を返して欲しいそうよ」

ヘグムマレーはすぐ理解した様子で頷き返し、立ち上がり

「海帝陛下、もちろん返還いたしますが、我が国にも立場と言うものがありまして」

申し訳なさそうにマーメイドを見つめると、彼女は笑い出し

「演技は不要だ。で、代わりに何が欲しい」

ヘグムマレーはホッとした表情で

「王が、良きお后候補を見つけましてな。子作りの為の素晴らしき秘薬があるとお聞きしました」

マーメイドは拍子抜けした表情で

「飲み薬か、ローションか」

「……できれば、両方いただければ」

深々と頭を下げたヘグムマレーにマーメイドは少し考え、ニヤリと笑い

「彗星剣の返還に加え、そこに居るローウェルもしばらく貸せ。我ら水棲族はその人間を愛しておる」

俺と女神とヘグムマレーがローウェルを見つめると、照れながら

「いやー……全然良いけどよお……正式な派遣業務として国から会社に金は払ってくれねえとな?」

「もちろんじゃ」

ヘグムマレーが快諾し、話がまとまりかけたその時だった。


 山頂入口付近が何やら騒がしくなって、俺達が一斉に振り返ると

「姫様なりませぬ!」

「神聖なお山なのです!」

「外交問題になりまする!」

男女の悲鳴に近い声が響き渡り、直後に

「ローウェル様ああああ!あなた様のミツハが参りましたあああ!」

何とミツハ姫本人の声がした。俺の側では逃げようとしているローウェルを女神とヘグムマレーが素早く左右から掴まえる。


 明らかに風魔法か何かの強化を受けている速さでミツハ姫はローウェルに駆け寄ると、サッと女神とヘグムマレーが横に避けた直後に飛びついた。そしてローウェルを固く抱きしめ、三股の尻尾を激しく振り、両目から大粒の涙を流しながら

「ローウェル様あ……お会いしとうございましたあ」

完全に捕まったローウェルは大量の冷や汗を流し始め、球体から頭を出してそれを眺めたマーメイドは満足げに微笑むと

「女神様、良いものを見せて頂いた。無敵の男にも苦手なものがあったとは」

初めて女神の名を呼ぶ。女神は安堵した表情で

「水棲族のみんなには、私は頭上がらないわ。アグラニウスから移住させてから長年苦労させてるもんねえ」

「いえいえ、中興の祖であるノア様の御下命でもありますから」

ヘグムマレーが丁重に

「海帝陛下、受け渡しについて、話し合いたいのですが」

そう持ちかけ、三者で話し合いが始まった横で、真っ青な顔のローウェルはミツハ姫に頬ずりされながら俺に「助けてくれ」という視線を送ってくる。俺は黙って首を横に振った。

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