あります!やってやります!
リースが不思議な顔で
「豊穣の大天使ナンヤニア様なら有名ですが……」
ナーニャと名乗った女性は胡座をかいたまま腕を組み、首と身体を傾けながら
「うーむ……そういう名前だったかも……仮名が良いって先生……じゃなくて女神さんが言ってたしい……」
唸りながら浮き上がっていき、ぐるぐると宙を回り始めた。俺が慌てて
「宙を浮いてますけど……」
ナーニャはアッと気付いた顔でそのまま着地すると
「えっと……そのナニニヤナだっけ?」
「ナンヤニア様です」
リースが困りながら答え、ナーニャは真面目な顔で頷き
「うむうむ。私がニャーマニアです」
「ナンヤニア様です」
「ナンヤニア様ですけど……」
リースと俺から同時に突っ込まれるとナーニャは涙目になって
「もういいってえ……ごめんてえ……」
俯くと、突如隣にセイが座った状態で出現した。
セイはナーニャの肩を抱くと俺たちを見て
「……すまん。ナーニャは本物の豊穣の女神ナンヤニアだ。超神聖大天使セイ様が保証する」
ナーニャは項垂れて
「うう……かっこいい仮名になんてしなければ良かった……なんでセイさんは本名なの……」
「後々思い出すのが面倒だろ。賢いセイ様はそういうミスは犯さないんだ」
「早く教えてよお……」
しばらく全員が無言の時間が流れ、何か言おうとしたナーニャを遮ってセイが真顔で
「豊穣の女神ナンヤニアは、現在、女神教の聖書の筆頭使徒として、聖書の主要大天使になっている」
リースが頷いて
「女神様のご指示を受け、不毛の世界に豊かな植物を生やし、この大地を創られた偉大なる大天使様ですよね」
セイはホッとした様子で
「その通りだ。そして元々の筆頭大天使であったセイ様は、伝承が全て外伝になったので世間ではその座から追われたのだ。ナラン、分かるか?」
「事実と教会の教えが違うってことですか?」
セイは満足げに頷くと
「そうだ。ここに居る現在の筆頭使徒、大天使ナンヤニアはな、ナランにある試練を課すために現れた。ナーニャ、喋っていいぞ」
ナーニャは首を傾げ
「試練?んんー?」
セイは座ったまま前のめりに倒れると、凄い早口の小声で
「……どうせなら娘の教育ついでにド変態行事集団みたいになってる教会をどうにかして欲しいって、女神が泣きそうな顔で言ってただろ。それでナランにその宗教改革者としての資格があるかテストしてってさっき土下座されたのをもう忘れたのか?」
ナーニャはポンッと手を打つと頷いて、俺を真面目な顔で見つめながら
「そうだった!ナラン君あのさー」
いきなり話を振られたので少し慌てながら
「はい、なんでしょうか……」
「ちょっと、試験をするねー」
ナーニャはそう言いながら立ち上がった。
次の瞬間には俺達は、狭い教室の席に並んで座っていた。教壇にはセイとナーニャが並んで立っている。俺達の他には誰も居らず、窓の外は青空だ。セイがリースを指差し
「金髪美少女、二つ尾の女神教の二代目教皇ツルネンコが行った良いことと悪いことを女神の視点で一つずつ答えよ」
リースは即座に立ち上がると
「良いことは複雑だった教えを単純化したことです。悪いことは……んー……多分、聖騎士団を作って異教徒と戦ったこと?」
セイは頷くと
「よく勉強しているが半分違う。良いことは世界を平和にしようと本気で願ったことだ。悪いことは世界を平和にしようとして軍隊に頼ったことだな」
リースが考えながら座り込み、今度はナーニャが
「えっとお……ナラン君のリブラーがさー、色々好き勝手やってるけど、それナラン君はどうおもってるのー?」
俺は立ち上がって
「ろくでもねえなって思ってますけど、リブラーが無かったらリースや仲間達と出会えなかったのでそこは感謝してます」
ナーニャは何度も頷くと
「良いですねーバランス感覚っていうの?そういうのあるよねー」
俺が座ると、セイが
「最後の質問だ。女神の困った末の娘が、ろくでもない事を企んでいる。お前らは女神の代理執行者として、末娘の所業を正す覚悟はあるか?」
「それってシーネさん……」
セイとナーニャが同時に頷き、俺をジッとみてくる。横のリースが立ち上がると
「あります!やってやります!」
勢い良く言ってしまった。




