ニャッ
古い装丁の本のタイトルには「竜殺し図鑑」と書かれていた。俺とモノラースと共にノヴェナは椅子に座るとテーブルに本を広げ
「ここ。このドルーポイのヴァンパイア、レオナルドって章があるでしょう?」
細かい文字だらけの辞書みたいな本だが、確かにあった。頷くとモノラースが
「この本は、現実の屋敷をリブラーが、スキャンしたときに取り込まれたものだ。つまり、現実の本と同じ内容だな」
ノヴェナが
「レオナルドって巨竜を殺したその後、行方不明になったんだけど、膨大な魔力を持っていたらしくて」
モノラースが補足するように
「元村長の異常な魔力の量は怪しい……なのでレオナルドではないかとノヴェナは言っているわけだ」
俺が今さら思い出して
「元村長はまだ王都に居たっけ?」
モノラースは真面目な顔で
「俺が知る限りでは王都に居るはずだ」
少し考えたが、元村長が吸血鬼であったとしても血を吸っている様子は一切ないし、精々いい加減な占いの被害者が少し増える程度なので
「分かった。覚えておく」
とだけ答えた。直後に意識が遠のいていく。
……
起きると、リースは居なかった。一階へと降りると書き置きがあり
「ナランと、どれだけの距離離れられるか、フォッカーさん達と計測してきます」
と書かれていた。確かに試したこと無かったな……心配だけど、俺が動くと台無しになることは確かなので、家に居ることにする。
昼過ぎまでダラダラと本を読んだり、伸びてきた庭の草むしりなどをしていると、扉が叩かれてノヴェナが尋ねて来た。その格好を見て俺は唖然とする。ネコ耳バンドを被り、面積の小さな緑ビキニの下からはネコ尻尾が伸びている。ノヴェナは斜め横を向き
「ニャッ」
上目遣いで、更に両手の指を曲げて、猫ポーズをしてきた。
「どうしたんですか……」
「いや……真の上級者向けの格好をしてみたくて……モノちゃんと話あったの。ダメ?」
「あの……」
戸惑っていると
「ノヴェナさん!ナランに何してるんですか!」
リースの怒った声がする。
すぐに散歩用の軽装のフォッカーとロマンシア、そしてリースが家の前まで駆けて来て、ノヴェナは嬉しそうに軽くガッツポーズをすると
「見て!キャットスタイル!ニャッ!」
3人に向けて猫ポーズを取ってしまう。フォッカーが少し仰け反りながら
「……お、おおおお……」
感動した顔をしてしまい、ロマンシアから
「見たらダメだって!今度私がしてあげるから!」
ノヴェナは更に嬉しそうになり
「ロマンシアさん!ちょっと私!大切なお話があります!」
「えっ……」
「ノヴェナさん!俺もお話が!行こうロマンシア!」
「フォッカー!ちょっと!なに……」
フォッカーとノヴェナに両肩を組まれてロマンシアは、双子姉妹の自宅に連れ込まれていった。
「……」
呆然と眺めているとリースが少し怒った顔で
「何もなかったよね?」
「……う、うん。困ってるんだよな」
「詳しく聞かせて」
リースに背中を押されて家に連れ込まれる。
ノヴェナの数々の言動や、際どい服装、恐らくはボニアスから余計な知識を吹き込まれているであろうことまで話すとリースは
「……分かった。来て」
俯き加減に、エプロンを持ち、2階へと上がっていく。これは……流石に怒られるのではないか……初の大喧嘩か……!?ビクビクしながら寝室の扉を開けると、クローゼットの扉が開けられていて、床に色々と並べられていた。
兎耳バンド、馬の耳バンド、これ……兎の尻尾が付いたベルト……この馬の尻尾は根元に連結された丸い球体が付いている……これって……しゃがんで確認していると、クローゼットの陰からエプロン一枚だけを着たリースが俯き気味に出てきた。そして顔を真っ赤にしながら
「あの……あのね?笑わないで聞いてね?」
「も、勿論笑ったりなんかしないよ」
リースとベッドに座る。リースはチラチラと俺の反応を見ながら
「あのね……夢でね……よく思い出すの。アンリミテッドボードで……ナランに抱き上げられたこと……レースの時、ナランに見られた瞬間……あの……それで……えっと」
分かった。もう充分、分かった。ずっと言い出せずに悶々としていた様だ。
「リース、早く言ってくれたら良かったのに。喜んで付き合うよ」
「……ナラン……大好き」
リースは俺に抱きついてくる。
それから夜まで2人で楽しんだ。ずっと1人で抱えていたリースの望みを2人で全て叶えた。途中で食事や水分補給をする度にリースはよく喋った、自分がおかしいと思っていたけど、俺が全て受け入れてくれて本当に嬉しいと。深夜に2人で風呂に入って出ると、もう疲れ果てていて、何とかシーツを新しいものに変えると2人で並んで倒れ込んで、目を閉じると瞬時に眠り込んでいた。




