狂った計画
良く分からない会話が繰り広げられているので、まともに答えてくれそうな大天使セイに
「わかり易く、なんなのか教えてもらえると……」
そう尋ねてみると
「ああ、サナーをナランと交わらせずに、ナランとの子を妊娠させられるんだ。女神はそうしようとしてる」
「……それ、やめて貰えますか?俺はサナーと子供作る気とかないですよ?」
はっきりと告げると、立っていた女神はぺしゃっと座り込み、床を見ながら
「そ、そうよね……そりゃ……愛がないと……」
ブツブツと呟き出した。モノラースが笑いながら
「おい女神!自分の子の身体を人の胎内で作ろうとするな!」
俺が慌ててモノラースに
「ど、どういうことだ……?」
モノラースはニヤニヤしながら
「女神はリースとサナーをほぼ同時に妊娠させ、出来が良さそうな方の胎児にシーネの魂を宿らせようと企んでるぞ。なんという悪だ。この世界の創造者がこれ程邪悪だとはな!」
俺はもう言葉が出ない。本当なら女神はとんでもないことを企んでいたということになる。慌ててセイを見ると
「セイ様は止めたと言っただろう?女神、自分の責任で説明しろ」
女神は座り込んで床を見たまま
「リースちゃんの利用はもう諦めたってえ……」
そう、ポツリと言った後に
「……でも……どうせサナーちゃんはこのままだと一生独身で、子供何て作れないし……それだったら遺伝的にはナラン君の子供であるシーネちゃんを出産すると幸せかなって……シーネちゃんも意識あるままサナーちゃんの胎児からやり直したら……自動的に偽聖者スキルでの修行相当の罰ゲームになるでしょ?」
全員から一斉に非難の目を向けられた女神は、いきなり服ごと溶けてそのまま床に吸い込まれて消えてしまった。
よくわかった。流石に理解した。二つ尾の女神はアホなのだ。真剣に言っているとしたら筋金入りのアホだし、ほぼ間違いなく真剣にやろうとしていた。唖然としているとノヴェナが
「で、でも一応サナーちゃんには、話してみたらどうかな?」
「……断るに決まってるでしょ……」
モノラースが笑いをこらえながら
「大天使セイよ、呼んでも良いか?」
セイは長い足を組み、面倒そうに頷いた。直後にサナーが俺の横に出現する。
ローブを纏っているが、髪型や顔は整えたままのサナーは緊張した表情で
「ど、どうした?モノラースが呼んだから来てみたら……」
そう言いながら俺の膝に座ってくる。座るな、とは言えない。こいつにも大事な話だ。モノラースが楽しげに女神がやろうとしていたことを詳しく説明し始める。
サナーは話の内容を聞くと、しばらく腕を組んで考え込んだ後
「悪くない……」
予想外の言葉を吐いた後、セイを見て
「大天使セイさん、ナランの薄いコピーみたいな生き物は作れるか?私と一回交わったら消える様な魔法生物がいい」
セイは頷くと
「そいつにナランの子種を移植して、愛の営みはしたいんだな?」
サナーは頷くと膝から飛び降りて、俺の前に跪き
「ナラン!私は例え、中身がシーネでも!ナランの子供が産みたい!魔法生物と勝手にやって勝手に出産するから!子種だけくれ!」
とんでもないことを言ってきた。
もう自分の気持ちが良く分からない……俺の子種を入れた魔法生物がサナーとやって、サナーを妊娠させて、シーネを出産させる……。イカれてる……完全に狂った計画だ。そしてその計画にサナーは乗ろうとしている。
「……お前、本当に良いのか?」
サナーは迷いなく頷いた。
「……リースにも許可取って良いか?」
サナーは一瞬躊躇うと
「金髪女にも言いに行こう。そこは正々堂々とな」
そう言ってきた。セイが指を鳴らすと、意識が落ちる。
……
寝室のベッドの上で裸のサナーと重なっていた。サナーも同時に起きたらしく
「あの、このまま……子種貰えれば、そこで終わるんだが……」
「いや、それはダメだ」
サナーは残念そうに立ち上がると、床に畳んでいた黒装束を着始める。
2人で檻車の横まで行くと、座って祈っていたリースは目を開けて立ち上がり、サナーを格子越しに見下ろしながら
「……良いけど、あなたが産むのはあくまでシーネさんであって、ナランの子供ではない」
サナーは俺の腕を掴み
「う、うう……女神が教えたな」
リースは毅然とした態度を崩さず
「私が生む子がナランの実子であり、ウィズ家の跡取りよ?そこは理解している?」
感情を消した表情でサナーに言い放つ。サナーは半分俺の背中に隠れながら
「……うん。理解してる……お前らの遺産狙いとか、そういうんじゃない」
リースはホッとした表情で座ると
「じゃあ、ナランが良いなら好きにして」
そう言って再び目を閉じて祈りだした。隣の檻車ではアン王女が腹をかきながらイビキをかき出した。




