代役
いやアイデアとか言われましても……戸惑いながら周囲を眺めていると、いつの間にか、アホみたいな顔をした俺が横に立っていた。女神がニヤリと笑い
「身体から精神体を抜いたわ。もう自由に喋れるし、好きな角度から見て良いのよ」
そう言いながら、魔法水の中で跪き祈っているアン王女の下半身へといきなりスライディングしていき、そのまま迂回して反対側まで滑って行く。そして立ち上がると
「まあ、私は触れられないけど、ナラン君は皆の内臓まで見放題よ!さあナイスアイデアはよ!」
ニカッと笑ってピースサインしてくる。
女神の頭のおかしさに多少慣れてきたので、頭を下げ感謝しつつ、自由に歩き回って儀式の様子を見回る。儀式を取り囲んだ画家達は、イーゼルに立てられた画用紙に色を付けている人たちが多い。素人の俺から見ても既に相当な完成度だが、きっとこれを参照しながら、本番の大きな絵画を書くのだろう。芸術家って凄いよな……などと思いながら、魔法水をかけ続けている貴人達や教皇の近くもグルっと見回る。皆、真剣だよな。いい加減にやっている人など一人も居ない。
水場の中心で跪き祈っている2人にも近づく。リースは穏やかに目を閉じ跪き、胸の前で両手を合わせている。全く姿勢にも呼吸にも乱れがなく、完璧だ。対するアン王女は、明らかに痩せ我慢をしている。絶え間なく掛けられている魔法水でごまかされているが、近づくと苦悶に歪んだ顔からは涙や鼻水が流れ続け、全身から脂汗が噴き出しているのが分かる。更に体中の複数の筋肉がピクピク痙攣していて、定期的に小さく「オッ……」「くはっ」「うくっ」等と呻いた直後、尻肉がキュッと締まる。多分、出てるんだろうが……考えないでおく。
その後、遠巻きに取り囲むように眺めるシスター達やモンク達も一通り観察し、教皇の背後で、両手と両足を適当に振りながら腰をクネクネさせる変なダンスをしてフザケているいる女神の隣に行き
「あの、誰も直すとこないんですけど……別にド変態プレイとも思いませんし」
少女の顔を顰めた女神に
「結局、女神様が気にされているのは、奇跡起こすのがダルいってことですよね」
「まあそうね」
俺はホールをグルっと見回し
「奇跡を起こす当番を作ればよくないですか?例えば、モノラースとかリブラーなら、さっきのあれできそうですし、ノヴェナさんとかもボニアスに習えばいけるのでは?」
女神はニカッと笑うと
「合格よ。あなたの精神世界内住人は、確かに余力がある。じゃ、精神世界内で会議しましょうかー」
そう軽く言って指を鳴らした。
……
気付くとアン王女監視部屋の椅子に座っていた。近くにはアン王女の横に座り、熱心に王女を観察しているボニアスと、そのド変態性犯罪者に
「師匠、これはどういうプレイなんですか?」
真面目な顔で尋ねている露出度高めな猫コスプレ姿のノヴェナが座っている。ボニアスはアン王女から目を離さず
「……うぬぬぬ……これは凄いぞお……国を背負ってしまい引くに引けなくなった詐欺師が、全ての痴態をさらけ出し、しかも出たものを容赦なく吸引され……出るたびに物凄い羞恥と快感で脳が満たされておる!こっ、こんなエクストリームドMプレイは初めてじゃっ!」
嬉しそうに叫んだボニアスに、何故か女神も嬉しげに近づいて行き、横にしゃがむと
「良いでしょ?2万年分の給料よ」
「うぬぬぬ……さすがじゃなあ。こんなものを見せられては、迷うことなく契約延長じゃよ」
ノヴェナが立ち上がり、呆れている俺の横に来ると
「ナラン君、師匠は知的生命体の性的エネルギーを吸って生きる高次元人だよ」
「……よくわからないけど、多分しょーもない生き物ってことですよね」
ノヴェナは首を横に振り
「高次元人達で恐怖や死を食べる者もいる中で、師匠の食事はかわいい部類だと思うんだけど」
「……」
いやマジでどうでもいい。ボニアスの正体とか本当にどうでもいい。そんなことより、儀式の奇跡をする代役を探さないと……。




