もぐもぐ
虹色の大きなスライムと、大柄な中年女性ヒトにリースは見つめられながら
「あ、あの……ちょっと食べられるとは?」
スライムのマリオンヌは
「大丈夫だよー言ったでしょう?僕はさあ、女神様からスライムにされたって。んでさあ、ここ下水道だよね。今や僕が浄化装置の1つでもあるわけだよ」
中年女性ヒトのビャクダイインジは真顔で頷いて
「別にあんたの身体を食いやしないよ。ただ、染み付いた怨念みたいなのを吸うだけさ」
リースが俺を見てきたので
「……やって貰ったら?」
そう言うとコクンと頷いた。
半時間後、気持ちを整えた一糸まとわぬリースが、大きな虹色のスライムの大口に飲み込まれていった。俺以外の3人は少し離れて後ろを向き情報交換しているが、俺だけはどうしてもリースが見ていて欲しいと言うので、食べられている様子を監視することになった。
マリオンヌはリースを飲み込むと
「んあー……うめえ……すっげえ汚れてる……恐怖……大切な多くを失うことへの恐れと……ふええ……デカい存在に脅されてるねえ……女神に脅されてた僕みたい……もぐもぐ」
などと上を見ながら咀嚼しだした。虹色で半透明な体に呑まれたリースは、トロンとした表情で浮いているのが見える。辛くは無さそうだ。更にマリオンヌは
「これは……嫉妬かあ……愛する存在がモテるんだねえ……妬まれもしてるし……自分が乗り越えられない何かを追い求めようともしてる……歪んでてうめえなあ……もぐもぐ」
浮いているリースは、急にビクッとなると、恍惚の表情で口や下半身から黒い瘴気を吐き出し始める。
心配して様子を見ているとマリオンヌは更に
「……ふおおお……これは、マイナススキルに汚された記憶……うおお……恥ずかしいねえ……泥酔や混濁した意識で……人を無闇に疑って……的外れに信じて……努力は身にならず……ただ考えるのがしんどくなって……その結果、真っ直ぐに生きることにした……そうかあ……後ろ向きな誠実さなんだあ……過去の無数の的外れな言葉……恥ずかしい行動……時々思い出して悶絶してる……かわいいなあ」
マリオンヌの体内に浮かぶリースが痙攣しながら全身から黒い瘴気を噴き出し始めた。だっ、大丈夫かよこれ……と俺がマリオンヌの大きな一つ目を見つめると
「んあー……心配しないで……しかしうめえなあ……次は……おおっ……パートナーへの偏愛……あははは……好きすぎて歪んだ表現を選び始めてる……ウサギ……馬……若いなあ……もう良いかあ……もぐもぐ」
リースはマリオンヌのゲル状の身体の中でグルグルと回り始め、噴き出した瘴気は消えていき、そしてスライムの身体の後方の下から勢い良く「ぶっ」と嫌な音をさせて噴き出された。
俺は用意していた数枚のタオルと服を持ち、慌ててゲル状の虹色液体塗れで倒れているリースに駆け寄ると、両目を開け頬を染め
「……き、気持ち良かったのお」
俺に抱きついてきた。
「そ、そうなんだ……無事で良かった」
とりあえず血色は良く、傷はなさそうなのでタオルを渡して、俺も本人と共にリースの身体を拭いていると、背後からマリオンヌが
「君さあ、この子、表向き頑張ってるだけで、中身はすっごい引っ込み思案で、臆病だよお?世間知らずなのも自覚してるし、君たちに付いていこうと必死だよ。もうちょっと、リードしてあげてもいいんじゃないのお?」
リースは恥ずかしそうに俯いて、俺は慌てて振り向き
「さ、参考にします……すいません……」
そう言ってリースに下着や服を渡す。正直言って、衝撃が大きすぎて、何なのかもはや分からない。暗黒地帯に連れ込まれて、ドラゴンを一撃で倒し、虹色の膜に包まれた空中都市の透明な下水道でリースが謎のスライムで呑み込まれて瘴気を噴き出し気持ち良かったって……。
すっかり元気になったリースが服を着終えると、アンジェラ達が近づいて来て
「行きましょうか。良い?」
尋ねられたマリオンヌは大きな一つ目と口でニカッと笑い
「久しぶりの若さを味わって大満足さ」
そう言って、ビャクダイインジから
「スライムのくせにとんでもないド変態だねえ」
呆れてため息を吐かれていた。




