くふふふ
馬車の中でトールは、はしゃぎながら
「本物の天使様と会えるなんて僕は幸運です」
「……トール、実は俺は天使では無く、大天使だ。しかも女神様とマブダチでもある」
サナーが操っている俺の口が勝手に動いて、ニヒルに笑うとトールは驚いた様子で
「な、何てことですか!?僕はもっとナラン様に貢ぎ物をしなければ!」
「ふっ……俺は最強の大天使であり、闇と光を合わせ持つ番人でもある。心配するな。金と女と権力には不自由していない」
「お、おおおおお……」
サナー……調子に乗りすぎだろ……概ね事実なのも凄いけど……あとトールも信じすぎな……俺が詐欺師だったらどうすんだ。などと思っていると、馬車が港町の端の大きな倉庫前に着いた。
トールと俺が馬車から出ると、すぐに警備らしき屈強な衛兵達が駆けてきて
「おぼっちゃま、今日の出荷先はウィズ王国です」
「うむ。この方はナラン先生だ。僕が雇った商売のアドバイザーだ。失礼のないように」
衛兵達から会釈されると、俺は偉そうに咳払いをして
「トール君、中を見たいのだが」
「はい!先生!」
トールは嬉しそうに、倉庫の鍵を衛兵に開けさせた。
倉庫の中では死んだ目をした、様々な肌の色をした男女がボロ布一枚だけを着せられ、手足を伸ばすストレッチのようなものをさせられていた。トールは得意げに
「うちは、戦争奴隷しか扱いません。十八以下四十以上の奴隷も扱いません」
俺の口が
「ふむ。つまり戦争で負けた兵士や一般人が主と言うことだな」
「はいっ!でもスネーク商会は子どもをお金持ちに売っています!」
「ふむ……よろしい。他の場所も見せてもらえないか?」
俺の口はニヒルに笑った。
サナーが何を考えているのか分からないが、身体を任せたまま、トールと共に彼の一族の商売を見て回ることになる。どうやら彼以外の一族はマイナススキルで動けなくなっていて、幼少の彼が一人で商売を仕切っているようだ。奴隷を働かせているカフェや、工場、託児所、マッサージ店まで回った所で昼食休憩になり、俺の身体は
「トイレに行く」
と言ってトールから離れた。
飲食店裏の路地でいきなり口が笑い出し
「奴隷専門家の私的には、60点というところだ。奴隷の扱いには慣れてるな。適材適所だ、酷い扱いもしていない」
「どうすんだよ」
「……次はトールきゅんの哀れなご両親ご親族を見に行くぞ」
「楽しんでるだろ」
「くふふふ」
全部一人で会話しているのではたから見ればヤバい人だろうな……と思いながらサナーに身体のコントロールを任せ続けることにした。




