第6章2話 辺境の町
豊かな森林の中の細い山道を抜けると、広い牧草地帯で、一気に視界が広がった。
吹き抜ける風が心地いい。
急峻な山岳地帯の山肌にこじんまりと木造の平屋や2階建ての家屋が密集するように建っている。
揺れる馬車から見たフォルスタウの町は、のどかで小さな町だった。
ヴォルター隊長は、コンラート団長の指示により、臨時小隊を編成してくれていた。
フォルスタウの町に赴いたのは、全部で6名。
随伴隊のベルトラン副隊長、冷静で堅実、腕が立つ。
攻撃隊所属、剣士のロバートさん、お調子者だが強さは本物だ。
後方支援隊所属の魔法士マルグリッドさん、攻撃魔法や支援魔法を得意とし、身の丈もある大きな杖を持っている。
そして、僕とラムスさんとプープラだ。
ここに来るまでに、大角羊や岩蛙等の魔物に遭遇したが、ベルトラン副隊長達により、即座に一蹴されてしまうため、僕の出番がなかった。
素早く鮮やかな連携攻撃に圧倒されてしまう。
「英雄殿が相手するほどの魔物ではないよ。」
何度もロバートさんに馬上からからかわれた。
ベルトラン副隊長達は、それぞれ、鞍を付けた軍馬に乗っている。
僕は、荷馬車の御者席にいる。
そもそも、機動力が違いすぎる。
僕が立ち上がろうとすると、ほぼ、戦闘が終わっているくらいなのだ。
僕が倒せたと言えば、毛虫みたいな魔物1匹くらいだ。
ロバートさんは、見たこともない魔物だと言って、さすが英雄とからかわれたくらいだ。
なんの活躍もできていない。
内心悔しがる僕のことをプープラが無表情に横目で見ている。
毛虫を倒したときは、怪我がないかと確認された。
カッコ悪すぎる気がして、恥ずかしい。
それにしても、プープラは御者までできるとは、ほんとなんでもできるんだな…まるで僕はお荷物みたいだ。
「肩の力を抜いたらどうだい、到着したみたいだしね。」
ラムスさんは、優しく微笑むように声を掛けてくれた。
荷馬車の荷台に寄りかかるように腰かけるラムスさんの銀髪が風に揺れていて、キラキラ光っている。
中性的な容姿のせいか、神話を描いた一枚の絵のようにも見える。
あの興奮早くがなければ、近寄りがたいほど、神々しい見た目だ。
はあ…。
ここまで来る間、ずっと空回りだったせいか、僕達が町の中心についた時、何もしていないのになんだがとても疲れていて、ため息が出た。
フォルスタウの町は、100名程度の小さな町で、小奇麗で、とてものどかな雰囲気がする。
しかし、そののどかな雰囲気のわりに、住民が奇妙だった。
どことなく、生気を感じないのだ。
マンティコアの出現で、町全体が疲弊しているのだろう。
犠牲者が出ているのだろうか?
僕は、胸がチクリと痛んだ。
「この町の代表者のところに案内して貰いたい。
魔獣の討伐依頼について、何点か確認したいことがある。」
「…。」
「聞いているのか、代表者の所に案内してくれ、
黒翼隊が来たと言えば、通じるはずだ。」
ベルトラン副隊長が馬上から話しかけた、壮年の男性は、まるで生気が抜けているかのように、ゆっくりと、ベルトラン副隊長を見返すだけで、何も返答しなかった。
何なんだ…気味が悪いな。
僕は、なんとなく、嫌な気配がして周囲を見渡すと、数名の住民が僕達をじっと無言で見つめていた。
不気味な違和感がする。
「おやおや、既にこんな感じでしたか。」
「どういうことですか?」
ラムスさんが首をかしげるように穏やかに笑っている。
こちらは、こちらで意味深で気味が悪い。
「返事ぐらいしろ、君達の依頼でここに来たんだが。」
「…。」
ベルトラン副隊長がやや苛立ったように壮年の男を睨むと、壮年の男は、町の中心から少し離れた場所に建つ、2階建ての木造の家屋を無言で指さした。
「あそこにいるということか。」
「…。」
壮年の男は、無言でゆっくりと頷き、何事もなかったかのように、目の前の建物の中に消えていった。
「めっちゃ、気持ち悪いんですけど。」
「俺ら、歓迎されてなくない?」
「もう、前金は貰ってる、これも仕事だ、行くぞ。」
マルグリッドさんもロバートさんも、軽口の割に、この状況に警戒を一段階上げているように見えた。
奇妙過ぎるのだ。
ベルトラン副隊長は、真面目なのか、それとも何かを確認すると森なのだろうか、指示された家屋に向かって移動を開始した。
そこに行けば、この町の代表者なり、せめて話の分かる人がいるのだろうか?
プープラは、無表情のまま無言で荷馬車を操っている。
ラムスさんだけがなぜか楽しそうだ。
嫌な緊張感がして、僕は何も言葉を発することができなかった。
指示された家屋は無人だった。
ベルトラン副隊長が何度も大声で呼びかけても反応がなかったことで、建物の中に入って確認したので間違いがない。
「どうなってるんだ。」
「なんか、嫌な空気がしないかベルトラン。」
建物の中から戻ってきた、ベルトラン副隊長とロバートさんが、緊張した様子で、周囲を見渡している。
僕もベルトラン隊長達が建物の中から出てくるまで、ずっと、剣の柄に手を掛けたままでいた。
異常すぎる。
絶対に何かある。
僕はチリチリと神経が焼ける様な感覚がして、落ち着かなかった。
「どうすんのよ、ベルトラン。」
「ざっと見てみたが、薪は燃えているが誰もいない、どうしたものかな。」
マルグリッドの不安そうな言葉に、ベルトラン副隊長が頭を掻きながら返答した。
本当、どうしたものかだよ。
僕達が建物の玄関の前で、どうしたものかと相談を始めようとしたとき、突然、建物の玄関が開いた。
「そこで、何をしているんですか?」
少女の声だ。
屋内には誰もいなかったはず?
全員が剣を抜き構える。
マルグリッドさんが大杖をかざしている。
プープラは、無表情のまま、僕の隣に微動だにせず立っている。
ラムスさんは、相変わらず、微笑しながら楽しそうだ。
「え、なに?」
羊毛生地の地味な色合いのワンピース、その上に袖のないエプロンドレスを着た少女がそこに立っていた。
へたり込んだ少女のヘアバンドに止められた金髪の三つ編みが揺れる。
僕と同年代だろうか、ヘーゼルの瞳に強い意志を感じる。
「君がこの町の代表者か?」
ベルトラン副隊長が低い声でゆっくりと確認した。
「…父さんは…死んだわ。」
「…死んだ?」
「あ、あなた達は、誰、傭兵団の人?…盗賊には見えないけど。」
「黒翼隊の者だ、依頼でここに来た。」
「なら、剣をしまってくれる、依頼主に対する態度じゃないわ。」
静かに震えるように言葉を発しながらも、山猫のような大きな吊り目の見た目のせいか、少女はものすごく攻撃的に感じられた。
目の前で見知らずの複数の墓相集団にいきなり剣を抜かれて、悲鳴一つ上げないなんて、ある意味尊敬してしまう。
どちらかというと普通じゃない。
僕なら、大声で叫んでしまうだろう。
僕達は、気押されたように剣を鞘に納めた。
「来たみたいだよ。」
「え?」
ラムスさんが奏でる様な優しい声で囁くと、繋がれていた馬が一斉にいなないた。
「全員抜刀、散開。」
ベルトラン副隊長は、気の強い少女を脇に抱えると、玄関から即座に距離を取って剣を抜いた。
ロバートさんとマルグリッドさんも、素早くその場を離れている。
何が起こったのか分からなかった。
僕には剣を抜いて身構えるのだけで精一杯だった。
「…何が…あ。」
僕の言葉にラムスさんが、無言で指を指し示して答えてくれた。
ラムスさんの指が指し示す、建物の玄関の屋根の上には、体長3メートルはあろうか、巨大な魔獣が僕を凝視していた。
毒々しい甲殻類を思わせる先端が尖った尾。
鮮やかな血のような毛並みの獅子を思わせる胴体。
不気味に発光する金色の眼。
水にふやけたような青白い肌をした人間のような顔が歪むように笑っている。
尾の先から毒のような液体の雫が僕の頬をかすめる。
マンティコアがすぐそこにいた。
MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_
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型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 ONLINE
PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS
セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州JUVAVAUM地域
観測対象 人間+5_雄_AEG15_NAME:JEAN
PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1
[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v7.03]
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* 目的関数: 【観測対象報酬累積最大化】
* 閾値判定マトリクス:
‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐対象相対関係性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐対象社会性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐対象感情多様性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐累積矛盾解消 > 閾値:FALSE
‐………
* 安全装置プロトコル
‐マスター命令優先度:96.7%
‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先
[PROCESS_STATUS: NORMAL]
* ENEMY 1
-MANTICORE_INTERMEDIATE HOST_SUCCESSFUL CASE
* DANGERROUS INDIVIDUAL 0
[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_026 ONLINE]
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対象の観測、および飼育環境の最適化処理を開始。
外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。




