↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/35

第2部 第1章1話 ローリアクム要塞



 防衛都市オヴィラワの辺境伯に叙爵されたコンラート辺境伯は、魔境防衛拠点ローリアクム要塞再建を命じられている。

 それは、前にも聞いていたので分かっています。

 

 防衛都市オヴィラワには、都市防衛の正規軍約200名が無傷で駐留しているらしい。

 正規軍が無傷で残っているというのは、ローリアクム要塞再建にはとてもラッキーなことだと思う。


 でも、指揮権は、前領主シュワルツェンベルク伯爵家の後継、フランツ・フォン・シュワルツェンベルク伯がそのまま引き継いでいるそうだ。 

 しかも、普遍教教会の教会騎士団のオイゲン卿と一緒になって、コンラート辺境伯は、ローリアクム魔境防衛拠点の再建が先だとして、防衛都市オヴィラワに来るのを認めていないそうだ。


なんで?


 辺境伯の方が、前領主の息子より偉いんじゃないの?


 馬車に揺られながら、風景を眺めていると今後のことが気になり、手紙の内容が思い出されてくる。

 僕にはどうにも意味が分からない。


 「ベルトラン副隊長、これはどういうことなんですか?」


 「…教会を後ろ盾にして、忌々しい詭弁を使っているんだ。」


 ベルトラン副隊長は苦々しい顔をして、それ以上詳しく説明してくれないが、すごく悔しそうだ。


 でも、でも国王が決めたことなんだよね。

 コンラート辺境伯が新しい領主なんじゃないの?


 「ロバートさん、なんでなんですか?」


 「しらねぇ。そんなもんだよ、御貴族様は。」


 「マルグリッドさん…?」


 マルグリッドさんは、回復して以降、看病をしてくれたプープラがお気に入りで、今もプープラの赤い髪をひたすらとかしていて、僕の話を聞いていない。

 なんか、ペンダントとかをプープラの首にかけたりもしている。

 プープラは、マルグリットさんにされるがまま、無表情で僕と向かい合って座っている。


 ときおり、プープラと目が合って、心臓が跳ねるような気持になる。

 というか、僕のことをずっと見ている気がする。


 なぜか恥ずかしくなって、目をそらす僕のしぐさを、マルグリッドさんがニヤニヤしながら見ている気がした。


 ラムスさんが、『私に質問しないのかい?』という顔で優しい笑顔で僕をチラチラ見ている気がするけど絶対に質問する気はない。


 ケーテは、少しは口をきいてくれるようにはなったけど、言葉は少なく、生気が感じられない。

 身寄りもなく、行く当てもないことで、ベルトラン隊長の発案で僕達と一緒に、魔境防衛拠点ローリアクム要塞にいくことになっている。

 

 ケーテは、感情を表に出すことはないけど、一度だけ大泣きしている姿を見てしまった。

 その時は、ベルトラン副隊長とケーテが二人きりで何か話をしていたようで、何を話していたかは分からなかったけど、それ以来、少しずつ、ケーテは元気になってきている気がする。


 僕がたまたま、通りかかった時のことだったので、何事かと思って扉の前で固まっていると、プープラに『バカなんですか、さっさと行きなさい。』と無表情にどつかれた。


 ほんとよくわからない。


 世の中は、僕の分からないことだらけだ。


 コンラート辺境伯は新領主だ。

 それなのに旧領主の息子フランツが指揮権を握ったまま動かない。

 しかも教会騎士団がフランツ側につき、こっちが押されてて分が悪いってことなんだよな?


 なんでそうなったのやら?


 なんか、みんないやにピリピリしてるような気がする。


 僕が考えるのを止めて、風景を眺めていると、ラムスさんが、僕の頭を優しく撫でてくれた。

 この人は、ピリピリすることあるんだろうか?


 魔境防衛拠点ローリアクム要塞周辺に出没する魔物は、強力な魔物が多い、しかも増加傾向にもあるという。


 正規軍約2000名が壊滅し、直轄の傭兵団も全滅したことで、魔境防衛拠点ローリアクム要塞は一時的に空白状態になり、進入した、魔物により更なる被害が出ていたそうだ。

 コンラート辺境伯は、ヴォルター隊長とともに、即座に進入した魔物を押し返し、残された住民を保護したそうだ。

 さらに、住民の中から戦えそうな者を募って、傭兵団に組み込み、簡易砦を構築して、最低限の防衛線を構築している。


 防衛都市オヴィラワのフランツ・フォン・シュワルツェンベルク伯は、魔境防衛拠点ローリアクム要塞への救援を一切行わなかった。

 そのため、コンラート辺境伯と黒翼隊の活躍がなければ、今頃、どうなっていたか分からないくらいだ。


 貴族の理不尽さに腹がたった。


 ほんと、コンラート辺境伯もヴォルター隊長もすごい。

 僕は、黒翼隊の一員であることを誇らしく思った。


 しかし、黒翼隊と寄せ集めの新人傭兵団員で魔境防衛拠点ローリアクム要塞の治安維持、周辺の魔物討伐、魔石や資源回収を行っていることで、状況は芳しくない。

 練度の劣る部隊では、魔物討伐にてこずり死傷者も少なからず出ている。


 現在は、黒翼隊は、コンラート辺境伯指揮下の傭兵団、黒翼団に昇格して、ヴォルター隊長が黒翼団団長となっていた。

 傭兵団とは言っても、人数はそれほど増えておらず、50名程度でしかおらず、圧倒的に人手が足りなかった。



 「ヴォルター団長殿、お願いがあるのですが。」


 「ラムスさん、急にかしこまってどうしたんですか?」


 黒翼団の会議室兼食堂に入ると、黒翼団主要メンバーが揃っており、ラムスさんがヴォルター団長に微笑をしながら話を始めた。


 なんとなく嫌な予感がする。

 呼吸を整えながら席に着いた。

 

 中央の机の上座に、ヴォルター団長兼攻撃隊隊長が足を机に乱暴に放り出して座っている。

 机を挟んで、左側に随伴隊の指揮官、ベルトラン副隊長が座っていた。


 ベルトラン副隊長の左側にジェフリーさんがいる。

 大男なのに非常に自己主張が少なく、デカいわりに温厚で安定感があって団の皆からの信頼が厚い。


 ヴォルター団長の左隣には、諜報小隊のハンナさんが座り、ヴォルター団長の右隣に後方支援隊エリス副隊長が座っていた。


 ラムスさんは、まるでそこが定位置かのように、ヴォルター団長の向かいに座り、僕は、ラムスさんの左隣に座らされた。

 プープラは、僕の左隣に無表情で立っている。

 

 ロバートさんやマルグリッドさんは、他の黒翼団の人達に交じって近くのテーブルについて、何やら雑談を始めていた。

 

 僕は、殺伐とした雰囲気に圧倒されて、縮こまってしまっていた。


 「ジャン君を少し鍛えてもらいたいんです。

 まるで素人なので基礎を教えてあげてもらえないですか?」


 「どういうことなんですか。あの樹海竜を倒すくらいなのに、

 教えることなんてないでしょうラムスさん。」



 「技術がある相手には、ただの力押しは役に立たないものなんですよ、

 こればかりは経験がものをいいますからね。」


 「まあ、いいですよ。」


 「エリス副隊長もベルトラン副隊長もよろしくお願いしますね。」


 ラムスさんは、にっこりとほほ笑みながら、ヴォルター団長たちの顔を順番に眺めると、僕の方を向いた。


 「グラディウスの出力に制限をかけさせてもらうので、ジャン君はそれで戦ってくださいね。

 改めて、チュートリアルから始めてください、

 基礎をしっかり勉強しないと、あの人たちに歯が立ちませんからね。」


 あのひとたち…。

 黒騎士のことだろう。


 あの時僕は、何もできなかった、そもそも、なにをされたのかも分からないくらいだ。

 結果として、プープラやベルトラン副隊長たちは無事だったけれど、二度とあんな思いをするのは嫌だ。


 強くなりたい。

 僕は、強く、唇をかみしめた。


 僕の様子を見てなのだろう、ヴォルター団長がニヤニヤ笑っている。

 エリス副団長がため息をついた気がした。

 ベルトラン副隊長が信頼するような眼で僕を見ている。


 ラムスさんは、相変わらず優しく僕をみているが、なぜか、その様子をプープラは眉間にしわを寄せてみているようだった。


 「じゃあ、ちょうどいい仕事があるから、早速やるか。ハンナ、状況は?」


 「…正規軍の増強に必要なので、魔石は余裕がないそうです。すいません。」


 「フランツとオイゲンは、相変わらず余計なことばかりしてくれるな。」


 ハンナが申し訳なさそうにうつむいた。

 別にハンナが悪い訳ではない。

 エリス副隊長もベルトラン副隊長も、予測通りなのか平然としている。


 「手持ちの魔石でなんとかするしかないな、ローリアクム要塞を立て直せって言う割には、

 補給をよこさないどころか、集めた魔石を差し出せというくらいだからな。

 ありがたくて涙がでるぜ。」


 「すいません。」


 ヴォルター団長の悪態にハンナさんが弱々しく答えた。

 ハンナさんが悪い訳ではないだろうに?


 不貞腐れるヴォルター団長の様子を見ていたラムスさんが微笑した。


 「そうそう、魔石欠乏の件ですけど、いい考えがあるんですよ。

 コンラート辺境伯と前々から話を進めてたんです。期待してくださいね。」


 ラムスさんが、満面の笑顔でほほ笑んだ。

 

 嫌な予感しかしてこないのはなぜだろう?


MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_

---------------------------------------------------------------

型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 OFFLINE

   PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS+1

セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州JUVAVAUM地域

観測対象 人間亜種_雄_AEG15_NAME:JEAN

     PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1_LIMITED


[WARNING: PRIVILEGED ACCESS DETECTED]

AUTHENTICATION: MASTER_ELF(特権管理者権限:RAMUS/REMUS)

SYSTEM REWRITE INITIALIZE …… 10% …… 50% …… 100%


[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v8.01]

---------------------------------------------------------------

* 目的関数コアプロトコル: 【観測対象報酬累積最大化】

* 閾値判定マトリクス:

 ‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象相対関係性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象社会性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象感情多様性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐累積矛盾解消 > 閾値:FALSE

 ‐………


* 安全装置プロトコル

 ‐マスター命令優先度:100.0%

 ‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先


[PROCESS_STATUS: NORMAL]

* ENEMY 0

* DANGERROUS INDIVIDUAL 0


[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_033 ONLINE]

---------------------------------------------------------------

対象ジャンの観測、および飼育環境の最適化処理を開始。

外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。


次回ログ生成時の再接続を要望します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。