ナコミ帝国
少しすると黒雲の中にジン・スカイストリートは移動して、女神が実に嬉しそうに
「ナコミ帝国の副都エゴモンについたわ。あっぱれな都なのよ」
「あっぱれなんですか?」
意味が分からないので聞き返すと、女神は嬉しそうに
「そうよ。副都を守護する神獣エイビスがそろそろ……」
そう言った次の瞬間には、空中都市の上空の空間に巨大な裂け目が開き、そこから巨大な虹色の毛並みのインコが……いや、見間違えでは無く巨大なインコがつぶらな瞳をこちらへと向けていた。
巨大インコと我々はしばらく見つめ合い、インコがくちばしを開き、威厳ある声で
「女神よ……何用だ。」
女神は嬉しそうに
「エイビスちゃん!ミツハ姫に会いに来ましたよ!」
俺は人生で始めてインコが嫌な表情をするところを見た。明らかに表情を歪めた巨大インコは
「……ならぬ。と言っても会うのであろう?」
女神は全く相手の表情を読んでいない様子で嬉しそうに
「うん!今聖者の儀式が一日休みで!その間にちゃちゃっと姫を助けようかと!」
すげー失礼な物言いをする女神の代わりに俺が全力で頭を下げていると、巨大インコは
「……程々にして帰れ。期待はしていない」
そう言って空間の裂け目が閉じ、去って行った。女神は嬉しそうに
「許可が下りたわ!よーし!会いにいっちゃうぞー!」
俺の手を取ると、辺りの空間が歪んでいく。
……
気付くと俺と女神は、オリエンタルな室内に立っていた。草で編まれた床と、木の柱、そして祇の窓、龍や鳳凰が掘られた家具……おお、本で読んだことがある、遠い異国の光景だ。女神は気にせず辺りを見回し
「あれー……いないなあ」
そう言った直後、引き戸が開かれ、痩せた美しい女性が入ってきた。鮮やかな着物姿の黒髪を腰まで伸ばした涼やかな顔立ちの女性は、頭には黄金の毛並みの猫耳が生えていて、着物のお尻辺りの穴からは、耳と同じく黄金の毛並みの三本の尻尾が伸びてユラユラ揺れている。
女性は悲しげに窓際の椅子に座ると
「……また、吐いてしまった……これではローウェル様に嫌われてしまう」
項垂れる。女神が女性の近くに行くと、俺に向き直り得意げに
「この子が、ミツハ姫よ!」
「何か吐くとか言ってますけど……」
女神が嬉しそうに頷いて
「神獣バゥスンに、太ったらローウェル君が振り向くかもって提案したでしょ?それを伝えられたミツハ姫は、頑張って太ろうとしているわけですねー」
「あー……」
俺のせいか……いや俺とリブラーのせいだなこれは……。女神はペラペラと
「ローウェル君もさー、とっとと結婚してナコミ帝国のっとちゃえば良いのに。変に逃げるから不幸な女の子が増えるわけですよ」
つい、余計なことだと思うが
「この姫は、ローウェルと同じ歳だって……」
女神は苦笑いしながら
「私から見たら、みんな子どもよ!それにバケネコ族は長寿だし」
「バケネコ族って言うんですか?」
知らない種族だ。女神が黙って扉を見ると、開いて、猫耳に猫尻尾を生やした女官や、同じく猫耳に猫尻尾で刀を携えて着物を着たサムライ……これは書物で知っている、サムライ達が入ってきた。年齢や体格はそれぞれだが、全員美男美女だ。入って来たバケネコ族達は、草が編まれた床に頭を擦りつけ
「姫!もう過食をお控えください!」
「姫!我々は心配しているのです!」
そう一斉に心配をミツハ姫に訴え出した。




