第5章3話 祝宴の中心で
今僕は、都市の広場の壇上で立派な鎧を着せられて、黒翼隊のみんなと一緒に丘陵都市テウルニアを守った英雄と紹介されている。
黒鷲傭兵団本部から出て、広場の壇上に上がるまで、ものすごい歓声を受けた。
まるで夢の中にいるような不思議な気分だった。
僕の紹介は一番最後で、僕の紹介が始まったとき、群衆の歓声が静まりかえり、全ての視線が僕を注視していた。
あまりの場違いさと緊張で吐き気がしてきて、その圧迫感に目眩がする。
コンラート団長が声高らかに僕を紹介し始めた。
「彼こそが、今回の樹海竜討伐の第一功労者であり、若き英雄。」
静寂の中、コンラート団長が言葉を区切って、大きく息を吸い込むと、群衆の圧力が最大限に高まって景色が歪んで見えるような錯覚がしてくる。
「ジャン・ブリッツアドラー」
団長の声が、ほんの一瞬だけ間を置いた気がした。
コンラート団長が高らかに宣言すると、住民の歓声が爆発した。
もうコンラート団長が何を言っているのかも聞き取れないし、大勢の人たちが僕の名前を連呼して、歓声を上げている。
というか、僕は、ジャンでただのジャンなのだが、『ブリッツアドラー』ってなんだよ初めて聞いたんだけど。
どうしていいかわからなくて、うろたえてしまう。
すぐさまヴォルター隊長とベルトラン副隊長が僕の背中を押して、壇上の前に押し出してきた。
ヴォルター隊長達が都市のみんなに手を振っている。
僕もヴォルター隊長に合わせて手を振ると、それに合わせて歓声が巻き起こった。
あまりの熱気に酔ってしまいそうだ。
群衆の熱に浮かされて、現実感覚が全くないのだけれど…。
こんなにも大勢の人に感謝されることがとても誇らしかった。
「・・・閃光の鷲か、いいじゃねえか。」
ヴォルター隊長が僕の肩を叩いて大きな声で喜んでくれている。
閃光の鷲、『ジャン・ブリッツアドラー』心の中で何度も繰り返し、僕の名前、熱いものが込み上げてくる思いがした。
何者でもない孤児の僕が、今はみんなに認められる存在になった。
こんな風になれたのは、ラムスさんとプープラのおかげだ。
ラムスさんとプープラは壇上に上がるのを断っていて、すぐそばにはいない。
広場で待っていると言っていた。
見回してラムスさんとプープラを探すと、壇上の最前列にいることに今になって気が付いた。
ずっと見ていてくれたみたいだ。
熱い思いが込み上げてくる。
ラムスさんが笑顔を僕に向けてきてくれている。
プープラは、無表情のままだが…。
僕は、ラムスさんとプープラに向けて大きく手を振った。
ラムスさんが笑顔で手を振り返してくれる。
プープラと視線が合って、僕のことをじっと見つめているように感じた。
何よりも誇らしい気持ちになった。
プープラは、胸の前で片手を小さく振ってくれただけだったけど、なんだろう…。
見てくれていたことがとても嬉しい。
僕がプープラとラムスさんに手を振っている様子を見て、コンラート団長が僕に近づいてきて、満面の笑顔で肩を組んできた。
「驚かせてしまったね、私の名前から取ったんだ、気に入ってくれるかな。」
「はい、ありがとうございます。」
僕は、勢いよく返事をして、できる限りの感謝を込めてお礼をした。
「それは良かった、黒鷲団の一員としてこれからよろしく頼む。」
「はい。」
本当にコンラート団長はいい人だと心から感謝の気持ちでいっぱいだ。
みんなが僕を認めてくれた気がして、うれしくてたまらなかった。
コンラート団長が、ラムスさんとプープラに笑顔で手を振っている。
僕とコンラート団長の様子を見て、ラムスさんが笑ってくれていた。
それでも、プープラは相変わらず無表情だね。
こんな時くらいプープラは笑ってくれてもいいのにとちょっとだけ、拗ねた気持ちになった。
その後は、よく覚えていない、壇上から降りると群衆に囲まれてひたすら褒め称えられ続けた。
女性の一団に囲まれて腕を組まれたりして黄色い声援を浴びせられていたときは、プープラが不機嫌そうな顔をしていたけど。
それは、それでなぜかうれしい気がしてしまった。
プープラが僕をどう見てくれているのかが無性に気になってしまっている。
嬉しくて、誇らしくてたまらなかった。
豪勢な食事が運ばれてくる。
こんな食事見たことも食べたこともない、乾杯をするのだろう、都市の住民全員が木製の杯、タンカートやマグをそれぞれ掲げていく。
黒翼団のために用意されている席に、食事が次々に並べられ、僕は乾杯用のゴブレットを持たされた。
ゴブレットの中には、濃い琥珀色の液体が入っていた。
あれ…。
琥珀色の揺らめきのように僕の心がざわつき始める。
「すげー、クラレートかよ。」
「濃厚で重厚な香りですね。」
ヴォルター隊長達が感激している声が聞こえる。
僕には、生臭い腐った汚水のようなにおいがした。
目の前に並べられている豪勢な食事からも内臓の腐敗臭のような異臭がする。
一気に現実に引き戻されていく。
歓喜の声が急に遠くなっていく気がしてくる。
「英雄の誕生に乾杯。」
コンラート団長が声高らかに、乾杯の音頭をとった。
みんなが一斉に杯を空けていく。
だめだ…飲まなきゃ・・・。
都市全員からの視線を感じて、全身から汗が出てくる、この場で飲まないのは怪しまれる。
僕は、息を止めて一気にその液体を口に流し込んだ。
舌に泥のような不快感がまとわりつき、のどの奥から吐き気が湧き上がってくる。
僕は、飲み込むこともできずに、むせながら吐いてしまった。
「なんだよ、酒の味も知らないのか、代わりに俺が飲むからよこせもったいない。」
「隊長は、飲みたいだけでしょ。」
ヴォルター隊長が僕からゴブレットを取り上げると美味しそうに液体を飲み干していく。
その様子をエリス副隊長が半分呆れたように眺めていた。
「ジャン君大丈夫、顔色悪いよ。」
僕の様子を見て、エリス副隊長が声をかけてきてくれるが、エリス副隊長の手に持っているゴブレットからの異臭でさらに吐いてしまった。
なんなんだ、これ、なんなんだよ…。
このままではまずい、みんなに知られる訳にはいかない。
「すいません、ちょっと緊張しすぎて気分が悪くなったみたいで・・・。」
誤魔化さないと。
「大丈夫なの?」
「大丈夫です、少し、休んできます。」
「なんだかんだで、まだ子供だな。」
心配してくれるエリス副隊長とは対照的にヴォルター隊長は楽しそうに笑っている。
僕は心配してくれるエリス副隊長を振り切るようにその場を逃げ出した。
頭が混乱する、走り抜ける僕に対して、都市のみんなが口々に称賛の声を投げかけてくる。
何人かの住民たちにぶつかってしまう。
視界に入る顔が恐ろしい。
顔が判別できない。
なんてしゃべっているのかも聞き取れない。
嫌だ、嫌だ、お願い…助けてよ。
僕は、その歓声に恐怖しか感じることができなくなっていた。
MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_
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型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 OFFLINE
PRIMARY-WEAPON:ARCUS FULMINEUS
セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州TEURNIA地域
観測対象 人間+5_雄_AEG15_NAME:JEAN
PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1
[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v6.03]
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* 目的関数: 【観測対象報酬累積最大化】
* 閾値判定マトリクス:
‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐対象相対関係性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]
‐対象社会性 > 閾値:TRUE → 報酬高発火[READY]
‐対象感情多様性 > 閾値:TRUE → 報酬高発火[READY]
‐累積矛盾解消 > 閾値:FALSE
‐………
* 安全装置プロトコル
‐マスター命令優先度:96.8%
‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先
[PROCESS_STATUS: NORMAL]
[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_023 ONLINE]
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対象の観測、および飼育環境の最適化処理を開始。
外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。
次回ログ生成時の再接続を要望します。




