可憐で傷つき易い不器用な少女
女神はワクワクした様子で
「やっぱさー色々な人が入れるロボにしたいでしょ?」
「ロ、ロボ?」
俺が謎の言葉に戸惑っていると?大天使セイが額に手を当て項垂れながら
「ロボというのはロボットの略称だ。機械で動く物体を指す言葉だな」
「ティーン兄を機械にするんですか!?」
慌てて女神に抗議すると本気で驚いた表情で
「もっ、ものの例えよ……ナラン君、この子から色々虐待されてきたのに、庇いたいの?」
「酷い兄でも同じ親から生まれた兄ですよ。機械になってほしくないです」
大天使セイは女神を手招きし、いそいそと女神が横に来ると
「女神、ちゃんと説明しろ。お前が他者の心が分からないサイコパスなのはナランも分かってきたと思うが、だとしても何でもして良いわけじゃない」
「セイちゃん?私は普通ですよ。ちゃんと他者の痛みも感じられるわ」
「いい加減、欠けた自分を認めろ」
「いーや、可憐で傷つき易い不器用な少女なだけです!まだまだ成長途上の永遠の十六歳ですよ!」
「……」
大天使セイは本気で嫌そうな表情をした後、一人、俺の隣に来て
「……もう重々分かってると思うが、女神はとてつもないアホだ。人の心が今一分からないんだ」
「それはそうでしょうけど……」
小声で答えるとセイは重々しく頷き
「なぜ、ティーン・ベラシールをロボ化しないといけないか、セイ様が、ちゃんと説明する」
と言ってきた。
セイの説明はこうだった。まず今教えたようにティーン兄の意識が戻ることは無い。そして、兄を放置していると、様々な機会で俺……ナランの弱みとして利用される可能性がある。それはボウガーがやってくるかも知れないし、大天使ナランとしての俺の弱点として今後できる敵対勢力が利用するかも知れないし、未来の王族ナランのゴシップネタに利用されるかもしれないとのことだ。
更に大天使セイは、ティーン兄をどうロボ化するのか説明し始めた。兄の意識はもはや壊れていて空洞なので、それを利用して様々な精神世界の住人が自由に入れ替わり使える身体に改造しようと思っているが、それだけではなく、自動機械のように、例えば教会の儀式の奇跡などを女神の代わりに行う機能も付けたいとのことだ。
セイは苦悶に満ちた表情で
「兄弟のお前にとって、本当に辛いと思うが、様々な要素を鑑みるに最善の選択肢であることは間違いない。残念ながら発案者の女神は我々より知能と能力は高い」
俺はしばらく俯いて考えた後、横たわって動かない兄の頬を撫で
「……兄、不出来な弟でごめん」
そう、言った直後にティーン兄の両目がパチリと開き
「そんなことは無い。お前は良い弟だよ」
上半身を起こすと、深く皺が刻まれた笑顔で微笑んできた。驚いていると、女神が嬉しそうに
「試験的にモノラース君に入って貰ったわ」
大天使セイも黙って頷く。タイミング良く病室の様子を見に来た看護師が慌てた様子で
「先生!せんせーい!ベラシールさんが起きてます!」
大慌てで廊下を駆けて行った。




