似たようなもの
慌てて、横にズレると黒装束姿のシーネが頬を染め、座ってこちらを見ていた。
「ちょっ……ちょっと待って!サナーが妊娠した胎児に宿る予定だったですよね!?」
「お母様が封印されたのでー……一旦は無しになりましたねえ」
また抱きつこうとしてくるシーネを素早く避けると俺の残像が残った。ローウェルがダルそうに
「お前らーそろそろ夜が明けるからな。警護に戻れよ。ナランは対タカユキ用のその仰々しいスキル達を削除しとけ」
空がゆっくりと白んできた。俺は慌ててリブラーがつけまくっていたスキル群を祈って削除する。
シーネはリース達が祈っている中心部を見て、岩場に座った俺にピタッとくっついて座り
「お父様がーこの身体を製造してくれたのですよー遺骸ではありませーん」
「そ、そうなんですか……前の身体は?」
シーネは頭上を見上げ
「ジン・スカイストリートにあると思うのですがねえ」
絶対に取り戻させない方が良いと思う……それはともかく
「女神様が封印されたんですけど、儀式大丈夫なんですかね」
シーネは八重歯を見せて微笑み
「余裕ですねえ。ローウェルと私が居るのですよ?」
とりあえずそれはホッとするが
「花嫁修行って何してたんですか……」
言ってしまって後悔する。シーネは心底嬉しそうに顔が崩れそうなほどニターッと笑うと
「お父様とお母様のお家で、お料理やお洗濯などを習っていましたよー」
「そ、そうですか」
やはり遠くの世界に連れて行かれていたようだ。
山道をモンク達が登って来て、俺達に朝飯が入った大きなボックスを渡すと、高齢のモンクが
「アン王女はどうかね?」
「審問官様によると、スキルデビルの可能性があるらしいな」
「うむ……それはいかんな」
「まあ、なるようにしかならん」
モンク達は、ローウェルに丁寧に頭を下げ、彼も頭を下げ返すと去って行った。
ボックスを開いてローウェルやシーネと朝食を食べる。サンドイッチや、ビーフジャーキー、ゆで卵等がギチギチに詰められていて昼飯の分までありそうだ。食べ終わって満腹になりボーッとしているとシーネがビーフジャーキーを3本持って立ち上がる。
「ちょっと試してみますねえ」
そう言いながら俺を誘い、中心部の岩場に登り、アン王女の顔の前で
「ほーれほれほれーおいしいですよー?」
等と言いながらチラつかせ始めた。途端にアン王女の全身から脂汗が滲み出てきて、腹が「グーッ……グルグル」と大きく鳴った。シーネは満足そうにアン王女の鼻の穴に2本のジャーキーを突っ込み、残りは自分が食べながら降りてきた。
管理者の先輩なので何か意図があるのかと思って見上げていると、何とアン王女は2本のジャーキーを鼻から抜いて、口に入れて必死に咀嚼しだした。シーネはニヤニヤしながらその様子を見上げると
「意志力はDマイナスってとこですねえ」
「弱いってことですか?」
「ですねー」
そう言ってボックスが置かれた位置まで軽やかに戻って行った。しばらくアン王女を見上げると「ゴクンッ」と音をさせて咀嚼し終えたジャーキーを飲み込んだ。それ以上特に何も起きなかった。
「……」
いや、それだけかい!女神も大概おかしかったけどシーネにも似たようなものを感じ始めた。この親子似たもの同士かもしれない……。




