管理者
太い閃光が何本も下から射出されるたび、崩れていくマリオンヌキャッスルを俺の目は勝手に動いてキョロキョロと見つめながら、アンジェラやヘコム達と虹色の膜に包まれたまま遠ざかって行く。気付かなかったが、外では未だ飛び回る数十人の男のヒト達とソングァークが炎の息や爆裂や稲妻を撃ち合いながら激闘を繰り広げていた。その様子を横目にジン・スカイストリート全体を包む巨大な膜を抜けて行くと、空中都市下部の半透明な下水道は無事だと分かる。しかも下から次々撃ち込まれている閃光を、下水道を超高速で動き回る虹色の何かが受け止めては、上の城へと吐き出しているように見えた。
俺の口は安堵した口調で
「無事減衰してる。マリオンヌシステムは上手く動作中と。さあ、どうするか。ナラン君、正気に戻った?今、あなたのスキルは無償の愛をばら撒く花、以外全て消してるわ」
た、確かに妙な殺意や支配欲は消え失せていますけど……これ、どうするんですか……空中都市が無茶苦茶に……。そう頭の中で思うと、俺の口が
「結局ねえ、シーネちゃんはリースちゃんを殺して身体を奪い、あなたと添い遂げたいわけですよ。今まで私に順従だったんだけど、初めて自己目的を持ったのね」
いやそんなこといきなり言われても困りますって。女神様ならどうにかしてくださいよ。
「……親としては娘の成長は喜ばしいんですけど……うーん……ちょっと反抗期が過ぎるかなあ……とある筋から天使とか使徒は現地で育てろって怒られたし……」
いやそんな悠長なこと言ってる場合じゃないですよ!早くどうにかしないと!そう思った瞬間、俺の意識は落ちた。
……
目を覚ますと、心の本棚の前に倒れていた。
「ナラン君、起きてね」
何処か聞き覚えがある少女の声で目を覚ます。上半身を起こすと、茶色気味の髪を両サイドで縛った少女が微笑んでいた、服装は前にミヤが着ていたセーラー服そっくりだ。
「二つ尾の女神です。ちょっとリブラーの精神世界をお借りしています。ここなら現実の時間が必要ないので」
俺は立ち上がり周囲を見回すと、緑髪の女性、モノラース、ノヴェナが神妙な面持ちで古びた椅子に座っていた。女神と名乗った少女は俺を椅子に座らせると、自らも座り
「私の提案は二つです。ナラン君を大天使にすることと、リブラーのサナーちゃんへの移譲です」
「は?」
思わず俺がそう言ってしまうと、モノラースが皮肉な笑みを浮かべ
「リブラーが育てた器を、自分のものにするつもりだな?」
少女は悪びれず、自然に頷き
「シーネちゃんを惑星管理者から降ろします。代理としてナラン君を管理者にしようと思ってるんだけど」
緑髪の女性がぼやけた顔で
「サナーさんはナランさん程のスキル容量がありません。我々の拡張性が制限される事態になりますが」
少女はリブラーに目を細めると
「別にあなたたちがナラン君に寄生したままでも構わないけれど、ここに私や、他の大天使達が自由に出入りしますよー?つまり、我々の管理下に入ると言うことだけど良いの?」
緑髪の女性は黙り込み、モノラースが笑いをこらえきれず噴き出すと、ノヴェナが手を上げ
「あの……女神様、ナラン君の意見は?」
いきなり全員からジッと見られた俺は、必死に考えた末
「よくわからないですけど!皆が平和になるならそれで良いです!誰も死なないやつで!」
そう言ってしまい、少女は微笑むと
「じゃ、ナラン君ぜんぶ頼んだからねー」
軽く言われた直後に意識が薄れて途切れる。
……
次に気付くと、崩れ果てた城門の前に倒れていた。周囲には人けの無い街が広がっていて誰も居ない。黒雲の下を虹色の膜が覆っているので、ここはジン・スカイストリートの様だとようやく理解すると、近くの排水溝らしき溝からニュルニュルと虹色のゲル状物質が溢れてきて、それは道に流れ出すと次第にまとまっていき、縦に伸びたかと思うと、口と大きな一つ目が現れ、マリオンヌだと分かった直後に
「んあー……久しぶりの外だあ……お、ナラン君、話は女神から聞いたよね?」
こちらを見下ろして言ってきた。
「なんとなくは……」
聞いたけど何が何だか分からなかったけどな!というかみんな何処だよ!?俺が周囲を見回していると
「おっけー。んじゃまあ、暗黒地帯の処理から行こうかあ」
マリオンヌはプルプルと身体を震わせ、そう言ってくる。




