呼んでるよー
サナーとローウェルは焼き芋を食べてしまうと、檻車の中で四つん這いで手を使わず食べるアン王女に外から干し肉や水の入った皿を与えると、慣れた様子で荷物から寝袋を取り出し、焚き火の近くに戻って来ると
「良し。サナーちゃん、後はナランに任せて寝るぞ」
少し離れた場所に寝袋を敷いて二人とも寝てしまった。
俺はリースが心配で檻車へと近づくとスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていて安心する。アン王女も寝ているようだ。とりあえず、焚き火の近くに座って、1本だけ残った焼き芋をどうにか火傷しないよう、火バサミを使って外へと出し、しばらく冷やす。しかし……1人で火を見ながら座っていると、これまでの全てが夢のようだ。俺は王族のリースに愛されて、惑星管理者になり、大天使で……大天使セイから色々と託されて教国に向かっている。
何なんだろうな……どんどん大ごとになってるよな。俺は大きな農家の三男で実家を追われ、無学で弱い傭兵だったのに。全部リブラーのお陰と言えばお陰だが……余計な運命を背負わされたとも言えるし
「……」
考えても仕方ないか。とにかく俺はやるだけだ。突然、頭の中でノヴェナの声が
「マリオンヌが呼んでるよー」
しばらく固まった後に小声で
「何かあったんですか?」
「うん。惑星の反対側のヒリュウ民主主義共和国で、異常があったんだって。もうジン・スカイストリートは頭上まで来てるけど」
思わず立ち上がり、夜空を見上げるが、暗いので何も見えない。またノヴェナの声が
「あの、私が代理でナラン君の身体を操作して火の番をして、ナラン君の意識をジン・スカイストリートのコントロールルームに飛ばすってやり方もあるけど」
「良く分からないですけど、それで……」
次の瞬間、俺も意識は落ちる。
……
目を開けると、マリオンヌの一つ目に覗き込まれていた。周囲は前と同じ、水に満たされた球体内で、身体がない。マリオンヌは大口で笑うと
「もう、ヒリュウ民主主義共和国上空までジン・スカイストリートを飛ばしてるよ。到着までに説明するね」
「お願いします」
声は出た。というか周囲の水が声を発している。不思議な感覚に何とも言えない気持ちになっているとマリオンヌが
「えっと……まずは、ヒリュウ国のスタンピン大統領が狂ったんだ。少し離れた地域のナコミ帝国の上帝ダイゲンを長距離魔法弾でいきなり爆殺しようとして、神獣に防がれた」
「……」
良く分からないが黙って聞くことにする。更にマリオンヌは
「両国は一触即発状態で、ナラン君がやるべきことは二つ。スタンピン大統領を行動不能状態にすることと、大統領を裏で操っている女神教の現地大司祭ニャンギエフの排除だね」
「めっちゃ難しそうですけど……」
マリオンヌは一つ目を上に向け、少し考えると
「いや、そんな難しくない。ヒリュウの首都、ガレンドオブレガースで、聖者出現が伝わって、ちょうど女神教の祭りの前夜祭が行われようとしているので、ニャンギエフは早朝から大教会で祈りを捧げる準備をしてる」
「そう言えば……聖者が教国にたどり着いたら、女神教圏では祭りが行われ……戦争が止まる……あっ、そうか……」
マリオンヌはニヤリと笑うと
「今しかタイミングがないからねえ。焦って尻尾を出したんだね。ナラン君はとにかくニャンギエフ大司祭が大聖堂に入ったタイミングで降臨して問い詰めてくれれば良いから」
「……できるか分からないですけど、手伝って貰えるならやってみます」
ここまできたら仕方ない。俺がやるしかないと思う。




