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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
高位存在による介入の損失計算と立て直し

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191/344

整地

 椅子に座り、呆然と御者席に居る満面の笑みの俺を見つめる。変な感じだ。俺が俺を追い出したのか……。そうだ、心の本を読みに行こう。何か、身体に戻るためのヒントがあるかもしれない。


 立ち上がり、部屋から出ていこうとすると

「なっ……ナラン……」

背後からサナーの声がする。振り返ると相変わらず髪型などが整った黒装束姿のサナーが頬を染めながら立っていた。その姿を見た瞬間に俺の手足や身体が薄くなり、慌てた顔の大天使セイがサナーの真横に出現すると

「女神ー!いい加減にしろー!」

そう叫んでサナーを抱きかかえ消え失せた。2人が消えると俺の身体が元に戻る。何だったんだよ……。などと思いながら、廊下へと出ていき、そして階段へ向け、歩いていく。


 一階へと降り、エシュリキアコーライ達で溢れる中庭の回廊を進んでいくと、シャツとジーンズを着た大天使ナーニャが近づいて来て

「ナラン君ごめんねー」

人の良さそうな顔と綺麗な金髪を下げながら謝られる。

「いや、良く分かってなくて」

ナーニャは複雑な表情で

「私がさー、隣に居るから、消えることはないよ?」

「さっき薄れたのは消えかけてたんですかね?」

ナーニャは黙って頷くと俺の手を取り

「ここに接続された暗黒地帯の亜空間層があるでしょー?あれってさー上の方にジン・スカイストリートもあるんだよー」

「そうなんですか?」

「そうそう。でさー付いて来てー」

ナーニャは俺の手を握った。


 2人で屋敷から出て、前庭を歩いて門の前まで行く。相変わらず門の向こうは夜で、こちらは真昼の異様な光景だ。ナーニャはニッコリ微笑みながら

「もう、現実の暗黒地帯はありませんよー。だからねーこっちも明るくていいんだよ?」

俺に問いかけてくる。

「確かに」

スンナリ納得してしまうと、閉じていた門が「ギギギ……」と音を立てながらひとりでに開いていき、同時に目前の暗黒地帯の闇が薄れていく。


 背後から

「よっしゃー!ナランさんやっと開拓始めたんやなー!」

騒がしい声がして、白いローブを着たピンク髪の少女が走って来た。確か暗黒地帯で討伐した神聖生物レベル2の生き物が変化した姿だ。数十人のエシュリキアコーライの子供たちも引き連れている。全員同じローブを着ているのが面白い。少女は門の手前で立ち止まり、ニカッと笑うと

「お前ら行くでー!」

子供達を引き連れ、明るくなっていく森へと駆けて行った。唖然としていると更に背後から

「待ってー!」

「新しいアソビバだー!」

「ひゃっほー!」

などと大歓声を上げながら無数のエシュリキアコーライの子供達が開いた門の外へと次々に駆け出して行き始めた。


 ナーニャは途切れずに駆けて行く子供達に微笑みながら

「よしよし、ちょっと整地されるまで待つ間ー。心の本を見に行こうかー」

俺の手を引いて屋敷内へと戻っていく。


 地下室へと降り、心の本棚の前にたどり着くと、モノラースが近くの壁に寄りかかり腕を組み、考え事をしているような表情で床を見つめていた。こちらに気付くと

「ナラン、大丈夫か?」

心底心配している表情で尋ねてくる。

「……どうだろうか……良く分からない」

そう答えた俺を、ナーニャは本棚の前の椅子に座らせると

「セイさーん、心と身体のずれ、持って来てー」

そう言った。

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