絶句
寝転んだまま星空を見上げていると、同じく寝転んだ女神が
「で、どうすんの」
立ったまま煙草の煙を吐いたローウェルが
「お前の宗教の陳情がたまってんぞ」
「あーもう面倒くさい。月との引き合いのバランスを崩せば大洪水で地表を押し流せるんだけど」
ローウェルは
「へっ」
と吐き出すと
「やったことねえ癖に。そもそもその手のことする高次元人はろくなもんじゃねえだろ?阿鼻叫喚を喰ってるだけだ」
「まあねえ。ボニアス君みたいな平和な子が好きよ」
「超小規模な生き物の性的興奮がご馳走ってのもコンパクトすぎるけどな」
「3次元的な奥行きや構造とは彼らの知覚は違うからね。上から見ると全然違うわけですよ」
「知りたくもねえな」
女神はサッと起き上がると
「ナラン君、ローウェル君、陳情を受けよう。深夜だけどいい?」
俺は上半身を起こして頷く。そして
「ボウガーについては良いんですか?」
女神は真顔になり
「もう惑星中に追跡網を張り巡らせたわ。しばらく動けないはず」
そう言った。
晴れ渡った夜空を見上げていると、大きな球状の液体が降下してきた。中に何かが入っているのも見える。ローウェルはそれを見上げながら
「あー悪くねえな」
珍しく嬉しそうな声を出す。女神も嬉しそうに
「でしょ?マリオンヌに彼女を優先させるように言ったの」
すぐに俺達の前に着地した直径5メートル程の球体の中には澄んだ水が満ちていて、豊満な身体の金髪マーメイドが熱っぽい視線をローウェルへと送っていた。両目が大きく鼻も高い派手な顔だ。
ローウェルは自ら球体へ近寄り
「よお。グラジオスリア、久しぶりだな」
球体の中から顔を出したマーメイドは
「ローウェル、酷いではないか……2年も来ぬとは……」
「わりいわりい……で、何の用だ?」
「うむ……ウィズ王国に彗星剣の返還を求めたいが、交渉のパイプが無い」
そう言ってチラッと女神を見た。女神は頷くと
「32分前にナコミ帝国の使節団が教都に到着したわ。大騒ぎになっていて、ヘグムマレー君がナラン君の意見を聞きにここまで来るはずよ」
全員が俺を見てくるが、見られても何もできないですって!話に付いて行こうとするだけで精一杯だ……。
すぐに山頂入口に魔法で浮き上がったヘグムマレーが高速で現れると、俺達の側へと近づいてきた。そして俺に
「ナランよ。ナコミ帝国の使節団が……」
そう言いかけ、女神、ローウェル、そして球体から頭を出しているマーメイドを見て絶句する。




