罪悪感を軽減
昼食中に俺の身体を操っているサナーは
「仕事内容は分かった。トールのご親族やご両親を見たい」
トールは少し迷った挙句に
「……はい。見て頂きたいです」
俺の顔は微笑んだ。
再び馬車へと乗って、市内の病院へと向かう。トールは少し言いにくそうに
「ズーヤ叔父さんから、見てもらおうと思います。一番軽症なので」
「ああ、何かアドバイスできるかもしれない」
アドバイスどころかスキル削除できるのに、サナー、俺にさせる気ねえな……というのがよくわかる。
市内中心部の三階立ての大きな病院へと入っていく。患者や付き添いの多いロビーを抜け、階段を三階まで上がり、ナースステーションでトールは受付をして鍵を受け取った後、奥の日当たりの良さそうな個室へと俺を案内していく。
「驚くと思います……」
鍵を差し込み回し、扉を開くと中では褌姿の痩せ細った中年男性がくねくねと腰を曲げて踊りながら
「ぴょぴょぽよーん!バブバブバブバブああああ!ぷああああああもああああ!」
意味不明なことを叫んでいた。トールは悲しそうに
「叔父さんは元々太ってたんです。マイナススキル、露悪の発露とダンシングマシーンが付いてます……優しかった叔父さんが……」
俺の手は口を抑えて必死に笑いをこらえている。少しすると咳払いをして
「ふむ……天罰レベル2だな。改心すれば治るかもしれない」
適当なことを言い出した。トールは驚いた顔で
「なっ、治るんですか!?」
別に改心しなくてもスキルを削除すれば治るだろうな……。更に俺の口は
「うむ。恐らくだが、長年奴隷を売ってきたことが女神の逆鱗に触れたのだろう」
また適当なことをペラペラと話す。
「なっ……」
実際は急な方針転換で、女神が適当にマイナススキルを付けまくっただけだろうが……ここはサナーに任す。
トールは戸惑った様子で
「でっ、でも……今までは……」
俺の口が
「向こうの組織は奴隷ロリを人身売買してるんだろう?隠しているだけで、もっと酷い目に遭っている可能性がある」
トールは両目を見開き
「た、確かにジャック会長が……ここしばらく姿を見せないと……」
そして決心した表情で俺を見上げ
「僕の家族を見てください」
と言ってきた。
病院から出て、再び馬車に乗り、市内端の海沿いの小さな古城へと連れて行かれる。衛兵の守る開きっぱなしの門を通り、馬車から降り、城内へとトールは緊張した面持ちで俺達を連れて行く。
城内ホールでは柔らかいマットが一面に敷かれた上で、褌一丁の痩せた中年男性、痩せた中年女性、痩せた若い女性が組み合ったり投げ合ったり、股を広げるストレッチのような動作をしたりと謎の修行の様なことをしていた。それをメイド達が真剣な様子で見守っている。
何これ……唖然と眺めていると、トールが悲しそうに
「マイナススキルの、ここでは無い何処か、一心不乱の過ち、それからプラススキルですが、相撲の才能が付いています……」
「せっ……説明頼む……」
俺の口がそう言う。サナーも戸惑っているようだ。トールはしばらく迷った末に
「ここでは無い何処かは、文字通り、意味もなく別の目的を目指すスキルです……一心不乱の過ちは、まともな努力や思考ができなくなるスキルで、相撲の才能とは、ナコミ帝国で長年行われている神事と競技がくっついたスモーという格闘技の才能です……」
俺の口は小声で
「女神いかれてんな……」
と言って、脳内からボニアスとノヴェナの声で
「ふむー……新たなエロを模索したのか」
「師匠、女神様はできるだけ面白くして悲惨に見せたく無かったのでは?」
「あり得るのう……笑えるマイナススキルの組み合わせで、適当に付け替えた自分の罪悪感を軽減しようとしたんじゃな。何処までも自分本位な女神らしい」
結構鋭い指摘をしていた。俺もそうだと思う。




