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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
高位存在による介入の損失計算と立て直し

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復元

 大天使セイは俺と共に、アン王女へと近づく。もちろん二人とも精神体だ。俺とスズの物質的な身体は、相変わらず壁際で祈ったポーズのまま固まっている。

 「まずは大海原のイルカとオートヒールレベル10だな。大海原のイルカは、以前ナランが遭遇した大地の子スキルの水属性版だ」

「ああ……山の戦いで相当にてこずった山賊のスキルですね……」

セイは頷くと、アン王女を黙って見てくる。俺はアン王女の肩に手を当て

「大海原のイルカとオートヒールレベル10よ!アン王女に付け!」

そう、声に出して祈ると、跪いた祈りの姿勢のまま、痩せ我慢を続けていたアン王女の両肩の力が抜け、全身が桃色に染まっていく。そして

「おっ……おほっ……むはっ……ぽえっ」

という謎の吐息が連続して漏れた後、ブルッと大きく震え、そして口元がだらしなく緩み、気持ちよさそうな表情になった。


 大天使セイは安堵した様子で

「これで体力的には問題ないぞ。ただ、御聖体沐浴行水の後はすぐスキル削除しろ。無条件で手に入れるには強すぎるスキルの組み合わせだ」

俺は黙って頷く。後は女神を笑わせるスキルだが、よく考えてみると

「……肥溜めとアン王女のその……そういう出口が繋がったとき、女神様、爆笑されてましたよね……」

すげーウケてた。笑い転げてた。マジで邪神だと思う。皆真面目にやっているだけなのにどうしようもない邪神だろアレ……。セイは真顔で

「確かに、女神はそういうシュールな状況が大好きだな」

「……そういう状況にアン王女がなるシュールなスキルを付ければいいんですよね?」

セイは苦笑いしながら

「相変わらず肥溜めと繋がっているし、女神的にはもうなっているとも言えるが、まあ、追加で付けてやれ」

確かにアン王女の下半身の筋肉はついさっき、キュッと締まっていた。一切姿勢に変化が無い隣のリースとは対照的だ。


 しばらく考える。シュールな状況か……女神が喜ぶシュールな状況……くそっ……分からない……あの頭がおかしい邪神が喜ぶシュールな状況を作れるスキル……こんな時、女神と気が合いそうなサナーが居れば、あっさり解決しそうなのに……ふと、そう思ってしまうと、次の瞬間、俺の頭の中でサナーの声が

「おっ……なんだここは?アン王女の監視部屋?」

そしてノヴェナの声で

「うわー!サナーちゃん精神世界に復活したんだけど!?」

更にボニアスの声が

「頼りなさすぎるナランの無意識が、勝手にサナーちゃんを復元しおったぞ!」

なんかよくわからんが……サナーが復活したようだ。よくわからんが……そんなあっさり帰って来て良いのか?大天使セイは壁際で祈っているスズの身体を指差し

「ナラン、近くに寄れ。スズの身体を復元されたサナーに使わせるぞ」

更によくわからない事を言ってきた。


 頭の中ではサナーとボニアスが

「おい!ボニアス!近寄るな!ノヴェナ!服をくれ!」

「サナーちゃん!相変わらず最高じゃのう」

などとぎゃあぎゃあ言い合っている。急いでスズの身体の近くに行くと、大天使セイがスズの額を、長い右の人差し指で軽く突いた。直後にスズは両目を開け

「うわっ。なんだ。ナラン?儀式か?」

横で突っ立っている動かない俺の物理体を見たあと、慌てて周囲を見回し始めた。

「……凹凸が無い……最近ちょっと出てきたのに……手も顔も何か違う……」

愕然としながら自分の身体を触り始めたサナーにセイがため息を吐きながら

「ちょっと脳内に直接、超高速で説明してくる。待ってろ、すぐ終わる」

俺の隣から消えた。


 スズはすぐに理解した顔をすると、まるでサナーが悪巧みを思いついたような表情で頷き

「あー……そういうことか。ナラン、見えないが精神体で横にいるんだろ?」

小声で言ってきたスズに頷くと

「確か、御聖体沐浴行水で、千年くらい前の聖者が踊りながら水浴びをした記録がある。ダンス系のスキルをアン王女に付けてみろ。迸る情熱と湧き出る舞踊の組み合わせだ」

俺はスキル名を忘れないうちにアン王女へと駆け寄り、両肩を触ると

「迸る情熱と湧き出る舞踏のスキルよ。アン王女へと付け!」

そう念じた。

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