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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
高位存在による介入の損失計算と立て直し

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素敵な時間をありがとう

 一階へと向かったマリオンヌがスライムの身体から伸ばした触手でガチャリと扉を開けると、殺風景な敷地内には眠そうな大天使セイが立っていた。空は晴れ渡り、朝日が差している。マリオンヌはセイに近づいていき、俺も歩み寄ると

「ナラン、とりあえずジン・スカイストリートをお前の自宅上に移動させておいた。解放された暗黒地帯は今は領土問題でややこしいからな」

「俺の家の上……?」

セイは欠伸しながら頷き

「お前、天使の羽根スキル付いてるから飛んで自宅まで降りろ。あとな……」

「は、はい」

セイは朝日に照らされながら

「管理者であるお前は、自分のスキルも他人のスキルも自由にいじれるようになったが……」

「そうなんですか?」

セイはダルそうに頷くと

「他人を弄る時は、リブラーを通して、お前の精神世界内で有識者会議を開け。気軽に他人のスキルをいじるんじゃないぞ。女神みたいに各所に迷惑をかけることになる」

「女神様が何かやったんですか?」

セイは舌打ちした後に大きくため息を吐くと

「高コストマイナススキルをな……一斉に消しやがった……簡単な指示だけで、細かいバランス調整はセイ様に丸投げだ……ちょっとこれからハルンと話してくる」

「社長と!?」

驚いているとセイはダルそうに頷いてその場から消えた。黙って聞いていたマリオンヌがニヤリと笑い

「帰っていいよ。また何かあったらここに呼ばれるから」

俺は釈然としないが頷いて、メキメキと背中から2枚の羽を出すと自然と空へと飛び立った。


 青空の下のジン・スカイストリートは美しかった。中心部の城は崩壊しているが、色とりどりの街並みは整っていて朝日に暖かに照らされている。空中都市の周囲に虹色の膜は無く、風に乗りながら俺は少しずつ高度を落としていく。確かに眼下には廃墟群が広がっていて、近くに見慣れた町や、傭兵派遣会社の社屋と広い敷地も見える。更に降りていくと、目立つアン王女の大きな屋敷が見えてきて、その近くに小さな我が家が見えた。


 自宅の前に静かに着地し、羽根を背中に戻す。不思議なのは服が全く破れないことだ。羽根が生える時、背中の布を取り込んでいるのだろうか……まあ良いか。玄関近くの隠し場所から鍵を取り出し扉を開くと、人けは全くなかった。


 久しぶりの安心感を感じながら、何か食べようと食卓まで行くと、メモが置いてあるのに気付き、手に取る。そこにはこう書かれていた。


 ナラン、1週間前、暗黒地帯の解放と同時に私のマイナススキルが全て消えました。私は……私は過酷な運命から自由になりました。もうナランに頼らなくても1人で生きていけるのです。それと同時に私はよく分からなくなりました。本当にナランを愛していたのか。私は結局マイナススキルの奴隷であって、そのマイナススキルを緩和してくれるナランに飼われていただけだったのではないか。多分、こういう疑問が出てくる時点で、私は純粋にナランを愛していなかったのかもしれません。私は、あなたと別れます。王都でマイナススキルの無い生まれ変わった自分を見つめ直そうと思います。さようなら、ナラン。素敵な時間をありがとう。幸運を。


 リース


 俺は腰の力が抜けてヘナヘナと床に座り込んでしまう。これ……振られたってことだよな……。しかも1週間も経ってたのか……。うわー……このタイミングでか……大天使になって……暗黒地帯を解放して……このタイミングで振られた……いや確かに、俺なんかに、美人で頭が良くて有力王族のリースが婚約までしてくれるとか……そんなのありえないってずっと思ってたけど……嘘だろ……リースのマイナススキルがなくなっただけで振られた……。


 床で大の字に寝転んで天井を見つめていると、いつの間にか入ってきたシャツとショートパンツ姿のノヴェナが横にしゃがみ込み

「モノちゃんが超心配してて、現実世界の方で会いにきたよ」

「そうか……精神世界の皆は俺の様子見てますよね……」

ノヴェナは苦笑いして

「リースちゃんは放っといてあげて。それにナラン君、これでフリーだし、好きな子と付き合えるよ」

「いや……あの、すいません……2階のベッドまで運んで貰えますか……」

ノヴェナはあっさり俺を背負うと2階の自室ぃへと俺を運び、ベッドに寝かせてくれた。

「しばらく1人に……」

「うん。気軽に呼んでね」

ノヴェナは素早く去って行ってくれた。俺は両目を閉じ、気絶するように眠り込む。

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