違和感
女神は指を鳴らし、次の瞬間には薄暗い部屋の中に俺たちは居た。目の前にはテーブルを挟んで座ったふくよかな貴婦人を水晶玉に手を翳し占っている元村長が座っている。元村長は真剣なまなざしで、何かがぼんやりと映った水晶玉を貴婦人へと押し出した。貴婦人はそれを見てハンカチを取り出し、涙を拭いながら
「パオリちゃんザマス……素敵なワンちゃんでした」
元村長は真剣な顔で頷くと、慣れた手つきで取り出したタロットをシャッフルし、そしてサッとテーブルに並べる。貴婦人はそれを見て頷き、奥から出てきた若いメイドがササッと色紙にタロットの位置をメモしたものを受け取ると、貴婦人は数十枚の紙幣をテーブルに置いて立ち去った。
若いメイドが
「先生、今日はこれで休みです。お疲れさまでした」
立ち去る直前に元村長は数枚の紙幣を渡しニカッと笑った。メイドは深く頭を下げ立ち去る。よく見たらあの子、ルカ兄が地元から連れてきた子だな。ここで働いていたのか……などと思っていると、ずっと様子を見ていた女神が
「んー……ぬぬぬ」
腕を組んでうなりだした。
「どうしたんですか?」
「いや、何かおかしくない?」
元村長はタロットカードを片付けるとテーブルに置いた水晶玉をジッと見つめ始めた。
「まあ、確かに妙に真面目だな。と思いますけど」
元村長にしては金に汚くもないし、仕事も真面目に取り組んでいるようだ。女神は訝しげに
「いや、なーんか違和感がねえ」
「具体的にどこがおかしいんですか?」
女神は大きく息を吐くと
「やめましょう。他を当たるべきよ」
そう言って俺の手を握った。同時に景色が歪んでいく。
次に出現した場所は、病室だった。真っ白い顔のティーン兄が清潔なシーツを掛けられてベッドに横たわっている。そうか……すっかり忘れていたが、兄はずっと意識不明で王都の病院に入院していたよな……。俺が呆然とベッド脇から見下ろしていると、女神が微笑んで
「もう完全に壊れてるから、これを改造しましょう」
「こ、壊れてる?改造?」
女神は屈託ない笑顔で微笑むと
「あなたのお兄さんは、放っておいたら二度と、起き上がることはないわよ」
「そ、そうなんですか?」
いつの間にかベッドの反対側に立っていた大天使セイが
「それはセイ様も保証する。もう壊れている」
女神だけだと全く信用できないが、大天使セイの言うことならば間違いはないのだろう。そうか……兄はもう……。少しずつ悲しくなっていると、女神は俺に微笑み
「よーし!さっそく改造しちゃうぞー!」
無邪気に言ってきた。セイが俺に「許してやってくれ」と言う様な視線を向けてきたので頷く。




