平和でいいな!
何が起こっているのか分からないので、スズの身体に入った女神に
「あの、一体、どういう……」
どうにか尋ねると、項垂れながら
「えっと、とにかく私は儀式を混乱させたくて……」
そこまでは分かる。アンチ女神教の邪神だからな。……しょうがない、そんなもんだろう。スズはやるせない様子で窓の外の盛り上がっている観衆を見つめ
「あと、風を感じたくて……」
もう何を言ってるか分からないが、黙って聞くことにする。
「マリオンヌが人間だった頃に、酷い皇帝だったでしょ?」
でしょ?と言われても分からないが、頷くと
「それで、私が神罰を食らわせてあんな姿になったんだけど、ついでに神の為の労役を課してジン・スカイストリートの下水道に封印してたんだけど、最近上層も行けるようにしてて……」
早くも話が明後日の方へ行きだした。方向を修正しようと
「マリオンヌさんとあの虹色の光と緑色のバリアに何の関係が……」
スズは思い出した様子で
「つまり、マリオンヌが独裁クソ皇帝だった時、調子に乗って作ってた地上侵攻用の機械人形をずっと封印してて、さっきそのうちの2体に、私とナラン君の精神体が入って、それでジン・スカイストリートから教都に向け、飛び降りたわけだけど」
何となく分かってきた。スズは実に口惜しそうに
「機械人形には全て、大きな街一つくらい軽く殲滅できる自爆機能が付いていて、それを教都上空で起動させたわけですよ。私とナラン君が宿っていた2体を連続で。しょーもない教義を信じて安穏と生きている女神教の信徒どもに、真の恐怖を与えたくて」
「……」
マジでイカれてる。こんな狂気が剥き出しで宿っている存在を見たことが無い。
言葉を失っていると、スズは緑のバリアに覆われた上空を見上げながら
「でも女神として、神罰を受けるほど大罪を犯していない教都を更地にするわけにはいかないから、仕方なくバリアを張ってあげたわけ。そしたらさあ……」
「花火みたいになったってことですね?」
スズはまた大きく息を吐いて窓の外、路地一杯に出てきた空を見上げ歓声を上げている大衆を眺め
「おめーら、平和でいいな!」
そう吐き捨てるとベッドに大の字に寝転んでふて寝をし始めた。
「……」
もしかして女神の頭の中は、ゴミ溜めなのか?……と、とりあえず、リースの様子でも見に行こう。この邪神と同じ空気を吸いたくない……。
聖塔内の休憩室でのリースは薄布を纏い、光が射し込む中、相変わらず跪いて祈っていた。その隣で同じく薄布を纏い跪いて祈っているアン王女も落ち着いているが、そういえば大天使セイだかが、儀式中に付けたスキルは強力過ぎる組み合わせなので削除しろと言っていたなと、ふと思い出し、1メートル背後まで近づいて手を翳し、頭の中で
「大海原のイルカ、オートヒール、迸る情熱、湧き出る舞踏の4つのスキルよ!消えろ!」
そう祈ると、直後にアン王女の身体がガクガク震えだし
「……くっ……おっ……また……ぽげっ」
等と小さく唸りだした。先輩である大天使セイの言付けなので許してくれ……と思いながら、逃げるように休憩室を出ていく。




