こうなったら
大運河を進んでいく帆のない魔法船の甲板後方、自動で動いている操舵輪の近くに座り、干し肉や水などで朝食を取る。空は雲一つなく晴れていて、相変わらず周囲を行き交う船は絶えない。しかし昨日のリースとの交わりは何だったんだろうな……。などと考えているとローウェルがやってきて
「サナーちゃん、連れて行かれてるな」
そう言いながら横に座ってきた。
「おっさん、アレ何なんだよ」
ローウェルは晴れた空を見上げ
「神の奇跡だな。気に入った生き物を女神が遥か彼方の世界に招待することがあるらしい」
「大丈夫なのか?」
若干、女神に対する信頼が揺らぎつつある。ローウェルは気にしていない様子で
「まあ、放っておけ。女神も色々と考えてるし、少なくとも悪意のある存在ではないぞ」
確かに悪い感じは一切しないが……まあ、考えても仕方なさそうなので俺は黙って食べ続けた。
その後、日が暮れるまで特に何も起きなかった。四つん這いで「ワンワン」吠えだしたアン王女の餌……じゃなくて食事はローウェルが一人で与えていた。相変わらずリースは一切手がかからず、三食必ず女神と大天使達に囲まれて檻車内で楽しげに食べているので、俺は心配せずに気を抜いて甲板からの景色を眺め、過ごしていた。
夜も更けたので、寝ようとして寝室に入る。そして予想もしていないものを見て、固まった。
「ナラン……待ってた」
ベッドの上には、髪が綺麗に散髪され撫でつけられ、眉毛が整い、顔含め全身の肌がシミ一つない裸のサナーが膝を折り、こちらへと向け真っ直ぐに座っていた。
「お前……まるで女性みたいだな……」
「うう……元々女だ……どっ、どうだ?」
潤んだ両目を向けてきたサナーに
「……いや、綺麗だけど……」
そう返すと抱きつかれ
「……な、なあ……女神によると、今日、ナランが抱いてくれたら、私、妊娠できるんだ」
「……」
いきなり何を言ってるんだこいつは……と黙っているとサナーは抱きしめる力を強め
「……女神と大天使達が私を整えて綺麗にしてくれたんだ……ナラン、一回だけ、一回だけで良いから!」
「いや、一回だけとか言われても……リースを裏切ることになるだろ?」
それだけは出来ない。
サナーは俺から腕を離すと覚悟を決めた表情になり
「女神と大天使達から、一回だけ大罪を犯しても赦される権利を貰ってる。ナラン、私はお前の奴隷だな?」
「そうだな。いつでも奴隷解放するぞ?」
サナーは首を横に振り
「奴隷が主人を犯すのは大罪だろ!?」
そう叫ぶと、怪力で俺をベッドに押し倒し、あっさり服を脱がしていく。俺は妙に冷静で、特に抵抗もしなかった。
「……サナー、これで良いんだな?」
そう問いかけると、サナーはビクッとした後、涙目で
「ナランが!金髪女とばっかりやってて!私を相手してくれないからあ……」
そう言って、俺の身体に崩れ落ちる。次の瞬間には意識が飛んでいた。
……
目を開けるとアン王女の監視部屋で座っていた。周囲には少女の姿で腕を組んだ女神、緑髪の女性、薄ら笑いを浮かべるモノラース、呆れ顔の大天使セイ、そしてノヴェナ達も座っていた。俺の背後ではアン王女がうつ伏せで寝ていて、隣の檻車ではリースが星空へと祈っている。
セイが億劫そうに口を開き
「ナラン、セイ様は反対したんだ」
「あの……俺、意識が落ちたと思うんですけど、俺の身体は……」
女神が深刻な表情で
「サナーちゃんは魔法で縛ってるわ。ナラン君ごめんね」
モノラースが吹き出して大笑いし始め、ノヴェナが手を合わせ
「ごめんっ!」
謝ってきた。俺の身体を勝手に操ったことだろう。
「いや、それはもう良いんですけど……サナーどうするんですか?」
女神は勢い良く立ち上がると真顔でセイを見つめ
「こうなったらナラン君の子種を直接サナーちゃんの子宮にワープさせるしかないわね!そうすれば皆でウィンウィンよ!」
セイは嫌そうに顔を逸らし
「処女懐胎とか一挙両得とかもうちょっと頭良さそうな言葉を使え……少しは当事者のナランに気を使ったらどうだ?」
俺は何を言っているか分からずに首を傾げるしかない。




