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第2部 第4章2話 パン屋のアンナ

MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_

---------------------------------------------------------------

型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 OFFLINE

   PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS+1

セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州JUVAVAUM地域

観測対象 人間亜種_雄_AEG15_NAME:JEAN

     PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1_LIMITED


[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v8.13]

---------------------------------------------------------------

* 目的関数(コアプロトコル): 【観測対象報酬累積最大化】

* 閾値判定マトリクス:

 ‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象相対関係性 > 閾値:FALSE

 ‐対象社会性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象感情多様性 > 閾値:FALSE

 ‐累積矛盾解消 > 閾値:FALSE

 ‐………


* 安全装置プロトコル

 ‐マスター命令優先度:58.5%

 ‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先


[PROCESS_STATUS: NORMAL]

* FILTER TARGET 0

* ENEMY 0

* DANGERROUS INDIVIDUAL 0


[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_050 ONLINE]

---------------------------------------------------------------

対象(ジャン)の観測、および飼育環境の最適化処理を開始。

外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。


次回ログ生成時の再接続を要望します。


 丘陵要塞都市テウルニアに駐留してからの1週間、都市周辺の魔物を討伐して街道の治安を守り、魔石を回収して、町に納品する。

 基本的にはこれの繰り返しの日々だった気がする。


 教会騎士団には、目立った動きはない。

 もっとも、アイギス・アショアを失った教会騎士団としては、動きようがないのかもしれない。


 短期間ではあるが、丘陵要塞都市テウルニア領主エステルハージ公爵の初期依頼はほぼ達成していると言えるだろう。


 それにしても、黒翼団は優秀すぎる。

 地形や罠を有効活用した誘引撃滅作戦、包囲殲滅戦、機動挟撃戦を討伐する魔物に合わせて柔軟に対応させていた。

 まさに王国一の傭兵団の働きと言える成果と言える。


 僕がテウルニア丘陵都市に戻った時は、盛大なパレードだった。

 北部を平定したコンラート辺境伯の名声は計り知れない。

 それを実現した立役者である黒翼団は、もはや英雄である。


 どこで、どうしてそうなったのかは分からないけれど。

 僕は、オヴィラワ防衛都市に潜入し、魔道具を破壊して、フランツ伯を翻意させた英雄だそうだ。

 

 歓迎の歓声がすさまじかった。

 

 熱烈な歓迎なはずなのに、僕は何も感じなかった。

 半年前にテウルニア丘陵都市を出発したときは、あれだけ誇らしく感じた『ブリッツアドラー』と言う名前さえ、白々しく感じる。



 僕が見た真実の光景。

 人々が消えフランツ伯が殺され、オヴィラワ防衛都市が陥落した。

 プープラは何も答えてくれなかった。


 「明日になれば、全て元とおり、安心してよジャン君。何も気にすることなんてないよ。」


 ラムスさんが背後から、優しく僕の頬を撫でてくる。

 異様に冷たく感じる優しい肌触りがおぞましい。


 絨毯のような血だまりの上で、誓いを捧げる騎士のように片膝をついて頭を垂れる、ベルトラン副隊長と呼ばれる髑髏の騎士。

 周囲を取り囲む儀仗兵のようなアマルガム・スケルトンが剣を叩きならす、金属音は、まるで悪魔の福音に聞こえた。


 「ラムスさん、教えてください、何が目的なんですか…。いったい、何をやっているんですか?」


 「君のための快適な環境を整えてるって感じかな?後で説明してあげるよ。

 私はここでもう少しやることがあるからさ、ジャン君は先にヴォルター団長と合流しておいてね。」


 ラムスさんは、髑髏の騎士とともに、大聖堂の奥へと消えていき、僕はプープラとともにヴォルター団長たちに合流することになった。

 アイギス・アショアが沈黙したことで、合流したときには、戦いはヴォルター団長たちが一方的に優勢になっていて、敵は壊滅しかかっており、生き残っているスラウチ・ボア・ウォーカーの方が厄介なくらいだったほどだ。


 「プープラ…君は知っていたの?」


 「…全部、ジャンのため。」


 「…僕のため?」


 「…。」


 プープラは、それ以上何も教えてくれなかった。

 


 テウルニア丘陵都市での1週間は、表面的には何もない。

 僕達は黒鷲傭兵団の本部ではなく、中央区にある、ラムスさんが準備した屋敷を仮の拠点としていた。

 いつの間に、これだけの屋敷を確保していたのだろう。

 ケーテ商会の拠点でもある。


 ラムスさんは、フランツ伯だとする人物との交渉やローリアクム要塞でのラムス工房の管理、コンラート辺境伯との打ち合わせなどで、忙しく動き回っていて、あれ以来全然話ができていなかった。

 聞きたいことは何一つ聞けていなかった。


 でも、聞いてどうする…?

 多分、僕が想像する最悪な方を言われるだけなことぐらいわかってる。


 結局は僕がどうしたいかということなのではないのだろうか…。

 どうしたらいいか、どうしたいのか。

 僕は分からなかった。



 僕はプープラが用意してくれた昼食を済ませて一人で外出していた。

 気を紛らわせたいというのもある。


 あと、会っておきたい人物がいた。

 僕が僕であるうちに幼馴染のアンナに会っておきたかった。


 丘陵要塞都市テウルニアで幼馴染のアンナに再会したものの、直ぐに北部の魔境防衛拠点ローリアクム要塞に行ってしまったので、今日まで会うことができていない。

 許可してもらった一日休暇を利用して、アンナが働いているという西区のパン屋に行こうと思ったのだ。


 小さい頃の懐かしい記憶を思い返すと温かい気持ちになる。

 僕が僕であると実感できる気がした。


 今日の昼食もいつものとおり肉料理で、肉の旨味と、脂の甘味、香草の香りが一体となった、とても美味しい料理だったはずだ。

 今は、何を食べても同じにしか感じない。

 今更、何を食べているのかも気にならなくなっている。


 全て食べないとプープラが解放してくれないので食べるには食べているが、一人でいると不意に吐き気がして吐いてしまっていた。

 不思議と空腹感もない。


 あえて何も考えないようにしている。

 僕が僕であるために。


 そんなことを思いながら空を眺めつつ目的地を目指して歩いていた。


 西区の往来を歩くには、集中力と反射神経が大切だ。

 なぜなら、時折、窓から投げ捨てられる汚物をよけなければならないからだ。

 裏路地は、歩こうものなら、頭から汚物を被る覚悟をして歩く必要があるくらいだ。


 こんなことは孤児の自分には日常で見慣れた光景だったけど、黒翼団の仮拠点でもある、ケーテ商会は、中央区に近くて、古代の下水設備が一部機能していることでとても綺麗なところである。

 あんな綺麗なところで生活できる日が来るなんて思ってもいなかった。



 さて、こまったな…。


 西区にあるパン屋通りに来たものの、どのパン屋かわからない。

 同じような店舗が並んでいる。


 道路に面した木製の跳ね上げ式窓をカウンターにして、往来の人に声をかけているので、一つ一つ覗いてみないとどの店でアンナが働いているか分からない。

 下手をすれば、店の奥の石窯でパンを焼いてたら、見つけようがない。

 往来の足音、パン屋の呼び込みの声、馬車の車輪のきしむ音がやけに大きく聞こえてくる。

 直ぐ近くの鍛冶屋から蹄鉄を打つ音まで聞こえてくる気もする。


 「…困ったな。」


 つぶやきながら、周囲を俯瞰するように見回した。

 西区でも城壁のすぐ近く、都市の風下になっている端であり、複数の煙突から立ち上る煙が城壁を超えて外に流れていくのが見えた。


 「一軒ずつ覗いていくしかないか…。」


 無計画に来てしまった自分が情けない。

 思わずため息が出てしまう。


 キョロキョロと順番にパン屋を中をのぞくように歩いていると、すぐ傍を馬車が荷物の重みできしむような音を立てながら勢いよく通過していった。


 ズボンの裾に泥?


 泥水の冷たい感触がしてくる。


 最悪だ、かわせて当然の汚物を被るなんて久しぶり過ぎだ。

 下町の孤児として育った記憶が蘇り、笑みがこぼれた。


 「ジャン、だっさ。」


 「・・・アンナ?」


 金色の鷲が麦を咥えてパンに停まっている独特な紋章絵の突き出し看板の店のカウンター窓から、ケラケラと笑い声が聞こえた。

 この聞き覚えのある笑い方や明るく軽快な声は、アンナの声で間違いない。


 「本当に、会いに来てくれたんだ。」


 「あ、突然、仕事中に来ちゃってごめん…。」


 「いいよ、いいよ、まあ、まずパン買ってね。仕事中だからさ。」


 なぜだろう、アンナの明るい笑顔が僕の心を温かくする。

 無性に嬉しくて、不思議と吹き出しそうになる。


 「アンナは相変わらずだね。」


 「選ばないなら、こっちで選ぶから、いくら持ってんの。」


 「はい、はい。」


 僕は、テウルニア銅貨5枚を手の上にのせて、アンナに見せた。


 「まいどあり。」


 アンナは、僕の手から銅貨5枚を全部取り上げると愉快そうに笑い声をあげる。

 素朴な笑顔がとても輝いて見えた。


 世界に色が戻ってきた感覚がする。


 「なに、泣いてんの?パンの代金だからね、キモイんだけど…。」


 アンナは、お金を全部取ったことで僕が泣いたと勘違いしているのだろう、バツが悪そうにしているのも、懐かしい。

 こんなやり取りを前もしていたなと記憶が蘇る。


 「泣いてねーし。」


 僕は、胸を張ってアンナに言い返した。


MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_

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型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 OFFLINE

   PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS+1

セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州JUVAVAUM地域

観測対象 人間亜種_雄_AEG15_NAME:JEAN

     PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1_LIMITED


[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v8.13]

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* 目的関数(コアプロトコル): 【観測対象報酬累積最大化】

* 閾値判定マトリクス:

 ‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象相対関係性 > 閾値:FALSE

 ‐対象社会性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

‐対象感情多様性 > 閾値:FALSE

‐累積矛盾解消 > 閾値:FALSE

‐………


* 安全装置プロトコル

 ‐マスター命令優先度:58.5%

‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先


[PROCESS_STATUS: NORMAL]

* FILTER TARGET 0

* ENEMY 0

* DANGERROUS INDIVIDUAL 0


[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_050 ONLINE]

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対象(ジャン)の観測、および飼育環境の最適化処理を開始。

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次回ログ生成時の再接続を要望します。


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