66話:祭の手記1
(祭の視点)
薄暗い下水道の中で、祭は刀を振るい、二体の呪いの人形を斬り捨てた。
彼女たちの歩みは、決して順調とは言えなかった。呪いの人形の数が多いことだけが理由ではない。ライラが時折足を止め、激しく喘いでいることも大きな原因だった。
祭は再び刀を鞘に納めると、振り返ってライラの傍に寄り添い、彼女の体を支えた。そしてもう片方の手で子供たちを乗せたカートをしっかりと掴み、ゆっくりと前へ進んだ。
「ごめんなさい……祭……」
「謝らないで。地上に出られるマンホールはもうすぐ?」
「うん……もうすぐそこ……」
あいつ(あの男)に早く逃げろと言われてから、ライラは走っている途中で何度も体力を使い果たして膝をついた。無理やり体を起こしてカートを引き続けようとしたが、三度目に重く崩れ落ちた後、両足から完全に力が抜け、震えて自力で立つことすらままならなくなっていた。
そのため、祭は迫り来る敵を撃退する合間に、片手でライラを抱え、もう片方の手でカートを引いて強引に進むしかなかった。下水道は地上の通りに比べれば涼しかったが、それでも汗が彼女の衣服をぐっしょりと濡らしていた。
体力の消耗は彼女の予想を遥かに超えていた。幸いだったのは、呪いの人形たちの動きが先ほどのように精緻で厄介ではなくなっていたことだ。まるで操り糸が切れたかのように、その行動はひどく単調になっていた。
――あの重々しい轟音が耳に届くまでは。
祭の狼耳が一瞬にしてピンと立ち、胸の内の不安が急速に膨れ上がった。もし、呪いの人形たちの動きが鈍った理由が、誰かが犯人と真正面から交戦しているからだとするなら……
ならば今、呪いの人形たちが再びその鋭さを取り戻しつつあるということは、つまり――
祭は慌てて首を横に振り、脳裏に浮かんだその答えを必死に振り払った。
しかし、戦闘が続くにつれ、現実が彼女の推測を無情にも証明していった。あの轟音の後、呪いの人形の身のこなしは再び機敏になり、以前のように厄介な動きを見せ始めた。そのせいで、彼女たちの前進は再び停滞を余儀なくされた。
祭は唇を強く噛みしめた。隣にいるライラに向かって、口が裂けても言えなかった。「あなたのお兄さんは、もう死んでしまったかもしれない」などという言葉は。
いや、ライラもきっと気づいているはずだ。ただ口に出さないだけなのだ。彼女は兄から渡された地図をひたすら見つめ、光の球の目的地を調整し続けている。
(……なんて強い子なんだろう。一体どれほどの覚悟を抱けば、こんな状況で心を保っていられるというの?)
先ほど襲撃を受けた時、祭も即座に悟っていた。自分の刀では、あの漆黒の触手を斬り断つことはできないと。
あの触手が放つ不吉な気配は、彼女に任務中で初めて「恐怖」というものを感じさせた。
だから、あいつが早く逃げろと言った時、祭は心の底で密かに安堵してしまったのだ。そしてそんな自分自身の身勝手な懦弱さに、彼女は底知れぬ失望を覚えていた。
あいつの意図は痛いほど分かっていた。彼が残らなければ、全員がそこであっけなく死んでいたかもしれない。
足止めのために残るということは、生存率がゼロに等しいことを意味する。
あの場にいた三人の中で、最も実力が劣っていたはずなのに。一体どんな気持ちで、あんな言葉を口にしたのだろうか。
チョコ隊長はかつて言っていた――任務を遂行するためには、やむを得ず戦友を犠牲にしなければならない状況もある、と。しかし、戦友を失うことがこれほどまでに虚無感に苛まれ、受け入れがたいものだとは、彼女は思いもしなかった。
そのことを考えるたび、祭は強く歯を食いしばり、死に物狂いでライラと子供たちを前へ前へと導いた。
少なくとも――少なくとも、彼が何よりも大切にしていた妹だけは、無事に救い出さなければならない。
前方を漂う光の球に導かれ、彼女たちはついに広大な空間へと足を踏み入れた。あいつが言っていた通り、この空間はおそらく過去にオークション会場か地下闘技場のような施設として使われていたのだろう。
祭は過去の訓練で下水道に降りた際、そんなことまで考えたこともなかった。だが彼にそう言われて見回すと、確かにこの空間の壁や柱は異常なほど頑丈で、まるで何らかの衝撃に耐えるために造られたかのようだった。
彼女たちは一つの鉄ばしごの傍まで辿り着いた。これを登りさえすれば、この息の詰まる下水道から抜け出せる。
――その時、不意に背後から驚きの声が上がった。
「あなた方は!? 連邦警察の方ですか!?」
祭は反射的にライラと子供たちを自分の背後に庇った。
声のした方へ視線を向けると、そこには白いローブを羽織った一人の男が立っていた。優しげな声調、そして見覚えのある顔立ち。
祭は覚えていた。十四日前、チョコ隊長に同行して外部の協力相手と面会した際、彼と一度だけ顔を合わせている。
それは、今回の事件で同じく行方不明になっていた被害者――オーランド神父だ。
本来なら、そうであるはずだった……




