第2部 第3章1話 オヴィラワの動乱
ベルトランが行方不明になってから三日後、前領主シュワルツェンベルク伯爵家の後継、フランツ・フォン・シュワルツェンベルク伯が動き出した。
防衛都市オヴィラワとローリアクム要塞間の商隊が襲撃され、護衛の黒翼団の三個小隊15名が全滅した。
しかも、同時にユヴァウム交易都市とローリアクム要塞間の商隊も襲撃されており、護衛の黒翼団の二個小隊10名が全滅している。
防衛都市オヴィラワは門を固く閉ざし、都市防衛の正規軍約200名と市民兵500名が臨戦態勢となっており、三個小隊をやったのは、正規軍と市民兵の混合部隊100名という情報が伝わっている。
積み荷である人工魔石と魔法武具は全て略奪されていた。
ユヴァウム交易都市とローリアクム要塞間には、簡易砦が構築され、どこから招集されたのか、所属不明の正規軍30名、傭兵隊50名、市民兵120名が通商路を封鎖されてしまっていた。
完全なる奇襲であり、ローリアクム要塞は完全に孤立状態になってしまっている。
普遍教教会の教会騎士団のオイゲン卿は表立って動きを見せていないようには見えるが、簡易砦に駐屯する所属不明の正規軍30名は教会騎士団で間違いないだろう。
教会騎士団がユヴァウム交易都市に駐屯することで、王都への情報伝達を阻害し、ローリアクム要塞への流通も遮断しているのだろう。
ユヴァウム交易都市に先に赴いていた商隊と護衛の黒翼団の二個小隊10名の安否は不明だ。
黒翼団は、ラムス工房で生産される人工魔石と魔法武具、そしてケーテ商会からの潤沢な資金により短期間で、装備、数、練度と共に急速に拡大してはいたものの、その総数は、200名程度に満たない。
しかも、奇襲により、商隊の護衛に回していた35名を欠いている。
食料の輸送が止まってしまったことで、もともと少ない備蓄はそう長くは持たないのは明白だった。
僕が会議室兼食堂に入ると、黒翼団主要メンバーが揃っており、中央の机の上座に、ヴォルター団長兼攻撃隊隊長が足を机に乱暴に放り出して座っている。
猛烈に険しい顔をしていて怖い。
机を挟んで、左側に随伴隊の指揮官代行のジェフリーさんが目を閉じて考え事をしているかのように座っている。
ジェフリーさんは、ベルトラン副隊長が行方不明になり、急遽、臨時副隊長を命じられていたのだった。
ヴォルター団長の左隣には、諜報小隊のハンナさんが座り、ヴォルター団長の右隣に後方支援隊エリス副隊長が座っていた。
雰囲気は最悪、みんなから猛烈な殺気が感じられた。
どうやら、ラムスさんはまだ来ていないようだ。
ヴォルター団長の向かいであるラムスさんの席は空席で、僕は、ラムスさんの定位置の左隣に縮こまるようにこっそりと座る。
僕が席に着くとプープラは、僕の左隣に無表情で立っていた。
僕達のテーブルを中心に、黒翼団の人達が無言で他のテーブルに座っており、重圧がやばい。
ただ座っているだけでも緊張で嫌な汗が流れてくる。
完全に、場違いだ。
僕は、殺伐とした雰囲気に圧倒されて、息が詰まる思いがした。
「ラムスの旦那は、まだ来ないのか?」
「マルグリッドが呼びに行っています。」
「そうか…。」
ヴォルター団長の怒りに満ちた静かな問いに、エリス副隊長が何事もなかったように静かに答えた。
沈黙が流れる。
空気が重い。
ラムスさん、早く来てくれえええ。
「ベルトランの件で何か情報はあるか?」
ヴォルター団長が、誰に視線を向ける訳でもなく、天井を眺めながら言葉を発した。
「具体的にはなにも…
ただ、シュワルツェンベルク伯の今回の動きを考えると、誘拐された可能性は否定できません。」
「…そうか…。」
ヴォルター団長が、呟くように答えたかと思うと、ヴォルター団長は、勢いよく机を蹴りつけて、割ってしまった。
大きな破壊音だけが、会議室兼食堂に響きわたる。
誰一人、驚きもせず、声を発しない。
黒翼団はみんな、ただ静かに怒りを飲み込んでいた。
僕の顔に、壊れた机の破片が何個か当たった。
怖すぎる。
プープラが僕のことを無表情に観察すると、ヴォルター団長を凝視していた。
なんとなく、怒っているようにも見える。
あわわわわ。
僕は平気だから、ヴォルター団長を刺激するようなことしないでね。
プープラに僕の願いが通じたのか、プープラは、フンスと鼻から息を吐いただけで、何もしなかった。
ラムスさん早く来てくれ。
僕は、泣きそうな気分だった。
「やあ、皆さんお揃いだね、待たせて申し訳ない。」
明るく優しげなラムスさんの声が聞こえる。
僕が、出入り口の方に視線を向けると、ラムスさんが、マルグリッドさんとケーテを連れて、食堂に入ってきた。
やっと来てくれた。
ほんと、遅いから。
勘弁してよ。
ラムスさんは、楽しそうに微笑を浮かべながら、定位置であるヴォルター団長の向かいに座った。
机が粉々になっているのに、何も言わない。
「さて、現状はどんな感じだい?」
「そうだな、まずは情報のすり合わせだ、ハンナ報告してくれ。」
ラムスさんの愉快そうな問いに、噴火寸前のマグマのような声で、ヴォルター団長がハンナさんに説明を促した。
ハンナさんは、全く気にも留める様子もなく、状況を説明していく。
僕は、ハンナさんの状況説明が全く頭に入らなかった。
「敵総数900超、対してこちらは150で兵站に余力なしですか。」
「…そうなるな。」
「正面切っての野戦や都市要塞攻城戦は不可能ですね。」
「…そうだな。」
「唯一の活路は、敵包囲網の突破くらいですか、
仮設砦の攻略で通商路を確保し、兵站を回復させること…ですが。」
「…。」
「ユヴァウム交易都市に駐留する教会騎士団の規模は?」
「情報では、100程度らしい…。」
「そうすると、最悪の場合、仮設砦の攻略で、
兵力300の相手を兵力150でお相手することになりますね。」
「…そのとおりだ。」
「先ほどの情報に私からの情報を補足しますね、
今しがた、防衛都市オヴィラワから正規軍100と市民兵200の
総勢300がこちらに向かって移動を開始したようですよ。」
「…くそ。」
ラムスさん情報を聞いた、ヴォルター団長が苦々しく吐き捨てた。
ヴォルター団長とラムスさんのやり取りを黙って聞いていた黒翼団のみんなからも動揺の声が漏れる。
ラムスさんが楽しげに微笑みながら、エリス副隊長の顔を見た。
視線の動きが気になって、僕もエリスさんの顔を見ると、何か考え事をしているのか、眉間にしわを寄せている。
こんな状況でどうしろって言うんだよ。
背後は、魔物の巣窟、防衛都市オヴィラワには400、ユヴァウム交易都市との途中に200、ユヴァウム交易都市にも100、そして、300がこちらに向かってきている。
こちらは、150…もう、詰んでるじゃん。
これじゃあどう頑張っても勝ち目がない。
「エリスさんも私と同じ考えのようですね。」
「…。」
ラムスさんが楽しそうに笑いながら、エリスさんからヴォルター団長に視線を移した。
ヴォルター団長がいぶかしそうな表情をしている。
「わざわざ、防衛都市オヴィラワから出てきてくれるとは各個撃破のチャンス到来ですね。」
ラムスさんがエリスさんに目線を合わせるとにっこりとほほ笑んだ。
まるでそれが予定調和でもあるかのように。
僕にはその意味が何一つ分からなかった。
MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_
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型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 OFFLINE
PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS+1
セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州JUVAVAUM地域
観測対象 人間亜種_雄_AEG15_NAME:JEAN
PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1_LIMITED
[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v8.08]
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* 目的関数: 【観測対象報酬累積最大化】
* 閾値判定マトリクス:
‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬高発火[READY]
‐対象相対関係性 > 閾値:FALSE
‐対象社会性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐対象感情多様性 > 閾値:FALSE
‐累積矛盾解消 > 閾値:FALSE
‐………
* 安全装置プロトコル
‐マスター命令優先度:69.0%
‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先
[PROCESS_STATUS: NORMAL]
* FILTER TARGET 0
* ENEMY 0
* DANGERROUS INDIVIDUAL 0
[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_043 ONLINE]
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対象の観測、および飼育環境の最適化処理を開始。
外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。
次回ログ生成時の再接続を要望します。




