色の洪水
栓が開いたワインの大瓶を持った教皇が
「では!女神様の御慈悲に代わり、僭越ながら私が魔法をおかけします!諸侯の皆様、瓶の先を聖者のお二人にお向けください」
そう宣言すると
「スプラッシュ!」
よく通る声で唱えた。同時に女神がダルそうに左手を掲げ「パチッ」と指を鳴らす。
俺は美しさに目を奪われてしまう。貴人達が空けられた瓶先をリースとアン王女に向け、そこから噴射される七色のワインが、大きな虹をかけながら2人に振り注いで行く。色の洪水が水場の上や中を泳ぎ回り、踊り回る奇跡的な光景を口を半開きにして眺めていると、女神が大きく息を吐いて
「ワインの中身の分子構造を混沌粒子を用いて改変したのよ。よーするにまた私の奇跡ってこと」
俺は呆けて頷くしかない。女神は更にウンザリした様子で
「数百年前、一回さあ……新規聖者関連儀式で奇跡を全部止めてみたことがあったわけ。もーええ加減にせえって思ってねえ……そしたらどうなったと思う?」
俺が目の前の光景から目が離せずいると、女神は俯きながら
「……皆、泣き叫び出して、土下座しながら私に非礼を謝り始めたのよ……いつまでも自立できない子供じゃないんだからさあ。別に何処も失礼じゃないんだって、ただ、私が飽きてるだけ」
そう言うと床に胡座をかいて座り込み
「でも、駄目な子ほどかわいい。シーネちゃんもね」
そう言うと、奇跡的な光景を見つめ始めた。
ワインが尽きると、教皇以外の貴人達は全員交代して、ウィズ王国の3人目は何と、青白く薄く光る豪奢なローブを纏ったヘグムマレーが出てきた。そして貴人達はパシャパシャと輝く魔法水をリース達2人にかけ始める。あまりの神聖さと参加者の真剣な様子に圧倒されていると女神がヘグムマレーを観ながら
「彼のことはとーっても評価してる。生まれる前リースちゃんにマイナススキルが大量に割り振られると決まった時も、彼なら大丈夫だと思った」
そして立ち上がると、真剣に魔法水を浴びせているヘグムマレーに近寄り、ギリギリ触れないほどの距離で右手を翳すと
「……ふむふむ。腰痛レベル3、思考の霞レベル4ってとこか。ナラン君、いえ、大天使ナランよ。このマイナススキルは消すべきだと思う?」
俺が首を縦に振ると、女神は苦笑いして
「老化に伴うよくあるマイナススキルよ。高齢の彼がこの程度で済んでいるのは、相当に生活を気を付けているからね。老化によるマイナススキルは容易く消しちゃダメ、消したら、他の誰かが不要に背負うことになる」
そう言って、俺の隣まで歩いてきて
「ま、彼のことは放っておくとして。それよりも、ここから3日間こんな感じですよ。大天使ナランには、こういうのを改革してほしいんだけど、なんか良いアイデアある?」
いきなり無茶振りしてきた。




