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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
自己理解と目的の修正

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休憩

 二つのスキルをアン王女に付けた直後だった。急にアン王女は跪いた姿勢から立ち上がり、両手を頭上に広げると水場の中、激しく水を蹴り上げながらリースの周囲を腰をくねらせて踊り出した。呆気にとられた精神体の俺をアン王女は何度も透過しながら、六角に囲まれた水場を大きく使いステップを踏みながら踊り続ける。ニャンギエフや貴人達は驚くどころかアン王女に向け祈り始め、画家達も新たな画用紙をイーゼルに素早くセットしてスケッチをし始めた。


 けたたましい笑い声で振り返ると、女神が腹を抱えて爆笑していた。

「あははは!見てよ!踊りながらまだお腹壊してる!偽スキルが最高レベルのオートヒールに勝ってる!あはは!」

女神が指した先のアン王女は、確かに時折、腹筋や尻肉がキュッと不自然に締まるが、そういうの人間なら誰でもあるだろ……いくら主神とは言え笑いものにしていいのか?……という疑問を抑え込み黙っていると女神は笑いすぎた両目を拭いながら

「よろしい。アン王女の不敬は許しましょう。あーまだ別の儀式あるし、楽しみだなあ」

そう言いながら消えた。


 女神は納得したようなので、サナーが入ったスズの様子を見に行くと、壁際で動かなくなっていた。慌てて自分の物理体に戻り、軽く揺さぶってみるが反応が無い。横に出現した大天使セイが

「消えたな。ナランの願いが、心の本の情報を元に一時的に復元したものだったから、本物のサナーじゃなかったんだ。サナーの思考をコピーした弱い電気パルスの集合体とでも言うべきか」

項垂れる俺にセイは真顔で

「まあ、いずれ何とかなる。思い込むなよ」

そう言うと消えた。


 その後、更に一日が過ぎ、アン王女は踊り続け、対照的にリースは全く揺るぎなく跪いて祈り続け、無事に御聖体沐浴行水の儀式は終了した。一日の休憩の後、次の儀式が始まるとのことだ。警護の任務を一旦解かれた俺は、例のサナーが消えた宿屋の部屋へと戻り、疲れが溜まっていたのか、ベッドに倒れ込むと一晩寝いっていた。


 早朝に起き出して明け放った窓から、相変わらず聖者出現の儀式に湧く教都の人々を眺めていると、ローウェルが音も無く入って来た。彼は俺の肩を叩き

「ナラン、大丈夫か?」

「多分、大丈夫だと思う……」

大きく息を吐くとローウェルは

「まあ、女神はあんなもんだし、サナーちゃんはそのうち帰って来る。気にするな」

「おっさん、女神様やべーよな」

ローウェルは苦笑いすると

「元々変な性格の生き物なんだろうな。そいつが超パワーを手に入れて超生命体として成り上がったから、人格と能力がいつまでも釣り合わないんだろ」

「そう言うもんかな」

ローウェルはポンッと俺の右肩を叩くと、窓から路地へと軽やかに飛び落り、去って行った。俺は、今日は気分転換に教都を見回ることにする。

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