7話:兄妹の日常 2
ちょうど正午。灼熱の太陽が容赦なく通りに照りつけている。雲一つなく、空気はまるで火に焙られているかのようだ。様々な種族の人々が、皆一様に汗を拭っている。
二人のトカゲ族の少年がホバーボードに乗り、自身の尻尾でバランスを取りながら、風魔法を使って障害物を飛び越えていく。
モグラ族の作業員は地面にしゃがみ込み、土魔法を器用に操って、先日破損した路面を修復している。
道端でホットドッグの屋台を出している人族の店主は、手慣れた様子で火魔法を使ってコンロに火を点けた。
新聞配達の鳥人族が半空を舞い、その横には新聞を運ぶ手伝いをするドローンが付き従っている。
ロルは慣れた手つきでハンドルを握りながら、通りを彩る様々な光景を眺めていた。この道を走るのは初めてではないが、それでもどうにも拭いきれない違和感があった。
「あのですね、これ言うのは初めてじゃありませんが、エイブダム全体って、なんだか要素を詰め込みすぎたゲームみたいだと思いませんか」
「また兄さんのいつもの変な理屈?」
「いえ、本気で言ってるんですよ。なんというか……この世界には魔法があるのに、スマホも高層ビルもあるじゃないですか。この二つってすごく矛盾してると思いませんか」
スマホをいじりながらホットドッグを頬張っているライラは、明らかにロルの言わんとしていることを理解できていないようだった。
「やっぱり兄さんが何を言いたいのかよく分からないな」
「つまり、なんでもかんでも少しずつ取り入れたような感じで、世界観が全く統一されていないんですよ」
ロルは通りを歩く三人組を指差した。彼らはそれぞれ、白いTシャツ、赤いチャイナドレス、深緑の古装を着ている。前の二人はともかく、最後の一人には「そんな格好で暑くないんですか」と問い詰めたくなる。
「うーん……でも、エイブダムは八ヶ国に囲まれてるんだから、いろんなスタイルが混ざってるのは普通でしょ」
「あなたの言うことも分かりますよ。でも、どうしても変な感じがするんです。ファンタジーRPGに突然スマホが出てきたり、SFの世界にスライムが飛び出してきたりするような感覚です。分かりますか?」
「……分からない」
「私自身も、自分が何を言っているのか分からなくなってきましたよ……」
ロルがそう呟くと、すかさず妹から胡散臭そうな視線を向けられた。
魔法と科学技術が同時に存在しているのがこの世界の現実であり、道中の光景も、ロルの観点が異端であることを証明している。
(それでもあえて主張させてもらうが、本当に違和感があるのだ)
「兄さん、やっぱり朝の悪夢の影響を引きずってるんだよ。後でマリーナさんに診てもらおう」
「それもそうですね。どのみち行くわけですし」
話題はそこで途切れ、キャンピングカーは巨大な純白の建物の駐車場へと滑り込んだ。ロルは駐車スペースを探しながらぶつぶつと文句を垂れた。
「三十分で六十も取るなんて悪魔の所業ですね。この病院、絶対に駐車料金で稼いでるでしょ」
「兄さん、マリーナさんに会いに来るたびに愚痴るのやめてよ」
「分かってませんね、妹よ。私は今、死への道を歩んでいるんですよ……」
この白いビルは、中町区でも有名な総合病院だ。診療科目が多く、あらゆる種族を受け入れているにもかかわらず、上町区の病院ほど費用が高額ではない。だからこそ、ロルは「こいつら十中八九、駐車料金で赤字を補填しているんだな」と睨んでいるのだ。
「すみません、マリーナ先生に呼ばれて来た者です。はい、ハイム道具屋の従業員です」
ライラは慣れた様子で愛想よく笑い、受付で通行証を受け取った。
一方のロルは、八階まで吹き抜けになった全面ガラス張りの窓と、螺旋状に伸びるエスカレーターを見上げていた――来るたびに、その圧倒的なスケール感にため息が出る。
院内は非常に清潔に保たれており、至る所に緑の観葉植物が飾られ、外の喧騒とは全くの別世界を形成していた。
通行証を受け取った後、軽やかな足取りのライラに対し、ロルは鉛のように重い足を引きずり、無気力に彼女の後をついていった。二人はエレベーターに乗り込み、まっすぐ七階へと向かう。
七階に到着した頃には、エレベーター内には彼らを含めて数人しか残っていなかった。この病院の七階以上は各医師の個室研究室となっているため、普段は一般人が上がってくることはないのだ。
ライラの後ろに続き、二人は廊下を一番奥まで進んだ。ライラが通行証をドアの前のセンサーにかざすと、電子ロックが解除される音が鳴った。
ドアを開けると、目に飛び込んできたのはひどく散らかった部屋だった。
ただでさえ広くない空間に、床、ソファ、デスクの上を問わず、至る所に書類が散乱している。だが、つけっぱなしのテレビと電源の入ったままのパソコンから察するに、彼らを呼び出した主は間違いなくここにいるはずだ。
ライラは書類を踏まないように小刻みな足取りで部屋の奥へと進んでいく。
そこには、もう一つの扉があった。




