判定が始まった
その日は結局、食料を買い込んで、宿屋に戻って過ごした。宿泊室にはスズ窓際の机に置き手紙で
「むしゃくしゃしてるので、ローウェル君とヤエミちゃんと飲んで来ます」
などと書き残していた。いや、ローウェル、滅茶苦茶恨んでただろ……大丈夫なのかよ……ホント、頭がどうにかしてるよあの邪神……などとは思ったが、困るのはローウェルなので、俺は翌朝まで一人で快適に過ごせた。
朝日を浴びながら早朝から活気に満ちた教都の街を歩いていき、聖塔の休憩室の扉を開けると、一糸纏わないで祈っているリースとアン王女の周囲の次の儀式をしていたシスター達が俺を見てきたので、サッと扉を閉めた。中から
「警護者ナラン様、リース様は全く心配ありませんが、アン王女は多少お腹の様子が悪いようなので、栓をさせて頂きました」
栓か……そうですか……多分、しなくても肥溜めに繋がっているから、むしろしてる方がキツいと思うが、プロのシスター達の判断なので
「ご配慮ありがとうございます。把握いたしました」
俺もプロの警護者っぽく答えておく。
その後、扉の前で待っているとゲッソリした黒装束姿のローウェルが現れ、小声で
「……ナラン、女神をちゃんと捕まえとけよ……まだ俺の部屋でヤエミと飲んでるぞ……一晩中、女神教の愚痴で、俺の文句なんて微塵も聞く気もねえよあの邪神」
「おっさん、悪かった。マジでごめん」
本気で頭を下げて謝ると、ローウェルは苦笑いしながら、黒頭巾と黒マスクを装着しながら
「お前も、もう付けとけ」
俺も装着しながら、ローウェルにアン王女の栓の事を言うと、扉を見ながら軽く舌打ちして
「……偽聖者スキル疑惑ありってことだよ。教会側の判定が始まったな」
「そうか。早めに解放された方がアン王女の為じゃないか?」
俺や大天使セイもこれ以上気を使わなくていい。ローウェルは腕を組み
「偽聖者とバレた者の末路を知ってんのか?」
首を横に振ると
「一生、奴隷より酷い扱いだぞ。教国から大々的に追放されて、辺境にある神罰を受けた者達専用の監獄島で、毎日過酷な拷問を受けるんだよ」
「どっ……どんな」
「まず、腹に大きくうそつきって入れ墨を掘られて、服も下着も一切着られない」
「……」
知らなかった。更にローウェルは、過酷で過激な拷問の数々を語ったが、ひどすぎるので途中から聞いていられなかった。つまり、偽聖者スキル持ちは、耐久能力だけは大抵高いので、無茶な刑罰も可能だということだ。
流石に考え込んでしまう。もうアン王女は十分酷い目に遭ってきたと思う。どうにかして助けてやれないものだろうか……。そう思った直後に扉が開いてシスター達がいそいそと出てきて
「準備ができました」
頭を俺達に下げると、通路を去って行った。休憩室にローウェルと入ると、柄のない純白のローブを着たリースとアン王女が立って待っていた。リースは微笑んでいるが、アン王女は小刻みに震えながら
「くっ……あっ……ぽえっ」
などと小さく悶絶している。ローウェルに小さく
「栓、外したらダメだよな?」
「触ったらバレるぞ。魔法がかけられている。アン王女もそう聞かされているはずだ」
俺は頷いた。しばらくは様子を見よう。




