集落
地響きをさせながら先頭を行くドラゴンのお陰かその後は全く戦闘が無く、山頂に明かりのある薄暗い山々の麓まで辿り着いた。山道は体長三十メートルの漆黒のドラゴンが、羽根を折りたたんでも登っていける幅がなかったので、ドラゴンの火炎の息で左右の黒い樹木を焼き払いながら、少しずつ登っていくことになった。山頂の集落にはローウェル、そしてアンジェラと魅了が解けたヒト達が先行して、俺達の集団について知らせに行った。
最後尾で、先頭のドラゴンの火炎ブレスの明るさをリースと眺める。炎が瞬き辺りを照らす度、その後ろの130人以上の亡者達とスケルトンが
「おおー!」
「凄い!一気に燃えた!」
「ドラゴンさん!素敵!」
などと歓声を上げていて、ほとんど祭り状態だ。サナーはドラゴンの背中で立ち、前方と後方の様子を見張ってくれている。正直、もはや、完全に何一つ、緊張感がないが、暗黒地帯に入って半日ほど経つので、腹が減ってきたのと、疲れも出てきた。集落まで行けば休めるらしいので頑張って登っていると、中腹辺りでドラゴンが止まり、こちらへとローウェルが走って来る。
「2人の出番だぞ。ドラゴンを集落に入れる前にマシズ集落の長が、リース姫と婚約者様との会見を望んでいる」
俺達は即座に頷いた。
ローウェルと共に、明かりのある集落へと山道を進んでいくと、古びたロープのフードを被った二メートル程の背丈がある痩せた老人が、アンジェラと共に入口で待っていた。ヒト族なのは遠くからでも分かる雰囲気だ。足早に近寄ると老人は皺と白髭だらけの灰色の顔で微笑み
「リース・ウイズ姫、ナラン・リルガルム殿、ようこそマシズ集落へ」
ローウェルは頷くと
「じゃあ、シドミドリ村長、俺はドラゴンと亡者達を見てますな」
そう言って風の様に山道を戻っていく。
集落内は、廃墟群を利用したらしき建物が立ち並び、上手く光石や輝石を配置しているので、昼間のように明るかった。角を外した悪魔達や、顔色の悪い亡者やスケルトン達がかなりの数、平和に行き交っている。シドミドリ村長と呼ばれたヒトの老人は、俺達を下半分石造り、上半分木造の二階建て屋敷へと案内していく。
中から扉が開けられると、何とメイド服姿のシーネがそこに居た。長い銀髪を左右で結んでツインテールにしている。
「何でここに……」
シーネはニッコリと笑いながら
「ふふー。どうしてでしょうかー」
ツインテールを振りながらクルクルと回って踊りながら案内を始めた。
応接間へと通されるとシーネは出ていき、扉が閉まった。テーブルを囲んで俺達は椅子へ座る。老人とアンジェラがテーブルの向こうへと座り、俺達にアンジェラが
「一通り、外の状況については話しておいたわ。村長が聞きたいのは、亡者達の扱いね、恐らく解放後に人間に戻るのではないかと予測されているの」
リースが素早く
「我が婚約者、ナランの親の領地であるリルガルム地方で受け入れ可能です。他にも有為な者達は我が父ヘグムマレーが放っては置かないでしょう」
シドミドリは、重々しく頷くと
「……ありがとう。その言葉で充分です。ではシーネさん、ドラゴンを誘導してください」
扉の外からシーネの声が
「いいですよぉ」
と答え、気配が消える。更に色々と説明と話し合いがあるのかと思ったが、アンジェラが、俺達に二階角部屋の宿泊室で休むようにと言うと2人とも足早に出て行った。リースと顔を見合わせ、素直に二階へと向かうことにする。
二階角部屋の宿泊室の扉を開けると、ローウェルが窓を開け、外に向け煙草をふかしていて、既に2つの大荷物も運び込まれていた。ローウェルはこちらを振り返り
「お疲れ、外の時間で明日の朝まで休憩だ。ドラゴンと亡者達は、一応、ここの集落に置いていくつもりだ」
「分かった。大変だったよな……」
リースが
「サナーちゃん達はシーネさんが?」
ローウェルは頷くと、外を向き煙草の煙を吐き出し
「社長が元々この地域の調査の為に潜入させてたんだよ。あいつなら出入りするのに適任だからな。村長ともすんなり話がついたのはそういうことだ」
「出入り?」
簡単には出入り出来ないはずだが、俺の言葉にローウェルは苦笑いして
「何れ分かる」
煙草を革ケースに入れて消すと、窓から外へと出て行った。とにかく疲れたので荷物か
ら、干し肉や乾パン、お茶などを出して2人で食べることにする。




