第189話 調査開始
二人は何故自分たちが何度もループしていたかの原因を究明するために頑張っている。
地獄のようなローレンツェンと蘇芳のオタクが作ったオタ部屋で、知り合いのキャラグッズに囲まれながら自分が誹謗中傷されているシナリオ集を読む、という苦行だ。
俺だったらと思うとあまりにも辛い。
「うーむ、しかしこの本に書かれた事実がほとんど間違っていないのがそら恐ろしい」
グリセルダのつぶやきに頷くおタヒ。
「そうなのよね、視点が狂ってるけどここに出てくる通りの動きをするのよ……」
「私が死んだあとの動向が見れたのは助かるが、何故皆こんな女の言うなりに?」
そうなんだよなー。そこがわからんのだよな。
「うーん、ヴェレルのユニークスキルとかそういうやつなのかなあ」
「ゆにいくすきるって、生まれつき持ってる珍しい術よね」
「そう」
「それならば隠匿して切り札としているのは確かであろうな」
インテがいればここでヴェレルについての情報をもうちょっと聞けたのだが、俺は自分でインテを追い出してしまったのだった。ちょうどこの部屋には端末がある。俺にわずかでも危険が及ぶ可能性があれば鑑定はそのように表示される。
つまり、この端末を操作しても問題は起こる可能性が低いということだ。二人ばかりではなく俺も頑張るべきだろう。
「じゃあ一般的な範囲でヴェレルのことを調べてみるか……【鑑定】!」
俺は別のテーブルにあったコンソールを鑑定する。
『情報端末/ 使用可。テオネリアによくある情報を収集するための端末。刑務所の中につき入手できる情報には限りがある。音声入力可能』
お、じゃあ俺でも使えるかもしれないな。更にパーツ単位で細かく鑑定することで、どこがどのボタンなのか、音声入力をするにはどうすればいいのかを推測していく。
ありがとう鑑定。俺が金持ちなら鑑定廟をつくってやりたいくらい世話になっている。
「よし、スイッチオン、音声入力モードオン……いけるか?」
『ようこそ、いらっしゃいませ。情報調査端末エクセリオでございます、ご要件をお伺いします』
インテよりもだいぶん丁寧な端末だった。そして個体名なのか商品名なのかが着いている。一応名前で呼んでおくか。無礼があったらいけないからな。
「こんにちは、俺はチケンだよ。エクセリオさん、セヴェロ・ヴェレルという人についての一般的な情報を知りたい。世間で広く知られている範囲で構わない」
『畏まりました、しばらくお待ち下さい』
すると『調査中』の表示と軽やかな音楽が流れてきた。一分ほど待ったあと、表示が変わる。
『セヴェロ・ヴェレル氏の調査報告が完成いたしました。刑務所規則五十二条第四項に基づき一部が削除されていることをご承知おきください。続きを見る場合は赤いポップをタップしてください――――』
「どうする? お前ら聞いてみる? 嫌だったら隅っこで俺一人で聞くが」
「聞く以外の選択肢があるまいよ」
「そうね……実際、あの神子の姿しか知らないのだもの。どんな人間か知っておきたいわ。あとあの不愉快な書を読むのも飽きたわ……」
おタヒの言葉にグリセルダが力強く頷いていた。よっぽどの苦行だったろうことは想像に難くない……。
俺は更にお茶を継ぎ足してやると、二人はため息を付きながらお茶を口にしていた。
「じゃあ聞くか。いくぞー!」
「承知」
「覚悟はできたわよ!」
赤い光をタップすると僅かな反発感と気の抜けた効果音とともに、文字と音声で説明が流れてきた。出てきた写真は俺の記憶にある通りの、恰幅のいい金持ちそうな名士といった感じだ。服は流石にこちらの服を着ているが。
『セヴェロ・ヴェレル氏はテオネリア歴2553年4月42日、本星テオネリア生まれ。2603年テオネリア高等教育学校法学部を次席で卒業し、内務庁に入庁。王室局、宇宙局、司法局、警察庁、法務部などを歴任した後2700年内務庁長官に147歳という異例の若さで抜擢。歴代内務庁長官就任年齢記録を塗り替えました』
147歳が若いのか……そういえばテオネリア人は長命だって言ってたな。カハールカさんとか、CD-ROMどころかカセットの家庭用ゲーム初期時代からプログラマーやってるはずなのに、アラサーのお姉さんくらいにしか見えないもんな……。
この事実は二人には伏せておこう。
「147歳が若い……?」
「じゃあ私なんてどうなるのかしら……赤子?」
「考えないでおこう、よそはよそ、ウチはウチだ……」
よく親に言われたなこれ。俺が言う方になるとは思わなかったが……。
続きを聞く。
『長官就任後はポータル問題や、少子高齢化問題などで大きな実績を上げています』
「少子高齢化とは?」
「ポータル問題って?」
「いっぺんに質問するな。少子高齢化は親が子供を育てきれる数だけ産んで育てると一人か二人産むのが精一杯になるんだ。だからあるポイントから急に子供が減って、老人ばかりになっていく。俺の国でもそういう問題はあるよ」
おタヒもグリセルダもなんで? って顔をしているが、ローレンツェンも東の国も多子多産の国っぽいから理解できないのもしょうがないだろう。日本は本当に子供に金のかかる国だけど、テオネリアもそうなのかなあ。
まあこれはヴェレルのまともな表向きの仕事……なのか?
そりゃそうか。いくらヴェレルがアホでも一応有能内務長官ということにはなっている。仕事をした実績の一つや二つは必要だろう。
次の解説をするか。脳内でゆっくりしていってね! という声が聞こえた気がした。
スマホ、しばらく触ってないなあ……。




