女神様しゅごしゅぎー
マリオンヌから降臨の仕方などを詳しく聞いていると、ヒリュウ国首都の大教会上空へと到着したと告げられた。
「とりあえず、大教会の大聖堂祭壇前の女神像に、あらかじめ乗移ってればいいよー」
「そうですね」
流石に数時間説明されて手順は分かった。覚悟も出来たので
「お願いします」
と頼んだ次の瞬間には、蝋燭や光石で照らされた広大な大聖堂の奥から、人々で一杯の……人々で……人々?
女神像に乗移っている俺の近くに、小柄な猫頭のシスターが来ると、大聖堂内の座席一杯に座り、ガヤガヤと話している小柄な群衆に向け
「皆さん!もうちょっとしたらニャンギエフ大司祭が来ますにゃー!静粛にお願いしますにゃー!」
一斉に小柄で色とりどりの服を着た猫頭の群衆から
「遅いにゃー!」
「ポンコツ司祭もっと早起きしろにゃー!」
「猫族の癖に遅くまで寝んにゃー!」
「ニャンギエフ出てこいにゃー!」
「お前が強欲なダメ司祭なのは分かってるにゃー!」
「やーい!トラアス教国中央大学四浪十二留!」
「推薦入試で四浪したの歴史上でおめーぐらいだにゃー!」
「せんそーはんたーい!魔法弾撃ち込んだ黒幕もどうせお前だにゃー!」
「アホー!」
好き放題文句を言う大聖堂を埋め尽くした猫顔の群衆たちに、猫顔のシスターは落ち着き払った様子で
「今日は聖者出現祭りの前夜祭!ニャンギエフ大司祭は平和を愛し、女神様を信仰する高貴なる御方ですにゃ!皆様もニャンギエフ大司祭と女神様に世界の平和を祈りましょうにゃ!」
その直後に祭壇近くの扉が開き、大柄で、でっぷり太った、金の派手な刺しゅうが眩しいローブ姿の黒い毛並みの猫人がノソノソと祭壇の前まで歩いてくると、低くよく通る声で
「……わが国には言論の自由があるにゃ。しかし行き過ぎた言葉は誹謗中傷だにゃ。おめーら、僕は戦争を煽っていないにゃ……平和を愛する大司祭だにゃ」
一斉に非難轟々となった大聖堂内で、シスターが慣れた様子でパイプオルガンの前に座ると、大聖堂中に響き渡る荘厳な演奏を始め、ニャンギエフらしき猫人が低いよく通る声で
「おっおー!女神様しゅごしゅぎー!」
いきなり歌い出した。
何これ……何がどうなってんだ……普通の人間だという前提でマリオンヌから数時間話を聞いていたので理解が追いついていかない。猫人なら、ポトスンという会社の先輩は知っているが……こんな猫人だらけの国があるとは知らなかった。大聖堂内の猫顔の群衆は
「おっおー!女神様しゅごしゅぎー!」
ニャンギエフと同じメロディを歌い出した。なんだこれ……何が起こってるんだ……。ニャンギエフは更にパイプオルガンの旋律に合わせ
「しゅげーパワーで奇跡を起こすにゃー!」
それも群衆が復唱すると更に
「みんなハッピー!ハッピーライフー!」
猫顔の群衆は次第にウットリした顔になり
「カリカリお肉食べ放題ー!だいしゅきだいしゅき女神さまー!ホールドオン!」
大聖堂が一体となったうねりの様な大合唱になっていく。そこでニャンギエフがサッと横に右腕を払うとピタッと大合唱が止まり、ニャンギエフの
「にゃーにゃー!にゃーにゃー!」
という低い猫の鳴き声に、群衆が同じテンポで様々な音程の猫の鳴き声を被せていき、それにパイプオルガンの荘厳な演奏が加わると、とんでもなく神秘的な猫空間が広がっていく。いや自分でも何思ってるんだという感じだが、そうとしか表現出来ない。
ゆっくりと演奏と合唱が終わり、満足した様子の群衆へ得意げなニャンギエフが
「おめーら、3日後からの聖者誕生祭りにも来てくださいにゃー」
そう群衆に呼びかけたタイミングで、ようやく我に帰った俺は、大天使としての自分の使命を思い出し、降臨することにする。




