何もなくて良いよね
いつの間にか、住宅街の中心部に整備された噴水横のベンチに座る。殆ど廃墟のままだが、見渡すとうちの家や、双子姉妹の家、アン王女の屋敷、少し離れてうちの部隊の面々の家も見える。リースはポツリと
「幸せだね」
と呟いて、俺は深く頷いた。アン王女の事を気にしなければ、今は困り事は何もない。ヘグムマレーが暗黒地帯東部の駐屯を完了させれば、後はリースと結婚するだけだ。
そろそろお昼ご飯を食べようと、2人で自宅前へと帰っていると、ちょうどフォッカーとエロマンが待っていた。家に招き入れて一緒に昼食を食べつつ、情報交換をする。
フォッカー達はどうやら、サーガ共和国を2人で周っていたらしい。共和国西部にギュスイルという王族が反乱を起こしていた地域があるそうだが、その仲裁をしたりして中身の濃い冒険だったとのことだ。エロマンは俺に真顔で
「その功により、サシュー国王からロマンシア、という新たな名をいただきました。今後はロマンシア・サーガとお呼びください」
フォッカーが真顔で
「元の名は俺しか呼んだらダメだそうです」
そう言ったので尊重することにした。
リブラーの事は伏せつつ、王都での話などをすると、2人ともポカンとしてフォッカーが
「すげーことになってますね」
リースが苦笑いしながら
「結婚したいだけなんだけどね」
エロマン改めロマンシアが
「フォッカーさん、私達も結婚しよう!」
本気の目でフォッカーを見つめるが、彼は目をそらしながら
「い、いや……まだまだ遊びたいお年頃なんですよ……」
ボソボソと誤魔化していた。
フォッカー達が帰ったので、また家でダラダラすることにした。適当に本を読んで、昼寝していると夜になって、夕食食べて、風呂には入らずに寝室で、リースとじゃれ合いながらお互いの身体を濡れタオルで拭いていく。ベッドに2人で倒れ込んで、天井を見上げながら
「幸せだな」
「そうね……」
「しばらく、平和に過ごして良いかな」
「……良いと思う。何もなくて良いよね」
2人で抱き合って眠る。
……
目の前に心の本棚があった。モノラースから手を伸ばされて立ち上がる。
「どうした?」
「いや、ノヴェナが、元村長について話があると言っている。俺も調べたが……」
腕を組んで黙ってしまった。モノラースと共に、階段を上がり、エシュリキアコーライだらけの通路を通り、二階の書斎へと行くと、真面目な顔でノヴェナが書物を読んでいた。エプロン一枚しか着ていない。俺達に気付くと
「どう?」
グルっと一周してくる。後ろとかガラ空きだなー……と唖然としていると
「ふむふむ。ボニアスさんから月末迄に、このハダエプスタイルのレポート提出を求められてねえ……ナラン君は上級者だから、当然、反応薄いよね。モノちゃんはどう?」
モノラースは真剣な表情で腕を組み
「……機能性は問題ない。つまり料理の時に汚れたり、油が飛ぶ前面は守りきれている。掃除でも同様だろう。エロスという意味では、厚い布一枚が前面だけを覆っている……というのが人間たちには良いのではないか?後ろを向けば無防備であるしな」
真面目に答えてしまい、ノヴェナは真剣な表情でメモし始めた。
「あの……元村長については……」
ノヴェナは気付いた様子で
「これこれ、見てみて」
書斎から一冊の本を取り出してきた。




