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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
高位存在による介入の損失計算と立て直し

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ベタな神の奇跡

 ニャンギエフの背後の女神像に乗り移った俺は、とりあえず

「ごほんっ」

咳払いをすると、天井から女神像の周囲に虹色の光が降りてくる。驚いたニャンギエフがこちらを振り返ったので

「えーニャンギエフさん、新任の大天使のナランと言います。スタンピン大統領を煽って戦争しようとするのをやめてください」

自分でも間抜けだと思うが、全部ド直球に言ってみることにする。俺の声は大聖堂中によく響いている。実は光も声の響きも、女神像への俺の乗り移りも、ジン・スカイストリート下層の下水道で全て操っているのだ。当然、操っているのはマリオンヌで、彼は自嘲した表情で

「僕は神の奇跡ライブステージの演出と音響担当だから」

と言っていた。


 ニャンギエフと群衆はしばらく固まった後、我に返ったニャンギエフが焦った様子で

「……ちょ、ちょっと待つにゃ。聖書の啓示シーンそのものだけど、大天使ナラン何て名は聞いたことないにゃ」

これもマリオンヌが対策を立てていてくれた。俺は落ち着いて

「大天使である証拠に、集まった信徒さんのマイナススキルを10名分消去しましょう。どうぞ、女神像の前に」

ニャンギエフは愕然としながら群衆を振り返り

「おめーら!大天使ナランさんが10人限定でマイナススキルを消してくれるらしいにゃ!子供の重いマイナススキル持ち優先で、選んでくれにゃ!」

すぐに群衆が真剣に話し合い出したのでホッとしている。スキル消去もマリオンヌがやり方を教えてくれた。大天使セイから事前に許可も取っているらしい。


 半時間もすると、祭壇の前に、白い猫人の母親に寄り添われたやせ細った同じ毛並みの子供の猫人が上がってきた。ニャンギエフが口を開く前に俺が

「消して欲しいマイナススキルを、お子さんご自身の口で言ってください」

マリオンヌによるとこれが重要だそうだ。自己申告させると、俺が楽に消せるらしい。子供が口ごもり、母親が耳元にしばらく言い聞かせると子供の猫人は

「大天使様……病魔の手招き……です」

俺はそのマイナススキルに付いて詳しくは知らないが聞いたことはある。地元で寝たきりの子が生まれつきそのマイナススキル持ちだったはずだ。

「分かりました。女神像に触れてください」

母親に寄り添われた猫人の子供がゆっくり近づいて来て、俺の乗り移った虹色の女神像へと痩せた右腕を伸ばして触れた直後

「病魔の手招きよ……消え失せろ」

そう念じながら言葉を発すると、虹色の光が子供の腕から全身に伝わった。


 マリオンヌによると、この光も奇跡用の分かり易い演出効果だそうだ。猫人の子供の全身に虹色の光が伝わると

「おっ……お母さん!身体が軽いよ!」

飛び跳ねて母親に抱きついた。俺は冷静に

「マイナススキルは消しました。ご心配なら後日、スキル鑑定もしてください。他に消したい方はおられますか?」

大聖堂中の群衆から大歓声が上がった。


 その後、9人の老若男女猫人の重いマイナススキルを無事に消し、完全に全員が俺を信じたところでもう一度

「ニャンギエフ大司祭、スタンピン大統領を操るのをやめてください。戦争はいけません。女神様は心配しておられますよ」

念を押しておく。実際はあの感じだと女神は一切心配していないと思う……というかこの国にちゃんと興味あるかすら怪しい気がする。ニャンギエフが項垂れながら

「僕は戦争を煽ってにゃいけど……大統領には女神様が心配してるって伝えておくにゃ……」

そう答えてきた次の瞬間には、俺の意識はジン・スカイストリートの水球の中へと戻っていた。


 マリオンヌと並び、大天使セイがこちらを見つめている。そして

「もうウィズ王国山中の焚き火の場所に向かっているぞ。よくやった。後はセイ様に任せろ。セイ様、あの手のベタな神の奇跡が苦手でなあ……どうしても笑ってしまうんだ。ナランがやってくれて助かった」

マリオンヌがニヤリとして

「ここからは大人の権謀術数の世界だからね」

セイは頷くと

「そこはナランには未だ早い。それはそうと合計レベル83のマイナススキルを消したわけだが、着くまでにこれをどうするかの話し合いをしたい」

そう言ってきた。

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