気象生物
朝食も終えたので面積の少ない草地に座りリースとアン王女の様子を見ながらボーッとしていると、辺りを見回っていたシーネが近寄ってきて
「今日は楽しみですねえ」
「……何がですか?」
「この身体、妊娠できるのですよー」
「……そうですか」
分からないふりをするしかない。頼みのローウェルはさっき休憩に入り小屋に寝に行ってしまった。直後にマリオンヌの声が空から
「次の組降ろすよー」
そう言ってきたのでよく晴れた青空を見上げていると、真っ白な雲がゆっくりと降下してきた。
直径2メートル程度の雲は、俺とシーネの目の前で停止すると、何と人の顔を雲で作りニカッと笑い
「ヒハニーキだ。大天使ナランはじめまして。シーネちゃん久しぶり」
「お久しぶりですねえ」
「どうも……よろしくお願いします」
ヒハニーキと名乗った雲生物はシーネの方を向き
「木星の大赤斑さんって最近どうよ」
シーネは笑いながら
「機嫌良いですよ。最近、他星の気象生物との会見が続きましたから」
「いやー俺も、あの方にはぶったまげたね。やっぱ長生きだし、色んなこと知ってるよな」
「そうですねえ。回転周期や惑星との同期の仕方など物知りですねえ」
「隕石を取り込んだ時は成分分析まで自力でするんだってよ。星空に想いを馳せていてロマンチックだよなあ」
「詩も創っておられますが他のスーパーストーム達には理解されず、ここは田舎だからって嘆いてましたよ」
「いやいや、俺ら気象生物からすれば、あんな都会はないぜ?今度伝えといてくれよ」
「お父様に言っておきますねえ」
「そういえば、シーネちゃんのサイコなお母様は封印されたんだよな。俺、彼女からこの星に派遣されたんだけど、帰っていい?もう海流も正常だし、台風の発生周期すら安定してるぜー?」
「いやいやー、気象がまた不安定になると困りますからねえ」
「シーネちゃんの頼みじゃしょうがねえなあ……」
その後も両者は意味不明な会話を延々とし続けた。
雑談をし続ける両者に全く付いていけないので黙って聞いていると、ヒハニーキと名乗った雲生物が思い出したかのように俺を見て
「あ、説明が遅れた。俺はこの星の気象操作担当だ。分かりやすく言うと、人間などの生き物が繁殖しやすい環境を地上に整えてる」
シーネも俺を見てきて
「他の気象生物さん達をまとめて頂いてもいますねえ。実質、雲達の王様だと思って貰って良いですよ」
「あ、あの他にも喋る雲が……?」
俺の質問に、ヒハニーキとシーネは一瞬固まると笑い出し、ヒハニーキが
「電気を内包する存在は思考が生まれることが多いんだよ。そもそも人間の脳がそう言う構造だろ?」
「ヒハニーキさん、この星の文明はまだ中世ですよー」
「あー……そりゃ大天使ナランも学ぶこと多くて大変だなあ。まあ、生まれたばかりの台風の叫び声とか、薄れていく雨雲の悲しみみたいなのは分からない方が良いけどな」
「殆ど短命ですからねえ」
よく分からないので黙っていると
「それで、今日は何の用ですかー?」
シーネに訊かれたヒハニーキが思い出した顔になり
「そうだそうだ。直径2ミリ程度だけど、混沌の蓋が開いてる。コムーナ諸島のケッテンツー島の端だ。ライウーレン市の東端」
シーネはサッと顔色が青くなり
「不味いですねえ……大天使さん達、出払っていて」
「そこに新米が居るだろ?俺、連れていけるぜ?」
シーネとヒハニーキから見られるが、全く話についていけてないので分からない。




