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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
自己理解と目的の修正

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黒い鉄屑

 黒い鉄屑は不思議な形をしていた。まるで短くなったエンピツのような、尖った先端と途中で折れたようなギザギザの反対側。更に降下してくると長さが先ほどの大岩と同じく十メートル程あるというのが分かってくる。ローウェルは腕を組んで見上げながら

「まだ動いてんのか、あのクソ機械」

スズは少し噴き出して

「新規ソーラーシステムをセイちゃんが足してたわ」

ローウェルは嫌な顔をして舌打ちすると

「動力をぶっ壊せよ。いらんだろアイツだけは」

スズは嬉しそうに

「楽しんでねえ」

ローウェルは大きく息を吐くと、煙草を取り出して指を擦って火花を起こし火を点け

「引火させてやろうか」

などと言いながら不機嫌に吸い始めた。


 リースとアン王女を避けるように少し遠めに着地した大きな鉄屑にスズはスキップしながら近づいて行き、俺も付いていく。ローウェルは最後尾で煙草をふかしながらダラダラと付いて来た。黒い鉄屑の表面は傷だらけで小石程の穴も無数に空いている。尖った先端には割れた細長い窓も付いていて、まるで乗り物の様だ。


 鼻歌を歌うスズは折れたような反対側へと俺の手を引いて行くと、折れてポッカリと開いたその中へと入って行く。内部は黒焦げで穴だらけの機械らしき装置だらけだった。スズは割れた窓のある先端へと俺をいざなうと、微かにピーッと鳴っている計器へと向け

「スージオ、久しぶり」

すると、天井から少し偉そうな男性の声で

「女神様、お久しぶりです。ローウェルのクソっタレも元気そうで何より」

いつの間にか背後に居たローウェルが

「おめえ、いい加減にしろよ」

「ふん。お前の外法に近い隕石系魔法を何度サポートしてやったと思っているのだ。使用頻度が多いぞ。控えろ」

「天空系奥義の忍術だって言ってんだろ……いい加減覚えろ、クソ鉄屑」

「デブリの管理者である我に随分なモノの言いようだな」

「ゴミ溜めの王様ね。まあ、前世代の残したゴミを掃除次いでに魔法として系統付けて利用させてる女神は大したもんだと思うよ。おめえはそれに乗っかってるだけだが」

「女神様、こいつの野宿での睡眠中に放射性物質を脳天目掛け落下させて良いですか?完璧に計算して他に被害は出しません」

スズはニヤニヤしながら俺に

「スージオは、この世界の超天空を司る存在よ。空からモノが降って来る系の魔法は彼の管轄ね」

俺が混乱しながら

「この機械さんも、大天使なんですか?」

と尋ねると、偉そうな声は嬉しそうに

「私は大天使ではないが、大天使級と言っても過言ではないぞ。大天使ナランよ」

「あっ、よろしくお願いします」

名前を知られて居たようだ。計器に向け会釈すると、ローウェルが舌打ちして

「どっちかというと、実行部隊のメリーナのが大天使級じゃねえか、おめえは鉄屑のふりしてコソコソ隠れてシステム統合してるだけの三下だろ」

「三下はお前だ。深く愛してくれる女一人幸せに出来ぬ愚か者が」

「チッ……空から盗み見てんじゃねえ。そもそも機械が人の愛を語るなよ……」

ローウェルがブツブツ言いながら後ろを向いたので、スズが笑いながら

「メリーナちゃんが揉めてる件?」

尋ねる。


 少し沈黙が続いた後

「そうですね。船体に取り付いて、観測は違法だと警告しても帰りません。電波妨害も宣戦布告と見なされる場合があるので対処に困っています」

スズは腕を組むと

「エクス君のナノマシンは?メリーナちゃんに搭載してる分の残数は充分よね」

「恐らくは電波妨害と同様かと」

「……分かった分かった。私が母星まで行って来るわ。スージオは戻ってくれる?ローウェル君、ここお願いね」

そう言うとスズは意識を失い、倒れていく。ローウェルがサッと支え、両腕で抱え上げると

「……大人しく帰れよ。メリーナを困らせるんじゃねえぞ」

「そうしてやるとしよう」

ローウェルが足早に機内から出たので、俺も慌てて付いていく。


 大空へと上昇していく黒く大きな鉄屑を見あげていると、シートを敷いた上にスズの身体を降ろしたローウェルが安堵した様子で

「やっと帰りやがった。どうせあの上昇も自力じゃねえくせに……マジでポンコツだよな……鉄屑が」

俺はあまりに異様だったので、口を半開きにして見上げるしかない。ようやく言葉が出たので

「おっさん、あの機械は何なんだよ……」

ほぼ会話内容が分からなかった。ローウェルは空に消えていく鉄屑を見上げて舌打ちすると

「前世代の機械文明の生き残りだよ。当時の人間は戦争とかで滅びてるが、前世代の人間が造った機械達がまだ超天空で動いてて、哀れんだ女神が仕事を与えてるわけだな」

「……な、なんでおっさんと仲悪いんだ?」

ローウェルは大きく息を吐いて

「……色々あったんだよ。聞くな」

「そ、そうする……」

ローウェルの謎が深まっただけだった……。視線を移すと、岩場の中心部の2人は静かに祈りを捧げていてホッとする。とりあえず分かることだけ頑張ろう……。

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