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第2部 第3章5話 急襲の斬首作戦

 「エリス、榴弾魔法を3分間、最大密度投射を開始。」


 「了解しました、最大密度投射開始します。」


 「ジェフリー、正面魔法火力を、敵右翼に集中。」


 「了解しました、敵右翼に魔法火力を集中します。」


 「特別攻撃隊、新型魔剣起動、最大攻撃起動準備。」


 スラウチ・ボア・ウォーカーが敵軍の後背に突入したのを確認すると同時に、ヴォルター団長は、声を張り上げて端的に命令を発した。


 命令を受け、後方支援隊のエリス副隊長、随伴隊ジェフリー副隊長代理が速やかに行動を開始する。

 伝令兵が第三次塹壕線の指揮所を駆け出し、空に向けて、幾何学模様の閃光魔法を複数発射した。


 魔石の大盤振る舞いの開始だ。

 頭上を榴弾魔法の軌跡が幾重にも走り空が砲撃線で塗り潰されていく。


 予定通りの密度だな。

 地面は鼓動のように震え、前面には炎の壁が立ち上がり、火柱が途切れず噴き上がった。

 爆風が顔に当たり、焦げた嫌な匂いが強くなる。


 岩盤が吹き上がるようにに破壊されていくのが見える。

 呪の影響を考えれば、これが最後の花火というところだろう。


 同時に、正面火力が敵右翼に集中投射され、熱と光が飽和し、爆風で敵兵士がなぎ倒されていく。

 敵右翼は、粉々に分断され、組織的戦闘能力を失っていくのが分かる。

 こちらも、この密度は長くは持たないだろう。


 ヴォルター団長は、指揮所を出て、新型魔剣を抜き、敵方向に向けた。

 ヴォルター団長の前に、同じ新型魔剣を抜いている三十名の特別攻撃隊が塹壕各所から集結していた。


 特別攻撃隊が新型魔剣を一斉にかざして呪文を唱え始める。

 呪耐久限界まで魔石を投入する。


   『聖なる祈りよ…神の慈悲よ・・』


 詠唱のコーラスが始まる。

 儀式みたいなもんだが、気分を高揚させてくれる。


   『エクスキータ』


 特別攻撃隊の剣が一斉に強く青白く灯る。


   『コンフィルマーティオー』

   『クラウデレ』

   『コヒベーレ』


 強化、結界、弱体化が発動する。

 体が焼けるように熱くなる。

 力がみなぎる。


 榴弾魔法の軌跡が切れた。

 前方の岩盤崩壊が止まり、煙が晴れていく。


 ヴォルター団長は口角を上げる。

 肌がチリチリと焼けるような痛みが心地いい。

 さて、仕事の時間だな。


   『エクスペルギスケレ』


 ヴォルターは叫びながら長剣を振りかぶると、特別攻撃隊全員が限界まで底上げした身体魔法の効果を最大限に発揮し、地面を蹴りつけた。

 地面が爆発するように飛び散り、特別攻撃隊全員が打ち出されるように突撃を開始する。

 全員が全身を青白く発光させ、それは光の矢のように見える。


 スラウチ・ボア・ウォーカーが怒号のような咆哮とヴォルター団長率いる特別攻撃隊の鬨の声が、敵軍の悲鳴の蹂躙を開始した。



 「こちらは、これでうまくいきそうだね。」


 僕が上空でラムスさんに合流すると、ラムスさんは、優し気に微笑しながら、戦場を俯瞰していた。

 ラムスさんは、僕が近づくと手を振りながら笑ってくる。


 「さあ、ジャン君、仕上げと行こうか、

 魔法火力支援後に魔物で敵軍後背を叩き、正面から特別攻撃隊で急襲したとはいえ、

 アイギス・アショアの影響下だ、押しきれない可能性がある、意思がないとね。」


 「え、はい。」


 「ジャン、時速300キロメートルに増速、高度300を維持、

 目標オヴィラワ防衛都市フランツ・フォン・シュワルツェンベルク伯邸、私が誘導する。」


 プープラは、無表情にそう言うと、一直線に宙を駆け始めた。

 僕も急いでプープラの後を追う。

 ラムスさんは遅れながらも僕達の後を追いかけている様だった。


 まるで風になったかのように、宙を駆けていく。

 オヴィラワ防衛都市までは、ここから距離にして、30キロメートルはあったはず、馬車でも丸一日かかる距離だ。

 それなのに、ものの5分もしないうちに、オヴィラワ防衛都市が視界に入ってきた。


 イージス・アショアの影響だろうかオヴィラワ防衛都市に近づくにつれ、身体が重たく感じてくる。

本当、厄介な魔道具だ。


 プープラが無言で僕の顔を見てきた。

 何故か不安そうな、苦しそうな顔をしている。

 魔道具の影響だろうか?


 それとも別のことを気にしているのか…。

 僕がウリ坊を投げれなかったことを気にしているのだろう。


 僕なら大丈夫。

 これは戦争だ。


 覚悟はできていたはずだ。


 そう言い聞かせるように、唇を噛みしめた。

 剣の柄を強く握りしめる。


 ん?


 オヴィラワ防衛都市がやけに明るい…。

 その明るさがなぜか僕を急に不安にさせる。

 都市があんなに明るいなんて、火事でも起こってるのか?

 違和感を覚えた。



 オヴィラワ防衛都市に近づいたとき、その違和感は間違いなく確かなものになった。

 都市のあちこちから火の手が上がっている。

 黒煙が幾筋も上がっている。


 それなのに、人の声がしない。

 人影が見えない。

 生きている気配が、都市から丸ごと消えていた。


 どういうことなんだ…?


 「プープラこれは…?」


 「今は、それは後、先にアイギス・アショアを叩く。」


 「…分かった。」


 プープラが苦しそうに、僕に答えた。

 どうしたのだろう、嫌な予感しかしない。


 「あそこ、聖堂の中央に反応がある。」


 「…ありがとうプープラ、行ってくる。」


 僕は、遠くに見える大聖堂の中央ホールに視線を合わせた。

 大きく息を吸い込む。


 アイギス・アショアを無力化すれば、ヴォルター団長たちは一気に優勢になり、最小限の被害で勝利を収められるだろう。

 フランツ伯を捕らえることができれば、この動乱を止めることができるかもしれない。

 オヴィラワ防衛都市の状況は気になるけど時間がない。

 今は、やることをやらなくては。


     『エクスペルギスケレ』


 僕の身体が青白く輝きだす。

 地面に足を付いていないせいだろう、熱の逃げ場がないため、僕の身体がどんどん熱くなっていく。

 速度を上げ、聖堂の天井から真っすぐに降下する、


 聖堂の天井に足がふれた瞬間に僕自身の身体を導管にして、熱を建物に捨てた。

 ヴォルター団長に教えてもらった、基本とおりの魔力操作だ。

 これをしっかりやらないと、魔法で体を焼かれる。


     『プリーマ・パシス』

  

 手の中で剣の青白い光が収束していく。

 僕の身体が強く発光し、聖堂の鐘楼や屋根が吹き飛んだ。

 飛び散る石材は、白熱しており、周囲に火の手が上がる。


 僕は、そのまま聖堂の中央に突っ込んだ。

 激しい爆風が巻き上がり、放出される光の帯がのたうち回り、周囲の岩盤が捲り上がっていく。

 周囲から、悲鳴と怒号が聞こえてきた。


 立ち上る煙の中、僕が足元を見ると、女神像のようなものを踏みつけているのに気が付いた。

 女神像は、抱きしめるように魔石を持っている。


 もしかして、これがアイギス・アショアなのか?

 僕は、剣を振り下ろして、即座に魔石を破壊した。


 身体を押し付けていたような圧力が消えていくのが感じられた。

 僕の身体から放たれる青白い光の帯が輝きを増し、。

 周囲を強く照らし出した。


 プープラが僕の隣に降り立ってくる。

 ラムスさんが遅れて僕の背後に降り立った。

 僕達を囲むように複数の完全装備の騎士が剣を構えている。

 三十人以上はいるように見える。


 騎士たちの中央に、ことさら豪華な鎧を身にまとった騎士がしりもちをついた。

 驚愕の表情で僕を凝視している。


 鎧の紋章は、頭蓋骨の目を突く大鴉の意匠だ。

 シュワルツェンベルク家のもので間違いない。

 それくらいは、僕だって頭に入れてきている。


 こいつがフランツ伯ということで間違いなさそうだな…。

 アイギス・アショアの無力化は成功した。

 残るは、フランツ伯の拘束。

 行けるか?


 相手は正規軍騎士団三十名。

 僕達は、聖堂の中央にいて包囲されている。

 

 フランツ伯の方が出入口に近い。

 このままでは逃げられてしまうかもしかも知れない。


 「大丈夫ですよジャン君、安心してください。」


 ラムスさんが、優しく静かに、そしてとても冷えた声で囁いた。

 猛烈な違和感がした。


 次の瞬間、出入り口のドア、四方の壁が吹き飛び何かが、聖堂の中に侵入してきたのが見えた。


 なんだ…あれは。


 理解が追いつかない。

 目が拒絶しているのに、視界だけがその異形を映し続けていた。


 4本の脚に支えられる一つの胴体。

 胴体から延びる、四本の腕があり。

 奇妙に湾曲した剣がそれぞれ握られている。

 

 二つある、髑髏の頭部の空洞の眼窩が歪に震えながら騎士たちを凝視しており、握られている剣には肉がこびり付いていて、血が滴っていた。

 凶悪な化け物が突然現れた。


 ラムスさんが愉快そうに微笑している。

 プープラが、苦しそうに震えていた。


 フランツ伯と騎士たちが悲鳴のような絶叫を上げている。

 何が起こっているんだ、思考が追い付かない。

 

 僕は、いったい何を見ているんだ。

 全身が硬直して、身体が動かない。


 「アマルガム・スケルトンたち、フランツ伯は殺したら駄目だよ。」


 ラムスさんが愉快そうに笑った。


MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_

---------------------------------------------------------------

型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 ONLINE

   PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS+1

セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州JUVAVAUM地域

観測対象 人間亜種_雄_AEG15_NAME:JEAN

     PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1_LIMITED


[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v8.11]

---------------------------------------------------------------

* 目的関数(コアプロトコル): 【観測対象報酬累積最大化】

* 閾値判定マトリクス:

 ‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬高発火[READY]

 ‐対象相対関係性 > 閾値:FALSE

 ‐対象社会性 > 閾値:FALSE

 ‐対象感情多様性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐累積矛盾解消 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐………


* 安全装置プロトコル

 ‐マスター命令優先度:68.6%

 ‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先


[PROCESS_STATUS: NORMAL]

* FILTER TARGET 0

* ENEMY 0

* DANGERROUS INDIVIDUAL 0


[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_047 ONLINE]

---------------------------------------------------------------

対象(ジャン)の観測、および飼育環境の最適化処理を開始。

外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。


次回ログ生成時の再接続を要望します。


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