そういうことか
檻車の横まで行くと、リースが安堵した様子で
「良かった。多分、誰かがナランの身体を操っていたでしょ?」
「……ノヴェナさんに火の番任せてた筈だけど……」
リースは深くため息を吐くと
「そういうことか……私も、うたた寝してたから全部は見てないけど、起きたらサナーちゃんとナランがくっついてて、親しげに話してたの」
「うん……」
「それは何時ものことだから気にしてなかったんだけど、そのうち抱き合ったり、キスしたりしだして……しかもナランが押し倒したから、私、慌てて……」
殆ど全ての状況が掴めた。最悪だ……。
俺の身体を任せていたノヴェナが勝手にサナーを口説き始めて、その気になったサナーが、いきなり俺が正気に戻ったので思わず殴ってしまったんだろう……。そしてローウェルは全て分かった上で寝たふりをして楽しんでいたようだ……。惑星管理者としての仕事を必死にやって、戻ってきてみたらこれかよ……。
とりあえず羽交い締めを解かれたサナーにも近づき、事情を説明すると
「そういうことか……キスがうますぎると思ってたんだ……」
「……ノーカウントで頼むぞ」
「……あと、すっごい揉まれたんだけど……」
何処を揉んだのかは聞かないことにする。早くも寝袋に戻ったローウェルを見ると、俺も眠気が急激に襲ってきたので
「すまん……朝まで寝るから、火の番交代してくれ」
サナーは仕方なさそうに頷いた。きっともうすぐ朝だが、短時間でも睡眠を取りたい。寝袋に入るとすぐに寝入ってしまう。
……
朝日に照らされて起きる。向こうでローウェル達は、檻車内で四つん這いのアン王女に朝食を食べさせている。その隣に並んだ檻車内ではリースが、エプロン姿の女神とリラックスした様子の大天使セイと大天使ナーニャに囲まれ、湯気の立つ豪華な料理を食べているのが見える。ホッとしつつ、アン王女と対照的だなと思いながら、俺の近くに刺してあった焼き芋の皮を剥いて頬張っていると、黒装束のローウェルとサナーが近づいてきた。
サナーはうんざりした様子で
「本物の聖者様は女神と大天使達の食事サービス付きなのに、偽聖者様は雑炊を犬食いだぞ……このまま教国にアン王女を連れて行って大丈夫なのかよ……」
ローウェルはどうでもよさそうに
「俺らは仕事だからなあ。偽聖者になった責任はアン王女が背負えばいい」
そう言うと少し離れた場所で煙草をふかしだした。サナーは肩をすくめてくるが、俺にはどうしようもない……いや待てよ。
「おっさん、偽スキルって俺、消せるよな?」
声をかけるとローウェルは振り返り
「やめとけ。偽の女神の加護スキルは、恐らくマイナススキル換算で数千万人分だ。消すと世界のバランスが崩れる」
そう言われては仕方ない。放って置くことにする。
アン王女とリースが食事を終え、女神達も消えたので、一晩で無闇に色々ありすぎた山中から出発することになった。変わらずローウェルが見事な御者をしているアン王女の檻車に続き、スキルのお陰で御者が出来ているだけの俺の檻車が、山道を上って行く。




