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第8話 愛の奪還作戦、始動  sideアルベルト with エヴァンズ侯爵家応援団

屋敷へ戻った時には、空気が変わっていた。


 玄関で出迎えた侍女が、アルベルトの顔を見た瞬間、妙に力強く頷いた。


「お帰りなさいませ、アルベルト様」


「ああ」


「ご無事のご帰還、何よりでございます」


「……本屋へ行っていただけだ」


「存じております」


 なぜか、戦場から帰還した者へかける声だった。


 その後も、会う者会う者が同じような目をしていた。


「アルベルト様、応援しております」


「私どもにお任せくださいませ」


「どうか、ご武運を!」


 屋敷の廊下で聞く言葉ではなかった。


 ナタリアは不思議そうに首を傾げる。


「皆様、今日は少し熱心ですね」


「そうかもしれないな」


 アルベルトは否定しなかった。


 たぶん違う。


 だが、ナタリアが気づかないなら、それでいい。


 アルベルトには、何となく分かっていた。


 昨日の会話だ。


 愛がなくても、尊敬し合える夫婦になりましょう。


 ナタリアのあの言葉を、誰かが聞いていたのだ。


 そして、屋敷中に広まった。


 このままでは、お嬢様が本気で愛のない夫婦を始めてしまう。


 そう判断されたのだろう。


 一息ついたら一緒にお茶にしましょうとナタリアに誘われたあと、彼女は家令に呼ばれ、アルベルトは先に小広間へ向かうことになった。


 廊下を歩いていると、ひとりの使用人が深く一礼した。


「アルベルト様、ご武運を」


「これから一緒に茶を飲むだけだ」


「そこはもう戦場でございます」


「……そうか」


 使用人は胸に手を当てた。


「ご健闘をお祈りしております」


 目がきりっとしていた。


 どうやら、ただの茶の時間ではないらしい。


 厨房の前では、料理人が真顔で親指を立てた。


「お茶菓子は、お嬢様のお好きな焼き菓子を多めにご用意しております」


「助かる」


「ご武運を」


「……ああ」


 料理人の目も決まっていた。


 庭師は、庭の花の手入れをしていた手を止め、深く一礼した。


「小広間には、お嬢様のお好きな花を飾ってございます」


「それはありがたい」


「ご武運を」


 やはり目がきりっとしていた。


 屋敷全体が、一つの方向を向いていた。


 ナタリアお嬢様を、愛のない夫婦へ行かせるな。


 たぶん、そういうことなのだろう。


 そして、その後の茶の時間は、驚くほど穏やかに終わった。


 アルベルトは余計なことを言わずに済み、ナタリアは満足そうに茶を飲んだ。

 使用人たちは、遠くから勝利を見届けた兵のような顔をしていた。


    *


 その日の夜。


 ナタリアが侍女頭と翌日の進行確認をしている間、アルベルトは一人で廊下を歩いていた。


 客間へ戻る途中だった。


 角を曲がったところで、前方の使用人がアルベルトの顔を見た瞬間、びくりと肩を跳ねさせる。


 手にしていた紙束が、ぱさりと床へ落ちた。


「あ……」


 使用人が慌てて拾おうとした。


 だが、そのうち一枚だけがアルベルトの足元まで滑ってくる。


 アルベルトは、反射的にそれを拾った。


 紙の上部には、太い字でこう書かれていた。


 ――愛の奪還作戦 第一案。


 その下には、なぜか相関図まで描かれている。


 アルベルト様

 →→→→→♡♡♡→→→→→

 お嬢様


 お嬢様

 → ? 脈あり? 愛なし夫婦?

 → アルベルト様


 旦那様

 →→→→→殺気/羽虫判定/処理保留→→→→→

 アルベルト様


 最後の線だけ、やけに太い。

 しかも矢印の途中には、やけに禍々しい骸骨の絵まで描かれていた。


 アルベルトは無言で紙を見下ろした。


「……これは」


 使用人は背筋を伸ばした。


「失礼いたしました」


「相関図か」


「状況把握のためでございます」


「私からナタリア嬢への矢印が多い」


「客観的事実かと」


 客観的事実。


 どうやら、隠せているつもりだったのは自分だけだったらしい。


「ナタリア嬢の脈あり?とは」


「希望的観測でございます」


「希望か」


「はい。アルベルト様の炎上発言がなければ、もう少し太く引けたかと」


「…………」


 ぐさっ。


 痛い。


 希望の線は、ひどく細い。

 その細さに文句を言える立場ではなかった。


「ただし、愛なし夫婦案が出ておりますので、早急な対応が必要かと」


 ざくっ。


 今度は別のところに刺さった。


 アルベルトは、しばらく黙った。


「侯爵様の線が太い」


「安全上、最重要項目です」


「処理保留とは」


「まだ羽虫確定ではない、という意味でございます」


「……そうか」


 前向きに受け取っていいのか、判断に迷う言葉だった。


「ぜひ、ご生還くださいませ」


 使用人の瞳には、妙な覚悟が宿っている。


 紙を返すと、使用人は大事そうに胸元へ抱えた。


「失礼いたしました。作戦会議へ戻ります」


「作戦会議」


「はい」


「……よろしく頼む」


「命に代えましても」


「命は大切にしてほしい」


「承知いたしました」


 使用人は深く一礼し、廊下の向こうへ足早に去っていった。


 その時だった。


「アルベルト様」


 振り向くと、家令が静かに一礼していた。


「使用人一同、応援しております」


「……作戦書のことか」


「はい。少々、目を通しております」


「少々」


「実行可能な形に整え、役割分担を明確にした程度でございます」


「…………」


 完全に参加している。


「お嬢様には、幸せになっていただきたいのです」


 その一言で十分だった。


「……感謝する」


「恐れ入ります。ですが、旦那様のお怒りは別問題でございます」


「できれば、そちらで鎮めておいてもらえないものか」


「火山に、噴火は明後日にしてほしいとお願いするようなものでございます」


「……そうだったな」


「ご武運を」


 家令はもう一度、深く頭を下げた。


 屋敷中が、どうやら本気で自分を応援している。


 最初にこの屋敷へ来た時とは、まるで違っていた。


 あの時の彼は、ナタリアを傷つけたかもしれない男だった。


 羽虫か若者か、判定待ちの存在だった。


 今も、まだ危うい。


 まだ許されたわけではない。


 それでも、少なくとも屋敷の者たちは、自分がナタリアを大切にしたいと思っていることを見てくれている。


 その目が、ありがたかった。


 同時に、背筋が伸びた。


 あの人たちは、ナタリアが愛されない未来を選ばなくていいように、本気で動いている。


 ならば、自分も本気で応えなければならない。


 アルベルトは、低く息を吐いた。


「……愛の奪還作戦、か」


 名前はひどい。


 だが、願いは悪くなかった。


    *


 翌日から、屋敷の協力はさらに露骨になった。


 まず、護衛たちが協力的だった。


 協力的すぎた。


「本日の散策ですが、裏庭の東屋がおすすめです」


「なぜだ」


「人払いがしやすく、なおかつ健全です」


「健全」


「はい。お嬢様の名誉と、アルベルト様の理性、双方を守れます」


「……理性」


「はい」


 アルベルトは黙った。


 否定できないのが、つらいところだった。


 別の護衛が、きわめて真面目に進み出た。


 その手には、白い布が捧げ持たれている。


「こちらを」


「何だ」


「万一、アルベルト様の表情が強くなりすぎた場合に備え、あつらえた白布でございます」


「本当に用意したのか」


「はい。肌触りは滑らかで、長時間顔にかけても蒸れにくいものを選びました」


 アルベルトは布を見る。


「上等な絹だな」


「侯爵家の機能麻痺を防ぐためでございます」


「機能麻痺」


「はい。アルベルト様の表情が強くなりすぎますと、使用人の手元や足元に支障が出ますので」


「……それはすまない」


「お気遣い痛み入ります」


 護衛は、真顔で礼をした。


 どうやら本気で礼を言われているらしい。


 護衛は、何事もなかったように続ける。


「それから、東屋の椅子も替えておきました」


「椅子?」


「はい。万一、アルベルト様が再びお立ちになれなくなった場合に備えまして」


「……それも共有されているのか」


「はい。アルベルト様のこか……沽券に関わりますので」


 こか。


 ……ん?


 今、何か聞こえた気がする。


 いや。


 聞き間違いであってほしい。


 アルベルトは片手で額を押さえた。


 知られている。


 かなり知られている。


 これは恥ずかしい。


「王都でも評判の椅子職人に依頼した、たいへん座り心地のよい椅子でございます。長時間の座位にも耐えられます」


「……助かる」


「お役に立てれば幸いです」


 護衛は、任務を果たした者の顔をしていた。


 礼を言うべきなのか、恥じるべきなのか。


 少なくとも、屋敷中に自分の理性が心配されていることだけは分かった。


    *


 そして、侍女頭だった。


「アルベルト様」


 侍女頭が、きわめて真面目な顔で一冊の手帳を差し出した。


「これは?」


「お嬢様機密事項でございます」


「……よいのか」


「はい。私どもは、すでに片棒を担いでおりますので」


「片棒」


「一蓮托生でございます」


「…………」


 片棒に一蓮托生。


 犯罪のそれではないだろうか。


「国家機密に準ずるものとしてお扱いください」


 手帳を開くと、細かな字が数頁にわたってびっしり並んでいた。


 好きな茶葉。

 好きな菓子。

 好きな本の傾向。

 誕生日。

 誕生石。

 好きな色。

 苦手な香り。

 湯浴みに使う香草の好み。

 よく選ぶ便箋の色。

 疲れている時に選ぶ席。

 機嫌が悪い時に黙って見つめる窓。

 嬉しい時に少しだけ早くなる歩調。

 褒められると視線をそらす言葉。

 気を許した相手にだけ見せる沈黙。

 衣装係確認済みの採寸表。

 靴の寸法。

 指輪の寸法。

 好みの男性像。(推定)

 殿方にされると喜ぶこと。(推定)


 アルベルトは、そこで一度、静かに手帳を閉じた。


「指輪の寸法まで……」


「はい」


「これは……国家機密だな」


「はい」


 アルベルトはしばらく手帳を見下ろした。


 だが、まだ頁が残っている。


 アルベルトは、手帳を開いて続きを見た。


 次の頁には、こう書かれていた。


 謝罪会見が失敗し、本件への関与が旦那様に発覚した場合の退避経路。

 退避先候補一覧。

 非常時持ち出し袋の保管場所。

 王都脱出経路。(参考)

 王都地下水路地図。(最新版)


「……本件」


「謝罪会見対策、ならびに愛の奪還作戦への関与でございます。アルベルト様も円滑な退避に備えて、ご確認しておいてくださいませ」


「……私も対象か」


「アルベルト様は主犯でございます」


「…………」


 やっぱり犯罪のそれだった。


 さらに頁をめくる。


 謝罪会見失敗時の責任者一覧。


 第一責任者 侍女頭。

 第二責任者 家令。

 第三責任者 護衛長。

 最終責任者 アルベルト様。


「最終責任者」


「はい」


「なぜ私が最後なんだ」


「最後まで旦那様を引きつけていただく必要がございますので」


「…………」


 一蓮托生とは、思っていたより幅のある言葉らしい。


 アルベルトは、さらに次の頁をめくった。


 そこには、


 旦那様による処理が目前まで迫った場合の最終手段。


 アルベルト様を献上した隙に、全員退避。

 なお、アルベルト様は腕が立つため、網での捕獲を推奨。


 と書かれていた。


「献上?」


「あ」


 びりっ。


 侍女頭は、声を上げた次の瞬間にはその頁を破り取っていた。


「今そこに、献上と」


「なんでもありません」


「網での捕獲とも」


「なんでもありません」


「…………」


 アルベルトは、破り取られた頁の残骸を見た。


 一蓮托生とは、やはり思っていたより幅のある言葉らしい。


「……国家機密以上のものだったな」


「はい」


「悪用はしない」


「存じております」


「取り扱いには注意する」


「くれぐれも」


「……網では捕まえないでほしい」


 侍女頭に無視された。


 要望として受理されなかったらしい。


 アルベルトはそれ以上、聞かないことにした。


 手帳を胸元へしまう。


 とんでもないものを託された気がした。


    *


 ナタリアだけが、気づいていなかった。


「最近、皆様とても張り切っていますね」


「そうだな」


「やはり、謝罪会見前で緊張感が高まっているのでしょうか」


「そうかもしれないな」


 アルベルトは、今度も否定しなかった。


「では、準備は順調ということですね」


「順調ではある」


「それは良いことです」


 ナタリアは満足そうに頷いた。


「お詫びとは、関係者全員で作るものですから」


 違う。


 今、関係者全員で作られているのは、おそらく謝罪会見だけではない。


 アルベルトはそう思ったが、言わなかった。


    *


 謝罪会見の前日。


 準備は、いよいよ最終確認へ入っていた。


 大広間の席順。

 花の色。

 料理の量。

 帰りに渡す菓子。

 アルベルトの四十五度。

 禁句の確認。

 表情筋の安全管理。


 どれも、ほぼ整っている。


 ナタリアは進行表を閉じ、静かに言った。


「明日ですね」


「ああ」


「大丈夫です。アルベルト様なら、きっと大丈夫です」


 アルベルトは、彼女を見た。


「なぜ、そう思う」


「逃げなかったからです」


「…………」


「最初の言葉は、たしかに良くありませんでした。けれど、アルベルト様はそのあと、逃げずに謝罪の場へ立とうとしておられます」


 ナタリアは少しだけ目を伏せた。


「それは、とても大切なことです」


 アルベルトは、しばらく彼女を見ていた。


「君は、なぜそこまで謝ることにこだわる」


 ナタリアはすぐには答えなかった。


 進行表の端を、指先でそっと押さえる。


「……昔、謝れなかったことがあるからです」


 そう言ってから、ナタリアはほんの少しだけ息を吸った。


「八歳の頃でした」


 ナタリアは静かに話し始めた。


「母は身体の弱い人でした。ベッドで過ごすことがほとんどで。けれどある日、庭より少しだけ遠くへ出て、外でお茶をしましょうと約束してくれたのです」


 久しぶりの約束だった。


 ナタリアは朝から籠の中を何度も確かめた。


 焼き菓子は足りるか。

 敷物はどれにするか。

 母が寒くないよう、膝掛けも入れた方がいいか。


 それだけで胸が弾んだ。


「でも、その日の朝、母の具合が悪くなりました」


 行けなくなった。


 仕方のないことだった。


 今なら分かる。


 けれど、八歳のナタリアには、ただ悲しかった。


「私は、ひどいことを言いました。楽しみにしていたのに、と。お母様は私のことなんて好きではないのだ、と」


 ナタリアの声は静かだった。


「そして、嫌い、と言いました」


 アルベルトは何も言えなかった。


「言いすぎたことは分かっていました。言い方も、ひどかったと思います」


 ナタリアは続けた。


「謝りたかったのです。でも、どう謝ればいいのか分かりませんでした。嫌いと言ってしまったあとで、本当は嫌いではありませんと、どう言えばいいのか分からなかった」


「…………」


「母の方から呼んでくれれば、行けたかもしれません。何かきっかけがあれば、泣いて謝れたかもしれません。でも、自分から扉を叩く勇気がありませんでした」


 ナタリアはそこで一度、言葉を切った。


「翌日、母は亡くなりました」


 静かな一言だった。


「もう、謝れませんでした」


 棺の前で、ナタリアは泣き続けた。


 ごめんなさい。

 嫌いなんて言ってごめんなさい。

 ほんとうは大好きなの。


 何度も、何度も。


 けれど、棺の中の母はもう返事をしなかった。


 その日、ナタリアは泣き尽くした。


 泣き声が枯れ、涙も出なくなった頃から、彼女はあまり感情を表に出さなくなった。


 しばらくして、熱を出して寝込んだ夜に、ナタリアは前世のことを思い出した。


 謝罪会見。

 危機管理。

 炎上対応。


 言葉を間違えた時、どう戻るか。

 関係を壊した時、どう修復するか。


 その知識が頭に流れ込んできた時、ナタリアは最初にこう思った。


 あの時の私が、これを知っていたら。


 嫌いと言ってしまったあとでも。

 ほんとうは嫌いではないと伝える方法を知っていれば。

 言いすぎましたと頭を下げる方法を知っていれば。


 間に合ったかもしれない。


 だからナタリアは、謝罪にこだわる。


 失敗した人間を責め立てたいのではない。

 正しい言葉で相手を追い詰めたいのでもない。


 間違えたあと、戻る道があるのだと知ってほしいだけだ。


「だから私は、謝れるうちに謝った方がいいと思っています」


 ナタリアはアルベルトを見た。


「間違えたと思ったら、できるだけ早く。相手がまだ聞いてくれるうちに。言葉が届くうちに」


「…………」


「アルベルト様には、後悔してほしくありません」


 その言葉は静かだった。


 けれど、アルベルトの胸には深く残った。


 どの口で言うのか。


 そう思っていた。


 あなたを愛することはできない。


 そう言った男が、今さら違うなどと。


 愛してしまった、などと。


 どの口が。


 けれど、ナタリアは言った。


 間違えたなら、伝えた方がいいと。

 後悔してほしくないと。

 言葉が届くうちに、戻った方がいいと。


 黙っていることが誠実なのではない。


 間違えた言葉を、そのままにしないこと。


 それが、ナタリアの言う誠実なのだ。


「……ナタリア」


「はい」


「明日、私は謝る」


「はい」


「それから、君に伝えたいことがある」


 ナタリアは少し目を瞬いた。


「伝えたいこと、ですか?」


「ああ」


「念のため、事前に内容を確認してもよろしいでしょうか」


「明日、謝罪の後に伝えたい」


「しかし、想定外発言は会見事故の原因になります」


「炎上発言はしない」


「その判断も、事前確認があってこそです」


「それでも、明日言う」


「……危険ですね」


「分かっている」


「かなり危険です」


「それでもだ」


「どうしても、ですか」


「頼む」


 ナタリアは真剣に考え込んだ。


「では、少なくとも分類だけ教えてください。謝罪、補足説明、撤回、再発防止策、今後の方針、どれに該当しますか」


「撤回と、今後の方針だ」


「承知しました」


 ナタリアは進行表の余白に、さらさらと書き込んだ。


 ――任意発言 三分以内。

 ――炎上判定時、即時中止。

 ――必要に応じて白布使用。


「そこまでおっしゃるなら、分かりました。ただし、三分を過ぎたら止めます」


「三分か」


「はい。また、制限時間内であっても、炎上発言とみなした場合は即中止いたします」


「必要であれば、布も使います」


「布」


「安全対策です」


「……分かった」


 許されるかは分からない。

 ナタリアがどう受け取るかも分からない。


 それでも、伝える。


 相手がまだ目の前にいるうちに。


 言葉が、届くうちに。


 明日。


 自分は謝る。


 そして、あの言葉を撤回する。

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