失くす前に、後悔する前に、怯えないで
サナーに膝枕されたまま、祭壇の女神像に向け座って祈っている2人を眺めていると、リースには頭上から聖なる白光が差し込み、アン王女にはドス黒い陰が差した。扉を開け、部屋に入ってきたローウェルが
「陰陽並んで元気で宜しい」
などと軽口をたたきながら、俺達の横に立ち
「警護は俺に任せて、教都の宿屋で休んでこい」
そう言った。
サナーが塔内を流れるように進んでいき、いつの間にか外へと出ていた。警備のモンク達に挨拶しながら、流れるように街へと出て行った。付いていくと背中を見せ進みながら
「私、子供の頃、真剣に女神に祈ったことあったんだ」
「そうなのか?」
意外だなと思っているとサナーは前を見ながら
「奴隷をこの世から無くして下さいってな。でも……」
「そうだな」
俺達の国から奴隷制度が無くなる気配は無い。サナーは青空を見上げると
「多分、些細なことなんだ。女神にとって奴隷制度なんて」
「……」
真剣に女神に掛け合ってみるかと考えているとサナーが
「……人間が自分で変えていかないとダメなのかもな。女神も分かってて無視してるのかも」
あの邪神にそんな深慮遠謀あるか?と首を傾げていると宿屋へと着いた。
サナーは迷うことなく宿泊室へと俺と入ると
「覚えてたんだ。檻車に乗ってる間、暇で。教国内の地形、主な建物の内部構造はローウェルに補足して貰った」
「そうか」
俺はベッドに倒れ込んで大の字に寝転ぶ。下着姿になったサナーは横に寝転んできてニッコリ微笑み
「……私、今が一番幸せだなあ」
「……」
どうなんだろうか。リースもサナーも居て、俺は惑星支配者だ。でも色々とやるべきことが山積みで幸せを感じている暇がない。
サナーは俺に甘えるように胸の辺りに転がり込むと
「大事な人にはちゃんと喋って、触って、そうした方が良いんだよ。失くす前に、後悔する前に、怯えないでさ。だから私は……」
次の瞬間にはサナーは金色の輝く砂粒になり、そして跡形もなく消え失せていた。




