第190話 地道な調査
「チケン、ポータル問題とは?」
「前聞いたところによると、なんか宇宙の色んなところに扉があって、宇宙のどこかにつながってる。それが地獄みたいな環境だったり、俺のいた星だったり、何処かに出られる扉をポータルと言う。ポータル一個につき一箇所にしか移動できないんだが、それが数十億単位ある場所が発見されたらしい。その問題のことじゃないかな」
それを聞くと二人は眉間にシワを寄せ考え始めた。
「それで私やグリセルダのいる場所にやってきたってことかしら」
「……多分な」
「それは管理されていないのか?」
「ポータルを管理してるのがヴェレルのいる内務庁で、ポータルの外を管理してるのがエト姫と愉快な仲間達だよ、微妙に職域が被ってて仲が悪いらしい」
しかし、それだけではまだ何も理解できていないに等しい。俺は続きを再生させることにした。
『ヴェレル氏は篤志家としても知られており、慈善事業にも莫大な投資を行いテオネリア国王陛下から三度の叙勲を受けています』
「……つまり見栄っ張り?」
「本当は心が優しい可能性は……」
「無かろう。心優しきものが見知らぬ女になりすますなどありえぬだろう」
全くもってその通りだが、万が一の可能性が……ないか……。
もっと邪悪な可能性は考えられるが……。
「外面を取り繕うための銭配りでしょう。うちの国でもあったわよ、庶民に粥を振る舞ったり寺や施薬院を建てたりして自分には徳があるように振る舞う仕草が。それで救われてる民もいたけれど、そんな振る舞い粥で腹を満たさせる前に、飢えないようにするのが私達の仕事なのにね」
「いいことを言うではないか、おタヒ」
「でも粥を振る舞うほうが人気が出るのよね、納得行かないわ……」
おタヒが兄に妬まれる理由はわかってきたな。こいつ多少の性格の悪さを抜きにしても統治者として性格が向いている気がする。若いなりに様々なことを学び、帝王学を知ったうえで政治をしようとしている。
しかし、それは兄である皇太子には非常に都合がよろしくない。あの皇太子は学ぶことが嫌いだ。
雅と優雅さを愛し、建築を愛し、一方的な性愛を好んだ。国は勝手に下々がどうにかすべきものであり、自分がどうこうするなんて下賤だとすら思っているのだ。
そんな男が女に、しかも年端もいかぬ妹に論破されるなんて封建時代の男には耐え難い屈辱だろう。本当におタヒは産まれる国を間違っている。
せめて、テオネリアや地球の平和な国に生まれればどれだけよかったのだろうか……。
顔に出さないように気をつけつつ、続きを再生する。
『私人としてのヴェレル氏は大企業の社長としても知られており、千年続く製薬会社ヴェレルメディシン合同会社や、ヴェレル記念生命工学研究所、テオネリア化成工業、サラディエル副運用体製造会社など多数の有名企業の上層部、大株主に名前を連ねています』
「副運用体ってあれか、自分の会社に好き勝手作らせてんのか……そりゃ自由に作れるわ」
「それならあの無体も納得だな」
「本当に大店なの、そこ?」
一応検索してみると、サラディエル副運用体製造会社は業界シェア第三位のようだった。業界シェアこそ第三位であるものの、一体あたりのコストが他者より高く、量より質で売っているらしい。
カスタマイズ性が高く、法律で許されるギリギリまで『本体よりも僅かに高性能・高耐久』で売っている。
副運用体は千年弱しか経っていない比較的新しい技術で、出来たばかりの頃はトラブルが多数発生したため現在は厳しく規制されているという。
出来たばかりの頃は案の定なりすましとか、自分を女体化させて自分と自分で結婚して自分の子を産んだとか、だいぶんカオスな事態が起きていたらしい……。
現在では取得に国の審査が必要であり、取得免許は成人に限定され、『完全に自分と同一』の副運用体のみ製造と所持を許可される。
ただし例外で全く自分と違うボディーの制作が許可される場合もある。
星間司法庁や司法府、警察庁などの法務関連部署に勤めていて、任務でそれを必要とする者だ。そして、ヴェレルはそのポストも歴任している……。
「うーん、しかしそんなに数百年も同じ部署にいるのはこの国では普通なのか?」
グリセルダの疑問も最もだった。
追加で検索すると、五百年は流石に過去最長だが、数代前には三百年、四百六十年などの在任記録が残っている。平均寿命が千歳を超える国だとまあなくはないのか……。
ちなみに、定年は七百年。その後は健康状態や本人の希望によって延長されることがあるらしい。
ここまではある程度は予測できていたことだったが、俺達が知りたいのはもうちょっとプライベートの出来事なんだよな。俺は追加で音声を入力する。
「ええと、ヴェレル氏の勉強した学問や、使えるスキル、得意なこと、好きな食べ物、苦手なことみたいな一般的なプロフィールってお願いできるかな?」
『セヴェロ・ヴェレル。身長182センチ、体重90キロ。趣味は読書とゲーム、映画鑑賞、スキル研究。テオネリア王立初等学校では文学を得意とし何度もコンクールで入賞。』
そうそう、そう言うやつ。そういう細かい情報が欲しかったんだ。
『王立中等学校では数学、体育などでも活躍する。高等教育学校では法学を専攻したが、多種多彩な単位を取り、在学中の十年で取得した単位の累計ランキングでは未だに一位を破られていない。高等教育学校に入ってからはスキル研究サークルを設立。スキルの研鑽に励む。当時設立したスキル研究サークルは現存しており、ヴェレル氏の経済的支援のもと自由なスキル開発に勤しんでいる――――』
これだ! これが知りたかったんだよ!
『ヴェレル氏の得意スキルは多岐にわたる。地水火風の古典属性スキルやベクトルや重力操作などの新属性スキル――――』
いい加減操作を見て覚えたのだろう、気になるところでおタヒがストップを押した。こいつも成長したな。以前なら絶対に俺にやらせていたのに……。
ちょっと寂しい気がしたのは秘密だ。
番外編更新してます!
161話の描かれなかった詳細なエピソードです
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