神罰追加
トールは深刻な表情で
「僕の両親と姉様は軽い方です……問題は奴隷商を立ち上げたお祖母様です」
「……まだ居るんだな。是非見せてくれ」
俺の口が勝手に答える。サナーは楽しみで仕方ないようだ。
トールにより、古城の最上階へと案内され、階段を上がりきった瞬間には、もう空気が淀んでいた。これ……不味くないか?と俺が思っていると
トールが悲しげに
「優しかったお祖母様はもはや……」
「どうなっているんだ?」
俺の口が尋ねるがトールは首を横に振るだけだった。
古城の玉座の間らしき古びた金属扉がトールの手で押し開けられると、ゾワッとした感覚が全身に広がり、すぐにその原因を俺は理解する。
室内の二段高い位置に設置されたボロボロの玉座には、炎の様に激しく燃え盛る漆黒の人影が
「……フオオ……ヌオオオ……」
などと獣の声の様に不気味に呻きながら鎮座していた。俺の口が
「人の形を失ってるな……」
トールは悔しげに
「レアマイナススキルの……存在転換と雲散霧消が付いています……もうお祖母様は、消えているとスキル鑑定士の方が……」
俺の脚が勝手に動き近づきながら
「全然笑えんな……こりゃ本物の天罰だわ」
トールが慌てて引き留め
「近づいたら危険ですよ!」
俺の脚は勝手に近づいて行き段差を登り、なんと燃え盛り呻いている人影に触った。
「別に、何にもならないだろ?」
俺の手が人影に突っ込まれ左右に揺れる。確かに何もない。そう思った次の瞬間だった。
俺の口が歪み
「うおおおおお!吸い込まれるうううう!」
そう叫んでいた。特にそんな感じはしないので、何言ってんだサナー?と思っていると、人影が次第に少女の形ヘと変わっていき、何処かで見たような両サイドを縛った髪型のシルエットになっていく。すげー嫌な予感がする。怖いとか、恐ろしいとかじゃなくてすげー嫌な予感だ。残念ながら十秒後にはそれは現実となった……。
玉座に足を組んでふてぶてしく座る、黒装束を着たツインテール姿の少女……今、世界で一番見たくない形になっていく。
「世界よ!私は帰って来た!ふっふっふ!完璧な復活!完璧な計画通りっ!」
大げさに両腕を掲げて立ち上がる。
「何で帰って来ちゃったんですか……」
早すぎる帰還につい、そう言ってしまうと女神はニッコリ微笑んで
「サナーちゃんちょっと借りてるから」
意味が分からないことを言い、入口で呆然と見ているトールを指差し
「ズルはダメですねえ。ナラン君も手伝ったらダメよ」
そう言うと玉座から降りて、俺の手を引いてトールの方へと駆けて行き
「やっぱさあ、十八才未満が不幸になるとか私も駄目だと思ったわけですよ。でも……」
固まっているトールの額に手を当て
「根本的に何が悪いか永遠に分からなそうだし、大天使の無断利用と女神への不敬であなたにも神罰追加しちゃいまーす!反省してねえ」
虹色の光を当てるとまた俺の手を引き、近くの分厚い石壁を素手で軽く殴り壊し、背中に天使の羽根を生やすと俺ごと夕暮れの空へと飛び立った。




