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第2部 第1章3話 傭兵団の仲間達

 魔境防衛拠点仮設ローリアクム要塞に駐留してからの1週間、仮設要塞周辺の魔物を討伐しては、魔石を回収する日々が続いている。

 それにしても、エリス副隊長の作戦立案には、驚くばかりだ。

 地形や罠を有効活用した誘引撃滅作戦、包囲殲滅戦、機動挟撃戦の多様性はもはや魔法のように感じることさえあった。

 さらに、ヴォルター団長が実務の作戦指揮で作戦を現実化してしまう。


 それに引き換え僕は毎回の訓練であまり成果が上がっていない。

 ヴォルター団長の要求水準もえげつない。

 ついていくのがやっとの1週間だったとも言えなくもない。

 

 「少しは、マシになったじゃねぇか。」


 「本当ですか?」


 全長5メートルもある4本首のヒュドラの討伐帰りにヴォルター団長が僕の肩を叩いて褒めてくれた。

 素直に嬉しくなってくる。

 疲れた体でも、気分が高揚して、胸が高鳴る思いがした。


 「ビビらなくなってきてるからな。」


 「…。」


 黒翼団のみんなの大爆笑が巻き起こる。

 どうやら褒められている訳ではない、からかわれているのだ。

 僕は急激に気分がしぼんでいく。


 たしかに、精鋭揃いの黒翼団の主要メンバーからすれば僕は、素人に毛が生えたようなものだろう。

 緊急登用された人たちと同じ程度なんだと思う。


 ため息しか出てこない。


 でも、僕は改めて黒翼団の実力が本物だと強く思っている。

 そう考えると、黒翼団が王国一の傭兵団と称される理由を改めて体験した1週間だったと感じた。


 死ぬような思いの恐怖の連続だった。

 ヴォルター団長は、僕を転ばせたり、前面に出したりと容赦がない。

 少しずつではあるけど、強くなっている実感はない訳ではない。


 「少しは、褒めてくださいよ。頑張ってると思うんですけど。」


 「そうだな、いい線はいってるぞ。」


 「ありがとう、ございます。」


 僕も黒翼団のみんなと笑いながら帰路についていた。

 みんなと笑う僕の顔をプープラが観察してくる。


 プープラが無言で無表情のままに、僕の頬についている土汚れをふき取り始める。

 いつものことだが、みんなに見られていると思うと恥ずかしい。


 「い、いいよ、プープラ、大丈夫だよ。」


 「…。」


 僕が恥ずかしさのあまり、プープラの手をどけようとすると、僕の手がプープラに触れて柔らかい感触がした。

 思わず、赤面してしまう。

 しかも、プープラは、反対の手で僕のやめさせようとする手を掴んで、僕の頬の土汚れをふき取るのを止めてくれない。


 手を握られたことで、ますます、心臓の鼓動が早くなる。

 プープラは、僕の反応を観察するように、頬をふき取り続ける。


 「お嬢、俺の顔も拭いてくれませんか。」


 「…。」


 ロバートさんが、からかうように顔を突き出すしぐさをするが、プープラは、無表情に一切無視である。

 黒翼団のみんながその様子をみてゲラゲラ笑う。

 恥ずかしすぎる。


 「じゃあ、プープラちゃんの髪は私が整えてあげますからね。」


 僕の髪の毛や服の汚れを払って整え始める、プープラを見て、マルグリッドさんが、近づいてきた。

マルグリッドさんの眼がキラキラと輝いてる気がする。


 マルグリッドさんは、プープラが所属する後方支援隊の手練れ魔法士で、なぜかプープラのことが大のお気に入りで、いつもプープラの髪をいじったりしている。

 綺麗な人なのに、変な人だと思う。


 「プープラちゃん、私の顔も拭いてほしいなあ。」


 マルグリッドさんがプープラの髪をとかしながら甘い声でプープラにおねだりを始める。

 眼がうっとりしていてなんか気持ち悪い。


 「…嫌です。」


 「もー、プープラちゃんてほんと可愛いい。ジャン君やめて、私のお嫁さんになって。」


 「…死んでください。」


 「えへへ、ほんと可愛い。たまんない。」


 マルグリッドさんが、真横からプープラの顔を胸にうずめるように押し付けて抱きしめて悶絶している。

 プープラは、マルグリッドさんのことをまるで意に介さず、僕の身体を確認するように、ペタペタと触っていた。


 いつもの帰り道の恒例行事になってきている。

 僕はため息が出てきた。


 プープラと視線が合って、赤く大きな瞳が僕に飛び込んでくる。

 赤面する僕を見て、一瞬、プープラがほほ笑んだように見えた。


 たまに一瞬しかみることのできない、プープラの笑顔は、ほんと破壊力が大きすぎる。

 黒翼団のみんなのひやかす声と笑い声がますます大きくなった。

 笑い声に嫌味はなく、ここが自分の居場所だと心が温かくなる。


 なんか、とても懐かしく思った。


 帰ってからの夕食は、プープラは『ポルケッタ』と言っていた。

 僕の食事は、プープラがいつも準備してくれる。

 基本的にはいつもの肉料理だ。

 今回は、肉の旨味と、脂の甘味、香草の香りが一体となった、とても美味しい料理だったが、なんの肉なのかは解らない。


 そして、あえて僕も聞かない。


 僕が僕であるために。


 でも、救いがない訳でもない。


 プープラは、あの時、『ジャンの食べれるものは、私が準備するから大丈夫。』と言ってくれた、それを信じたい。

 あれ以来、食事は、いつもプープラが準備してくれているのだ。


 おかげで、黒翼団のみんなにますます冷やかされてもいた。


 「お嬢、俺にもそれ作ってよ。」


 「…。」


 「お姉さんにだけ一口頂戴。あーん。」


 「…嫌。」


 プープラは誰になんと言われようと、眉も動かさずに反応しない。

 というか徹底的に冷たい。


 「ジャン、いい嫁さん持ったな。」


 「そ、そんなんじゃないですよ。」


 「…。」


 「毎日、見せつけやがってこの野郎。」


 攻撃隊の何人かに首を絞められるようにからかわれたが、プープラは無表情、そして徹底的に無反応。


 「…プープラ、ごめん。」


 「…バカなんですか。」


 僕がからかわれてしまっていることをプープラに謝ると決まって、反応薄く冷たく返される。

 少しは、反応してあげてよ。


 そして、『嫁』とか『彼女』という単語に反応して、一瞬だけ、鼻から息を吐いて微笑する。

 その微笑がすごく印象的で、魅力的で、見とれてしまう僕を、周りがさらにからかってくるというデットロック。


 挙句に、プープラは、僕が全部食べるまで、絶対にそばを離れないし、食事にだれも近寄せないもんだから、毎日の恒例行事みたいになっていた。


 僕はプープラに惹かれている。

 この気持ちは本物だ、プープラが僕のことをどう思っていて、なぜここまでしてくれるのが分からないけど、こんなやり取りがとても心地よい。


 役目と言っていたけど…。

 プープラは僕のことをどう思っているのだろう?


 「いつまでたっても、魔石の備蓄が増えないな。コンラートの旦那は、なんて言っている。」


 「コンラート辺境伯がラムス様と何やら会合を行っていましたが、詳しくは聞かされていません。」


 みんなの冷やかす声と笑い声に交じって、ヴォルター団長とエリス副隊長の話声が耳に入ってきた。

 『ラムスさま』という名前に反応してしまったというのが正確かもしれない。


 この1週間、ラムスさんの姿を見ていなかったことを思い出す。

 なにかやっていたのか?


 「ラムス様の指示で、魔石を抜いた後の魔物の死骸を集めていますが

 なにか関係があるのでしょうか?」


 「詳しくは聞かされていないし、聞いていない。」


 「聞いてないんですか団長?」


 「ラムスさんにその手のこと聞きたいならエリス、お前に任せる。」


 「い、いえ、いいです。」


 ヴォルター団長とエリス副隊長が何かを思い出したようにげんなりした表情をしている。

 たぶん、鼻息と早口と唾のことでも思い出したのだろう。


 「明日、コンラートの旦那に、呼び出されてる。」


 「どこにですか?」


 「ラムス工房。」


 「は?なんですか、それ?」


 僕の耳に入ってきた二人の会話、『ラムス工房』?

 嫌な予感しかしない。


 「エリス、お前も付き合え。」


 「ええええ、嫌ですよ。」


 エリス副隊長が頭を抱えてものすごく嫌な顔をしている。

 その様子に僕は思わず吹き出してしまった。


 「ジャン、お前もだからな。」


 は?


 まるで、話を聞いていたのを分かっていたかのように、ヴォルター団長は、僕のことを見て、豪快に笑いながら僕を指さした。


 「ええええ。」


 本当…嫌な予感しかしない。


MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_

---------------------------------------------------------------

型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 ONLINE

   PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS+1

セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州JUVAVAUM地域

観測対象 人間亜種_雄_AEG15_NAME:JEAN

     PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1_LIMITED


[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v8.03]

---------------------------------------------------------------

* 目的関数コアプロトコル: 【観測対象報酬累積最大化】

* 閾値判定マトリクス:

 ‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象相対関係性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象社会性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象感情多様性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐累積矛盾解消 > 閾値:FALSE

 ‐………


* 安全装置プロトコル

 ‐マスター命令優先度:99.8%

 ‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先


[PROCESS_STATUS: NORMAL]

* ENEMY 0

* DANGERROUS INDIVIDUAL 0


[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_035 ONLINE]

---------------------------------------------------------------

対象ジャンの観測、および飼育環境の最適化処理を開始。

外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。


次回ログ生成時の再接続を要望します。


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