絶対に
ローウェルが言った通り、本当に何も無いままに日が暮れて行き、夜になった。甲板に固定された2台の檻車内ではアン王女は暗い中、腹を出して寝ていて、リースは女神と大天使2名と談笑しながら見たこともない異国の夕食を食べている。対照的なのはもう慣れたが、スキル1つでこんなにも違うんだなと思う。
ローウェルが甲板の見張りをすると言うのでサナーと船内へと入る。船室は4部屋あり、そのうち2部屋が狭い寝室だった。2人で分けようと提案すると
「嫌だ。ナランと寝る」
サナーはそう言って俺と腕を掴み、室内に引き込んだ。壁の狭い丸窓から運河を生き来する船舟や岸の明かりが見える。サナーは素早く服を全て脱ぎ、濡れタオルで身体を拭きながら
「ナラン、拭いてやるぞ?」
俺は大きく息を吐いて、扉を開け
「自分でやる」
別室から濡れタオルを持って来て、服を脱ぎ拭き始める。
身体も綺麗になったのでベッドに横たわると隣にサナーが寝転んできて
「ヨシッ!今日はナランは私のものだ!」
そう言った直後にガバッと起き上がり、丸窓を見始めたので俺も上半身を起こし顔を向けると、大天使セイと大天使ナーニャが窓の外からジッと俺達を見ていた。
大天使達……多分、浮きながら見てるよな……リースが食事を終えて、まさか暇なのか……。などと思っているとサナーが黙ってカーテンを閉め
「ヨシッ!今日はナランは私のものだ!」
またそう言った直後、サッと低い天井を見上げる。天井には女神がいつもの少女の姿で、まるで蜘蛛の様に身体を貼り付け、こちらを見ていた。着ている花柄模様のエプロンが垂れている。
しばらくサナーと絶句して見上げているとニヤリと笑って女神は消えた。サナーは呆れた顔で
「あいつら金髪女と示し合わせて、私とナランが繋がれないように妨害してる!」
「大天使さん達と女神様をあいつらは無いだろ……お前も聖者なんだぞ?」
サナーは顔を真っ赤にすると
「絶対に許せない!私は今晩ナランと赤ちゃんを作ってみせる!絶対に妊娠する!」
「そんな簡単に子供って出来ないぞ?お前、大丈夫か?」
リースですら妊娠する兆候はない。しかし興奮してきたサナーは全く聞かず、俺を全力でベッドに押し倒すと「はーはー」言いながらキスをしようとしてきた次の瞬間、重なった俺達の上に虹色の渦が出現し
「あっ!ナラーーーーーーン!!」
サナーだけ悲鳴と共に吸い込まれていった。
静かになった船室でしばらく固まった後、……どうせ、大天使達か女神がやったんだろ。それに、サナーも聖者だし、もしかするとあいつも気づいていない内に教国に移送されてる可能性すらあるよな……女神や大天使達も悪いようにはしないよな。などと考え落ち着いた。よし!寝よう!大丈夫!ベッドに横たわり、寝ようとするとカチャリと扉が開いた。
ローウェルか?と思って上半身を起こすと、何とリースが立っていた。
「檻車から出たの?大天使さん達や女神様が出ていいって?」
思わず尋ねると、リースは恥ずかしそうに頷いて、室内に入りながらローブと下着を脱ぎ始め
「あの……女神様達が、今日、ナランと繋がったら、絶対に赤ちゃんできるって……2人とも天使になる前が良いって」
「……いや、俺はいいんだけど、移送中は出たらダメじゃなかったっけ?」
戸惑っていると、扉の向こうから大天使セイの声が
「女神が直々に許可した。安心しろ」
そう言ってわざわざ大きく靴音を響かせて去って行った。
……いや、女神が許可したと言ってもそれは果たして良いのか……聖者移送のルール違反だろ。というかいい加減だな、大丈夫か。などと頭の中に過るが、小屋以来数日、リースと一切触れられなかったので、身体の欲求には勝てなかった。俺は一糸纏わぬリースを抱き寄せ、そこから朝まで2人で求め合い続けた。
……
目覚めるとリースは居なかった。ベッドもシーツも綺麗で、俺の身体も汚れてはいなかった。夢だったか……と思いながら、朝の光に照らされながら甲板に出ると、檻車の中で頬を染めたリースが女神と大天使達に囲まれてキャッキャッと談笑しながら朝食を食べている。女神と大天使達は俺を一斉に見ると、リースの耳元に微笑みながら何か一斉に囁きだした。リースは顔を真っ赤にして何度も頷いている。
何かあったのかな……などと突っ立って考えていると、ゲッソリしたサナーが船内から出てきて
「……異世界に拉致されて……変なもん食わされて……快適な寝室で寝てきた……ベッドも枕も快適過ぎて具合が悪い……」
「そ、そうか良かったな……」
サナーはリースと女神と大天使達を見つめると気付いた顔で
「リース!昨日ナランとやっただろ!私には分かるんだからな!」
腕を振り上げ檻車ヘと駆けて行き、そのまま、突然前方に現れた虹色の渦に勢い良く吸い込まれていった。また何処かに拉致されて行ったらしい……。腹減った……飯食うか……。




