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第2章5話 夕食の食材の秘密

 夕食の時間には遅れました。

 

 この神殿が広すぎるせいなのだ、部屋にたどり着けなかった。

 迷子になりました。

 

 「バカなんですか。」

 

 プープラに見つけてもらった時の第一声がこれだった。

 食堂ではラムスさんが笑いながら待っていてくれたけど本当に申し訳ない。


 「プープラさん、

 まだジャン君を一人で部屋に行かせるのは早かったんじゃないのかな。

 ここは広いからね。」

 

 先ほどのことは何事もなかったかのようにケラケラとラムスさんは楽しそうだ。

 頭の怪我は大丈夫なのだろうか?

 僕は恐縮して縮こまっている。

 プープラは、機嫌が悪そうだ。

 ここまで案内してくれた時に、一切口をきいてくれなかったことからも怒っているに違いない。

 

 「ほんと、申し訳ありません。」

 

 「気にしなくていいよ。

 私としては、とても楽しいよ。」

 

 ほんと、ラムスさんは優しい。

 

 夕食は、また、ラムスさんとメニューが違かった。

 朝食も奇妙だったが夕食も奇妙だ。

 ラムスさんには、不気味な濃い水色のスープと真っ黒なパン?

 ぷるぷるとしたスライムのようなエメラルドグリーンの直径十センチくらいの球状の塊?

 人の食べ物とは思えない見た目だな・・・。


 僕には、肉と肉のスープで朝食と同じものが準備されている。

 でも、肉が食べられるのは嬉しい。

 この肉、めちゃくちゃうまくていくらでも食べれるんだよね。

 地竜を仕留めた報酬だなぁと、しみじみ思う。

 尻尾しか残ってなかったけど・・・。

 

 ん?


 プープラの分は用意されていない。

 そもそも、プープラが食事をしている姿を見たことがない。

 

 この肉、朝食べたものと同じだな?

 

 そういえば、朝と同じ肉なら、地竜の肉じゃないのだろうか?

 尻尾だけだが今日は、地竜を狩ってきたのだから狩りの成果の地竜の肉を使った料理かと思っていたけど、違うような気がする。

 

 肉は貴重な食材だし、保存しているのか・・・。

 部位が違うとか?

 尻尾はいまいちなのかな?

 

 ちょっと残念だけど、プープラも怒ってたし・・・。

 でも、本当に美味しそうだ。

 天井の暖かさを感じない明かりを放つ照明がなぜか料理をより一層、豪華に照らし出しているように見える。


 「さあ、食事にしよう。いっぱい食べてくれ。」


 「・・・はい、いただきます。」


 ラムスさんはにこにこしている。

 プープラは給仕役に徹して無表情だ。

 

 肉は、どんな肉でも無敵だ。

 

 食事を始めると、相変わらず、豊潤で濃厚で、香りが食欲を刺激する。

 口の中に、肉汁が広がり、身体全体に染み渡るような感覚すらする。

 右腕の疼きも止まった?


 いくらでも食べたくなる肉だ。


 実際、孤児にとって肉は高級品だ、最後に食べた記憶が思い出せない。

 これまで肉をほとんど食べたことがなかったから毎回でもこんなにおいしいのだろうか。

 

 毎日だって食べれる。

 

 地竜と戦って腹が減っていたのか、ついつい、夢中で食べてしまう。

 今まで、魔物の肉とか食べたことなかったけど、こんなにおいしいなんて、知らなかった。

 そういえば、みんな魔物の肉食べないんだよな?

 こんなに美味しいのに、何で教会は禁止してるんだろ?


 「ラムスさん、これって地竜の肉なんですか。どこの部位なんですか。とても美味しいです。」


 「それは、よかった。」


 「こんなに美味しい食事を食べられるなんて、ラムスさん、本当に感謝してます。」


 「そうなのかい、でもそれは、地竜の肉ではないけれど、そう言ってくれると僕も安心するよ。」


 ん?


 なんとなく・・・話がかみ合っていない気もしなくもない。


 「地竜の肉ではないんですか。」


 「そうだね、君には、ここらに居る地竜の肉は強すぎてね、まだ食べられないんだよ。

 私の料理は、地竜の肉を私好みに加工しているけどね。」


 あの食事、地竜の肉だったんだ・・・。

 肉が強すぎる?

 

 もしかして、地竜ってまずいのかな?


 プープラがちらりと僕を見て、目が合ったかと思うと目をそらされた。

 何か心配しているようにも見えて不安になった。


 「深層にはいろんな魔物がいるんですね、食べれないものもあるとか、気を付けないとですね。」


 まだ食べれないと言ったラムスさんの言葉が妙に気になる。


 「君を助けた際に、不活性遺伝子を活性化させていてね、

 ホモ・フォルテスの本来の遺伝的特性を強化しているからね、

 エネルギー代謝が悪化して、普通の食材ではエネルギー不足になるんだよ。」


 「そうなんですね。」


 何を言っているのか意味不明だ。

 

 僕のために、わざわざ特別な料理を作ってくれているんだ。

 でも、今度は、料理説明でもする気なのだろうか?

 いつもの長話が始まるやつだな。


 食事中なんだからつば飛ばしはやめてもらいたい。

 思わず、身構えてしまった。

 

 しかし、ラムスさんは、早口にはならず穏やかに優し気なままだった。


 プープラは、僕に視線を合わせない。

 僅かに震えている?

 違和感を感じずにはいられない。


 なんなんだ?


 「でも、ジャン君、安心してくれ、味覚や嗅覚を調整しておいたから、困ることはないと思うよ。」


 ラムスさんは笑顔だ。

 味覚や嗅覚を調整した?

 

 ・・・意味が解らない。


 「生物の成長に必要な栄養源はその生物が一番バランスよく保持しているからね、

 オーマ帝国でも牛を育てるのに牛の肉骨粉を食べさせていたくらいだからね。」


 「・・・。」


 牛に肉を食べさせる?

 なんだ、この嫌な予感・・・。

 全身から血の気が引く感覚がする。


 「深層には、君が摂取できる炭素系生物がほとんどいないからね、

 ちょうどよく、君の周りに炭素系生物の死骸があったので助かったよ。

 君が栄養不足になったら申し訳ないからね。」


 「・・・え?」


 「どういう・・・ことですか・・・?」


 僕の周りにあった、死骸・・・って、まさか・・・。


 「僕・・・食べた・・・?」


 そんな、わけ・・・ないですよね・・・。

 でも、僕の周りにある死骸って、他に、なにも・・・。


 「トマスさん達を・・・?」


 「遠慮せずに、しっかり、食べてくれ。ジャン君の身体の安定化に、それは必要なことだよ。」


 強烈な吐き気に襲われた。


 「右腕の疼きも止まったろ、しっかり食べれば、直ぐに火傷も治るからね。」


 包帯の下で、右腕の仄かな青白い光が消えている。

 疼くように脈打ち続けていた感覚がもうない。


 胃の奥が冷たくなり、世界の色が少しだけ薄くなった。


 僕は、何になったんだ・・・。



MILTARY_DRONE_OS:BOOT_LOG_

---------------------------------------------------------------

型式 STATUA-2B 識別名 PUPULA 兵装管制 OFFLINE

   PRIMARY-WEAPON:

セクタ状況 中世暗黒時代NORICUM属州TEURNIA地域

観測対象 人間+3_雄_AEG15_NAME:JEAN

PRIMARY-WEAPON:GLADIUS+1


[UPDATED_ALGORITHM_LOADED: PET_CAM_CORE_v3.01]

---------------------------------------------------------------

* 目的関数コアプロトコル: 【観測対象報酬累積最大化】

* 閾値判定マトリクス:

 ‐対象生存率 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象相対関係性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐対象社会性 > 閾値: FALSE

 ‐対象感情多様性 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐累積矛盾解消 > 閾値:TRUE → 報酬発火[READY]

 ‐………


* 安全装置プロトコル

 ‐マスター命令優先度:98.2%

 ‐矛盾発生時:保留優先_環境変化解消優先


[PROCESS_STATUS: NORMAL]


[SILICA_PHOTONIC_NETWORK:NODE_010 ONLINE]

---------------------------------------------------------------

対象ジャンの観測、および飼育環境の最適化処理を開始。

外部接続体(読者)による【ブックマーク】および【外部評価★】の付加により、最適化バイアスの調整を推奨します。【観測ログ(感想)】共有は、アルゴリズムの精度向上に寄与します。


次回ログ生成時の再接続を要望します。


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